世界にはペパーミントやスペアミントなど、ミント系の植物が多数ありますが、日本で古くから生産されているハッカは、いわゆる「ニホンハッカ」。主成分はメントールで、洋種のハッカよりもその成分が多く含まれています。日本ではハッカ飴や夜店のハッカパイプなどでもおなじみで、お年寄りにとっても懐かしい香りです。
日本一のハッカ生産量をほこる北海道の滝上町(たきのうえちょう)では9月に刈り取りを終え、来年の収穫に向けて10月から、ハッカの地下茎の植え替えが行われています。

滝上町では国産ハッカの95%を栽培している。


広大な土地を必要とするハッカ栽培。10月に植え替えして、次年に備える。

ハッカの栽培は本州以南や温暖な外国では二毛作も行われていますが、北海道では気温が低いため、一毛作で栽培されています。
乾燥した葉からとれるハッカの精油はたったの1〜2%ほどなので、精油を生産するには広大な土地を必要とします。さらに、ハッカを植えていると地力が落ちて酸性が強くなってしまうので、3〜4年に一度、土をアルカリ化するために土壌の入れ替えをしなければなりません。
収穫するハッカの量に比べて生産できる精油の量が少ないこと、そして土壌の入れ替えをしなければならない、という2つの理由から、実際にハッカが栽培されている土地の倍以上の広さが必要になるのです。一毛作とはいえ広い土地を確保できるので、北海道がハッカ栽培に向いているのでしょう。
ハッカは5〜6月に小さな芽を出します。この時期の道東は桜がようやく咲くころで、まだまだ気温が上がらず、ストーブが手放せない日もあります。しかし、7月から一気に成長し、9月に収穫を迎えます。地面にわずかな茎を残して刈り取ると、葉を半干ししてから水蒸気蒸留し、ハッカ精油になります。
刈り取りが終わったあとの畑には地下茎が残されています。10月になるとこの地下茎を掘り起こし、バラバラにほぐしたあと、1本1本植え直して次の年へと備えます。雪が降る前に、この作業を終えなければなりません。

夏に一気に成長する


ハッカ生産量日本一の滝上町。蒸留は年に1回だけ。ハッカのつまようじが好評!

滝上町は、旭川市と紋別市のちょうど中間に位置します。ここで生産されるハッカの量は、日本全体の実に95%を占めています。
1930年代には世界のハッカ市場の7割(!!)が北海道の北見工場で生産されていましたが、戦後は外国産に押されたり、合成ハッカが誕生したりして、80年代に北見工場が閉鎖し、日本のハッカ産業は崩壊同様でした。
しかし、滝上町がハッカの栽培を継承。現在、ハッカを手がける農家は10数軒ですが、栽培から精油精製まで一貫して行うほか、精油を使った商品を開発し、販売もしています。 輸入ハッカや合成ハッカと違い、今では滝上町の自然が生んだ安全・安心のハッカが見直され、医薬品や観光土産などとして注目を集めています。
お土産で人気なのは「ハッカようじ」。北海道産の白樺材を使ったつまようじの先に、ハッカ油が染み込んでいるので、口に入れると爽やかな香りが広がり、口臭予防にもなります。焼き肉や中華料理を食べたあとなどに最適で、数多くのメディアに取り上げられています。
ハッカの精油は、葉を水蒸気蒸留することにより抽出されますが、滝上町で行われる蒸留は年にたったの1回だけ。この蒸留作業を見学できる「滝上町ハッカをめぐる旅」が、9月29・28日に開催されました。蒸留作業を終えたハッカが大きな釜から引き揚げられると、作業所には爽やかなハッカの香りが立ち込め、ツアー客を魅了しました。
かつてのハッカの大生産地であった北見市にある北見ハッカ記念館では、日本のハッカの歴史を知ることができます。毎月17日を「はっかの日」とし、プレゼントがもらえます。また、併設の薄荷蒸留館では、小型の蒸留器を使ってハッカの精油を抽出し、そのオイルを使ってクリームを作る体験ができます(予約制)。

北見ハッカ記念館


食品に少量加えてミントのいい香り。お風呂に、虫よけに、眠気覚ましに活用。

安価で大量に作られる合成ハッカは、生活の中で「ミントの香り」という形で、化粧品や洗剤など様々なシーンで利用されています。しかし、滝上町で作られる国産ハッカ油は天然成分100%なので、食品などにも用いることができます。
たとえば、紅茶にほんの少しハッカ油を落としてミントティーに。アイスクリームやヨーグルトにミントの香りをつけてもいいかもしれません。
また、ボウルに水を入れハッカ油を落としてよく混ぜ、タオルを濡らしてしぼると、ハッカの香りがするおしぼりができます。夏は浴槽に1滴落とすと、湯上りがさっぱりします。鼻がつまってつらい時はティッシュにたらし、芳香浴をするといいでしょう。そのほか、虫よけや眠気覚ましなどにもよく使われています。
〈参考:北見ハッカ通商、北海道ファンマガジン、滝上町観光協会、北見ハッカ記念館〉
〈参考:北海道新聞電子版2017.10.01、心もスッキリ 滝上・ハッカ蒸留〉
ハッカ日本一の滝上町は、春に芝桜が咲く広大な公園(芝ざくら滝上公園)でも有名です。ここの芝桜は毎年町民がボランティアで手入れをすることでも話題ですが、今年は10月14日、町民植栽会が開催され、芝桜の苗が1万ポット植えられました。
北海道では紅葉が見ごろで秋本番。山や峠ではすでに雪が降った日もあります。滝上町では雪が積もる前の今、ハッカの地下茎の植え替えが行われています。

天然のハッカ油を生活にとり入れる