もし今、自分や妻、親が亡くなったら? ちゃんと知っておかないと、遺族年金はもらえない(写真:Ushico / PIXTA)

日本年金機構が、遺族年金を18億円も過払いしていたことが発覚しました。遺族年金とは、生計を支えていた配偶者などが亡くなった場合に支給される年金のことです。どうしてこんなことが起きてしまったのでしょうか。再婚や事実婚などによって、受給資格を失った人が「失権届」を出していなかったことや、またその調べがついていなかったことが原因です。

誤って支給された分は、本来は5年経過した分を除いて、返納しなければなりませんが、そもそも、遺族年金はどんな場合に支給されるのでしょうか。ご自身や、ご両親が死亡した場合はどうなのか、知っておきましょう。

18歳未満の子を残して死亡した場合はどうなる?

公的年金の1つに、残された遺族の生活を支えるための「遺族年金」があります。遺族年金には、表のようにいくつかの種類があり、給付の額なども異なります。



男性でも女性でも、親として18歳未満の子どもを残して死亡すると、その配偶者には遺族基礎年金が支給されることはご存じの方も多いでしょう。

金額は年額で77万9300円に子の加算(第1子・第2子は各22万4300円、第3子以降は各7万4800円を加えた額です(平成29年度)。専業主婦が亡くなって、夫と子どもが残された場合も、支給されます。

シングルマザーやシングルファーザーが亡くなった場合はどうでしょうか。この場合は、子どもに遺族基礎年金が支給されます。さらに、死亡した人が会社員(厚生年金加入者)なら、遺族厚生年金も支給されます。

では高齢の夫が死亡した場合や、シングルの人が死亡した場合はどうなるでしょうか? 高齢の夫の死亡時には妻などに遺族年金が支給されますし、シングルの人が亡くなった場合も、その親などに遺族年金が支給される可能性があります。

ただし、遺族年金は申請しなければ支給されません。もらえることを知らなかったり、手続きをせずに放置しておくと、1円ももらえないのです。もらいそこねたりしないよう、しっかり理解してください。ここからはいくつかのケースを見ていきましょう。

夫の厚生年金の一部は、妻に支給される

元会社員の夫が70歳で死亡、70歳の妻が残されたとしましょう。妻は「遺族厚生年金」を受け取ることができ、金額は夫が受け取っていた老齢厚生年金の4分の3の額です。再婚しないかぎり、生涯、受け取ることができます。会社員だった人の年金は老齢基礎年金(国民年金部分)と老齢厚生年金(厚生年金部分)の2階建てで、遺族厚生年金は、厚生年金部分(国民年金部分を除く)の4分の3です。

具体的な金額が気になるところですが、年金を受給している人には、毎年、「ねんきん定期便」が届いており、そこに厚生年金の額が記載されています。高齢の親御さんを抱えている読者の方は、「ねんきん定期便」を見せてもらうといいでしょう。

仮に父親が厚生年金を10万円、母親が自身の年金として8万円を受給している場合、父親の死亡後は7万5000円+8万円で、15万5000円の年金が受け取れる、というわけです。

もう1つ、知っておきたいのが、「中高齢寡婦加算」です。前述のとおり、子どもがいると遺族基礎年金がもらえますが、「子どもがいない妻で夫の死亡時に40歳以上65歳未満」または、「40歳時点で遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていたが、子が18歳になって遺族基礎年金が終了した場合」は、中高齢寡婦加算も支給されます。妻が40歳から65歳までで、金額は年額58万4500円(平成29年度)です。

さらに65歳を過ぎると「経過的寡婦加算」も支給されます。金額は妻の年齢に応じて異なり、2万〜58万円程度。昭和31年4月2日以降に生まれた妻には経過的寡婦加算はありません。

では、年金の支給開始を迎えずに、夫が死亡した場合はどうなるでしょうか。子どもがいれば冒頭で述べたように遺族基礎年金と遺族厚生年金、子どもがいない場合は、妻が遺族厚生年金と中高齢寡婦加算を受け取ることができます。妻が働いていても、年収が850万円未満なら支給されます。ただし、妻が30歳未満で子どもがいない場合は、遺族厚生年金が支給されるのは5年間のみです。「30歳未満で子どもがいないなら自立できますよね」、という意味が込められているようです。

遺族厚生年金の支給額は、夫が将来受け取る予定だった厚生年金の4分の3の額です。厚生年金の額は収入や厚生年金保険への加入期間によって異なります。若くして亡くなった場合は加入期間が短く、額も小さいと思いがちですが、加入期間が25年未満の場合は、25年間保険料を支払い続けたとみなして遺族年金の額が計算されます。10年しか加入していなくても、25年加入したという前提で遺族厚生年金が支給されるのです。若くして亡くなるのは悲しいですが、遺族の生活を支える意味ではありがたい制度といえるでしょう。

また、シングルの方が亡くなった場合はどうなるでしょうか。亡くなった方が55歳以上の父母または55歳以上の祖父母に経済的支援をしていた場合、父母などに遺族厚生年金が支給されます。支給されるのは父母または祖父母(受給者)が60歳になってからで、支給額は厚生年金の4分の3です。

自営業の人が亡くなった場合はどうでしょうか。

自営業(第1号被保険者)の人が加入するのは国民年金なので、遺族厚生年金の支給はありません。支給されるのは、18歳未満の子がいる配偶者や子どもに対する遺族基礎年金です。

さらに、第1号被保険者として保険料を納めた期間(免除期間を含む)が10年以上ある夫が亡くなった場合は、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまで「寡婦年金」が支給されます。金額は夫の老齢基礎年金額の4分の3です。

また36カ月以上保険料を納め、老齢基礎年金を受け取らないまま亡くなった場合は、「死亡一時金」が支給されます。対象は生計を同じくしていた遺族で、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順で、優先順位の高い人。金額は、保険料を納めた月数に応じて12万〜32万円です。寡婦年金の受給資格がある場合は、どちらか一方を選択します。死亡一時金は権利がある人の範囲も広いのですが、あまり知られていません。死亡日の翌日から2年経つと時効になってしまうので、要注意です。

自分で迷わずに年金事務所などで教えてもらおう

さまざまなケースについて述べましたが、さらに細かい受給要件もあります。年金制度は複雑でわかりにくいのですが、重要なのは、最初にも書いたように「資格があっても手続き申請しなければもらえない!」ということです。誰が、いつから、いくら受け取れるのかなど、あれこれ悩まず、躊躇せず、年金事務所や年金相談センターで教えてもらいましょう。請求できるのは、亡くなってから5年以内です(死亡一時金は2年以内)。

では、手続きには何が必要でしょうか。亡くなった人の年金手帳や戸籍謄本、住民票の除票、世帯全員の住民票のコピー、また請求者(遺族年金を受け取る人)の収入が確認できる書類(所得証明書など)です。手続きから1〜2カ月後に遺族年金の年金証書や年金決定通知書が届き、初回の年金が振り込まれます。

日本年金機構のホームページでは、年金事務所相談窓口と、ねんきんダイヤル(コールセンター)の混雑予測を公開しています。

混雑予測にアクセスするとわかるように、毎月1〜10日ごろと17日以降、時間帯では8時半〜11時、15時以降が比較的すいているようです。身近な人が亡くなったあとは、しなければいけないことが多く、体調を崩しがちです。混雑状況を確認しつつ、効率よく相談、手続きを進めてください。