『最少の努力でやせる 食事の科学』(オーガスト・ハーゲスハイマー/講談社)

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 ダイエットに必要なのは、無理なやせ我慢ではなく、学習と正しい食事の積み重ねである。

 そう聞くと「すぐに痩せて、結果を出したい」と考えるダイエッターは「面倒くさそう」と感じるだろう。だから「○○だけ食べれば痩せる」という、わかりやすい(かつ極端な)ダイエット方法に飛びつく人は絶えないし、一方で「○時間、必死に運動や筋トレをせねばならない」と自分を追い込みすぎる人もいる。

 しかし、ある程度本気でダイエットした経験がある人ならご存じだろう。自分の心をだまして、生活スタイルに見合わない極端なダイエットを試しても、続かない。疲れてやめてしまうことがほとんどだが、心(本能)が悲鳴を上げてドカ食いに走ったり、なかには体を壊したり、心の病に苦しんだりすることもある。

 そう、ほとんどの人が気軽に始めるダイエットは、私たちの生活を非常に大きく左右するものだ。だからこそ「どんな人が提唱している方法か」は慎重に見極める必要がある。

 多くのダイエット本の著者である、オーガスト・ハーゲスハイマー氏の新刊が出た。彼の強みは「アンチエイジングを兼ねたダイエット方法」で、これまでも自身が編み出した食事法を紹介してきた。今回の『最少の努力でやせる 食事の科学』(講談社)はタイトル通り、いかにダイエットにとって、運動以上に正しい食事が必須であるかを説いた一冊だ。と同時に、一般に普及している有名なダイエット(たとえば極端な糖質制限やカロリー制限、無理な筋トレ)がなぜ“ムダ”であるかも、根拠とともに解説されている。

 最初の章では、さまざまなダイエットに取り組んだ経験(そして、途中であきらめた経験)のある人にとって、ガツンと来る“10のムダな努力”が並んでいる。それは、たとえば以下のような見出しだ。

・お腹をひっこめるために100回腹筋
・毎日1時間のランニング、筋トレ
・カロリーゼロの食品をせっせと摂る
・やみくもな糖質カット
・油を摂らないように我慢する

 身に覚えはないだろうか? 「ダイエットしよう」と思ったとき、多くの人が思いつく有名なダイエット方法を、ハーゲスハイマー氏はばっさりと斬る。しかし、彼の言葉に説得力があるのは、ふたつの理由がある。

 まず、ハーゲスハイマー氏は、栄養科学博士号を取得した研究者であること。彼は多くの論文を読み、検証したうえで、自分の体を使って実践し、工夫している。そのため、エヴィデンスとなる書籍や論文を用いながら「なぜその方法が間違っているのか」を、主に栄養学の観点からわかりやすく解説してくれる。また、日本に暮らして長く、日本人の食生活を理解していることも彼の強みだ。だからこそ、無理なく生活に取り入れやすい、具体的な食生活を提案することができる。

体はあなたが毎日食べるもので作られます。引き締まって、エネルギーがある体になるためには、正しい栄養学、食べ方の知識が必要なのです。そして、それが会得できれば一生ものの財産です。

 こう述べるハーゲスハイマー氏は、その「財産」を惜しみなく、読者に与えてくれる。彼の提唱するダイエット方法は、とてもシンプルだ。詳しい実践方法は本書をご覧いただきたいが、大まかに述べると次のようなものである。

・良質な油(脂質)をきちんと摂る
・糖質(炭水化物)は一回の食事あたり、握りこぶし大まで摂ってもよい
・卵や肉、魚からタンパク質を十分に摂る
・カロリー制限、コレステロール値制限はしない
・食べないダイエットはしない(空腹時間を長くしない)

 糖質の摂りすぎにより、余った糖が体脂肪となって蓄えられるのは事実。かといって、極端にカットしてしまうと「リバウンドしたり、代謝が悪くなったりして、かえって太ってしまうというリスクが高い」。それを避けるためには「ほどほどに」摂ることが大切で、ハーゲスハイマー氏は経験から、その分量を「握りこぶし大」と説明する。

 また、糖質が不足したときに必要なのは、良質な油。糖質不足になると、脳が「強烈な食欲を起こして、糖を補給しようと」するそうだが、それを防ぐには「血液中にエネルギー源となる栄養を与えて、脳を満足させてあげればこの衝動は起きません。その栄養とは糖ではなく、良質な脂肪分、つまり油なのです」と解説されている。

 さらに、近年の研究結果を用いながら、いかにカロリーやコレステロール値に対する認識に間違ったものが多いかも解説されている。それらを読むと、パッケージの裏側を見ながらせっせと計算してきた自分が、ちょっと馬鹿らしくなるかもしれない。

 4章では、ハーゲスハイマー氏の日々の食事内容が紹介される。

(1)大皿をイメージし、その半分を緑の葉野菜で埋める
(2)メイン料理を置き、余ったスペースにご飯またはパン
(3)最後に油をかける

 私自身、このワンプレートを試してみたのだが、主食を置くスペースは案外少ない。お皿の半分がサラダで、焼き魚を一尾と茹で卵をひとつ載せてみたら、ちょうど握りこぶしより少し少ないくらいのごはんを盛りつけられた。

 このわかりやすさは、忙しい日々を過ごす我々にとってありがたい。もしも、この食生活が「しんどいな」と思ったときは、チートデイ(週1回、好きなものを思いっきり食べる日のこと)を作ってもいい、というのも挫折せずに続けられそうなポイントだ。

 しかし、もっともヤル気にさせてくれるのは、本書カバーに載っているハーゲスハイマー氏の写真かもしれない。2017年現在、55歳になる氏の引き締まった体つきとツヤのある肌を見れば、目指すところは「健康的に美しく痩せるダイエット」であり、決して「短期的に無理をしてでもガリガリ(またはムキムキ)になる」ものではないと気づくことができるから。

文=富永明子