倉本美津留●「ダウンタウンDX」「M-1グランプリ」「浦沢直樹の漫勉」、Eテレの子ども番組「シャキーン!」など、数多くの番組を手がける放送作家。『倉本美津留の超国語辞典』(朝日出版社)など著書多数。

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刺激的な番組を数多く手がける倉本美津留さん。常に笑いや発見を届けようと考えを巡らせている。そんな倉本さんが考える、面白い話の極意とは?

■相手の心をつかむ話は入り口に工夫あり!

面白い会話って何かと考えると、眠っていた脳細胞が1つでも動きだすような、そんなコミュニケーションだと思うんです。それがなければ、何のために時間を使っているのかと思ってしまう。だから、人と話すときは「本題までのつなぎをなんとなくいい感じに」なんてちょっと後ろ向きな気持ちは持たないこと。どうせ話すなら、「この人と会ってよかった!」って思いたいし、相手にもそう感じてもらいたいでしょ。

僕が面白いなと感じるのは、知らなかったこと、あるいは漠然と感じていたけれど言語化できていなかったことを、言葉にしてくれる人。宇宙物理学者の佐治晴夫先生に「未来は変えられないけれど、過去は変えられる」という話を伺ったことがあります。「逆でしょ?」と思うけれど、お話を聞いているうちに納得する。キャッチーな結論を入り口にして、物理の世界へと導いていってくれるんです。だから話すときには、入り口も大切ですね。どこを入り口にしたら入りやすいか、と考えてみる。それだけでも、話し方は格段にうまくなると思います。

あとは、自分自身が楽しくなるような話し方をすること。面白いことを伝えるって、自分の経験や感動の再現。その瞬間の驚きや空気感まで伝えられたら、相手もおのずと引き込まれると思うんです。だから、芝居がかってもいいし、声が高くなってもいい。単なる説明にしないことが大事です。そして、日常のあちこちに「おもしろ」を捕まえるセンサーを張ること。そうすれば、どんどん人に伝えたいことが増えていく。場数を踏むたびに、しゃべりのコツがわかってくる。好スパイラルに乗って、ぐんぐん面白い人へとレベルアップしていくはずです。

■どう思われるかなんて関係ない! 怖がらずにどんどん話そう

▼新鮮な発見や気づきはすぐさまメモ

スマホのメモ機能はよく使います。会話の中で引っ掛かったフレーズやトピック、新鮮な思考法、ふと思いついたアイデアなどを残しておく。ただ、これを何かに活用しようとは思ってないんです。心が動いたことを逃したくないだけ。不思議なことに、そのネタが必要なときがくると「そういえば前にメモした中に……」って思い出せる。メモをすることで、日常に新鮮な面白さが出てくる。そっちのほうがきっと大切なのかもしれないね。

▼知ったかぶりはNG、アホになれ!

日本人の70〜80%はツッコミ気質。ボケが上手な人がいると、その場にいる全員がいきいきしゃべれるんです。「ボケる」というとハードルが高いかもしれないけれど、知ったかぶりをしないだけと考えれば、そんなに難しくないはず。「それってどういうことですか?」と聞かれたら、「しゃーないな、教えたるわ」ってなるもんです。アホなフリで相手も気持ちよくなるし、自分も新しい話が聞ける。そう、アホはみんなに愛されるのです!

▼伝えたいことは変えず、話し方や順番は相手に合わせる

相手の表情や反応を見ながら、説明を足したり、順番を変えたり、そういう工夫は必要だと思います。自分のテリトリーに相手を連れてくるようなイメージ。飛び込んできてくれる人もいれば、道順を示さないと動かない人もいる。セオリーなんてないから、恐れずしゃべって経験を積むことが大事かな。あとは勢い! 「ウケるかな?」なんて気にせず、驚きや感動はできるだけリアルに再現すること。勢いでカバーできるもの、大きいです。

▼当たり前を疑うクセで、面白いがあふれ出す

世の中って変なもの、不思議なことだらけ。たとえば手をじーっと見てたら、手のひらのシワが「て」って文字に見えてくる……。ほんまに「て」やん! いや、むしろ「ラ」に近いかもしれへん、なんてね。身近なものでいくらでも楽しい話題ってつくれると思うんです。なんか変だな、不思議だなと感じることがあったら、それを放っておかない癖をつけることが大事やと思うな。不思議なものをスルーしない訓練、大人には必要やね。

▼芸人のマネよりも、自分らしさが面白い

誰もが芸人みたいにしゃべる必要はまったくないし、オチがなきゃ面白くない、なんてこともない。それこそパターン化で、無個性な考えやと思うな。「で、オチは?」って言ってくるヤツがいたら、「みんなそういうこと言うよねー」って返したらええねん。誰かのマネして盛り上げるより、拙くても自分の発想を一生懸命言葉にして、個性がにじむしゃべり方をしている人のほうが100倍面白いし、そういう人の周りには必ず協力者も集まるよ。

▼話したいことにタイトルをつけてみる

人に何かを伝えるとき、「この話にタイトルをつけるとしたら」って考えるのはかなり有効。どんなタイトルだったら聞いてみたくなるかと頭を巡らせて、キャッチーなフレーズを練ってみて。自分のなかでも「なるほど、こういう話やったんや!」と整理ができて、話しやすくなります。タイトルは日本語としておかしくてもいいし、造語みたいなものでもいいと思う。「え? 何ソレ?」って聞き返されたらしめたものです。

(放送作家 倉本 美津留 構成=浦上藍子 撮影=園田昭彦)