自由民主党HPより

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 衆院選の投開票日まで残すところあと数日。国会で森友・加計問題を追求されることから逃げるための大義なき解散なのは誰の目にも明らかであり、こんな無駄なものに600億円もの血税がドブに捨てられるのかと思うと暗澹とした気持ちになるが、それはともかく、今回の選挙は、政治を私有化し、強権的な国会運営で独裁的な政治を行い、富める者はますます富み貧しい者はますます貧しくなる社会をつくり、自らの野望のために対米隷属して北朝鮮危機を煽りたてる安倍政権へNOを突きつける選挙である。

 この選挙を機会に多くの人々が安倍政権へ憤りの声をあげ、本サイトでは先日も中村文則や中原昌也らの怒りの言葉をご紹介したが、そのほかにも安倍政権へのアンチテーゼを掲げる有名作家は数多い。

 たとえば、島田雅彦氏は2017年10月10日付け東京新聞のインタビューに応え、希望の党を中心とした政治家たちの右往左往を、「公示前の政局は北野武監督の映画『アウトレイジ』を見ているようでした。「全員悪人」」と皮肉る。時は折しも『アウトレイジ 最終章』封切り直前で、ツイッターにも『アウトレイジ』風にデザインされたポスターに小池百合子や前原誠司らの写真を当てはめたパロディ画像も多く出回っていた。同じように感じた人は多かっただろう。

 そして彼は、安倍首相がこれまで総理大臣を務めた期間のことをこのようにまとめる。

〈対米隷属以外の選択肢を持たず、異論を排除し、対話に応じない密室政治を続ける政権も「国難」には対処し切れないでしょう。安倍政権の五年間は単に対米隷属と独裁が強化され、景気回復も税金で株価を上げただけでした〉

 まったくもってその通りだろう。ただ、安倍政権がもたらした暗部はこれだけにとどまらない。とりわけ大きいのは、自らをかたくな肯定し、外国人や障がい者など少数派に属する人々を悪し様に罵って排斥するような「自称「保守」」を大量に生み出したことにある。島田氏はインタビューで現在の悲嘆すべき状況をこのように語っている。

「自称「保守」の極右たちは市民の味方であるリベラルを「反社会勢力」として排除し、おのが権力欲に任せて「仁義なき戦い」を仕掛けています」

 このように感じているのは島田氏だけではない。平野啓一郎氏は「週刊女性」(主婦と生活社)17年10月31日号でのインタビューで、安倍政権下に入り激化した弱者叩きの構図をこのように語っている。

「安倍政権下では弱者への言説のあり方も変わりました。以前は、金持ちは頑張っているのだからという文脈で、低所得者を放っておくような否定の仕方だった。それが今は、生活保護バッシングのような、社会保障費で迷惑をかけているという積極的な否定になっている。新自由主義から全体主義へと変化したと思います」

 平野氏は今回の選挙について、「政治の「まともさ」をめぐる闘いだと思うんです」と語る。すなわち、安倍政権は「まとも」ではなかったということだ。安保法制や共謀罪での審議でたびたび繰り返された、立憲主義をないがしろにし民主主義を破壊する国会運営など、私たちはこれまで歴史の教科書でしか見たことのなかったような独裁的な政治が堂々と行われるのを目の当たりにしてきた。

 そんな絶望的な状況を用意したのは、安倍政権が自分とは異なる意見をもつ者に対し、まともに対話をしようという姿勢を見せず、嘘とはぐらかしと権力でねじふせようとしてきたことにある。

 劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ氏は、17年10月12日付け東京新聞の連載コラム「風向計」のなかで、公示前に行われたいくつかの党首討論を見た感想を綴っている。

 党首討論では森友・加計問題について疑問が飛んだが、首相の言葉は「私はこれまで予算委員会や閉会中審査で丁寧に説明を重ねてまいりました。委員会の中で、私が関与したと言った方は一人もいない、ということは明らかになっています」という、もはや耳にタコができた「答えになっていない答え」だった。「丁寧な説明」もなければ、政治の私有化に関する疑惑を払拭するだけの回答が得られていないから、何度も同じ話を問い質すことになるのだが、結局は党首討論の場でも核心に迫った話を聞くことはできなかった。ケラ氏はこのように綴る。

〈それで終わり。これは討論とは言わない。国民の多くが、誰もくい下がらないのを不思議に感じているに違いない〉

 これは、昨日今日始まったことではないし、森友・加計の話題になって出てきた現象でもない。安保法制のときも、共謀罪のときも同じ。遥か昔からもうずっとそうだった。ケラ氏は続けてその憤りをこのようにぶちまける。

〈国会では「それでは答えになっていません」という言葉がよく聞かれたものの、やはり多くはそこで終わりだ。「答えになってない」ということしか、わからない。私たちが知りたいのは「答え」だ〉

 今回の選挙では結局はっきりとした政策上の争点は明示されることはなかった。当たり前だ。始めから安倍首相の保身のために始まった選挙なのだから。

 しかし、それでもはっきりしているのは、今回の選挙結果が憲法改正論議に大きな影響を与えるということだ。そして、そのことは昨年の参院選同様に争点隠しにされている。17年10月15日付けしんぶん赤旗日曜版で漫画家の山本直樹氏はこのように語る。

〈総選挙の最大の争点は、憲法だと思います。僕は、インターネットのアイコンに、「憲法護持」という写真を掲げています〉

 山本氏が「憲法護持」を掲げるのは、安倍政権の希望通りに憲法を変えさせることは「表現の自由」の死を意味するからだ。自民党憲法改正草案において、表現の自由に関する条文には「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という文章が新たに付け加えられ、権力が国民の表現の自由を大きく制限することができるようになっている。だからこそ、憲法改正には反対の声をあげる。山本氏はこのように述べている。

〈漫画を描く上で、好き勝手描けなくなってしまうから、憲法を変えられては困るんです〉

 強きを助け、弱きをくじく。弱者は排斥され、多様性も失われた全体主義国家へ──安倍政権下でどんどん強くなってきたこの傾向を今回の選挙で止めなくてはならない。
(編集部)