浸透する期日前投票制度。投票所には冷たい雨が降る中、有権者が訪れていた(19日、東京都千代田区で)

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 間近に迫った衆院選。気になるのが、投開票日の22日ごろ日本列島に接近する台風21号の動きだ。投票日の天気が晴れても雨でも投票率が鈍るといわれ、各地で大雪となった前回の衆院選は、投票率が戦後最低を記録した。今回は、安倍政権の5年を問うとともに18、19歳の若者が初めて投票する衆院選とあって、投票率にも注目が集まる。今回の選挙は無風か、荒れ模様か――。天気とともに選挙結果が注目される。

2014・12・14 衆院 各地で大雪、戦後最低 09・8・30 衆院 政権交代、雨でも69%


 過去の選挙を見ると、投票率と天気との関係は「無きにしもあらず」。投開票日が大雨や大雪となった選挙は投票率が下がる傾向があるが、有権者の関心が高かった時は雨でも投票率が高かったこともある。

 悪天候だったのが前回の2014年衆院選。投開票日の12月14日は、日本海側を中心に大雪と冷え込みに見舞われた。投票率(小選挙区)は52・66%と戦後最低。当日は全国的に厳しい寒さで、新潟県津南町では日降雪量が113センチを記録、東京では午後5時50分に初雪が観測された。

 投票率が最低だったのは青森県の46・83%。雪が降った青森市は平均気温が氷点下4・5度と12月で一番の寒さとなった。県内有権者を対象にした選挙後のアンケートでは、投票に行かなかった理由の約1割が「雪などの悪天候」だった。

 選挙の争点は経済政策アベノミクス、消費税引き上げ延期だった。農業分野では米政策や環太平洋連携協定(TPP)、農協改革などの論戦が深まらなかった。政策論争がないままで、有権者の関心は低調だったとみられる。

 雨天にかかわらず高い投票率だったのは、民主党が圧勝した09年8月30日の衆院選。投票率69・28%は、現行の小選挙区比例代表並立制が導入された1996年以降で最高だった。台風が伊豆諸島に接近し関東で雨が降ったが、「政権交代」が最大の焦点になり関心を高めたとみられる。

 近年では期日前投票の浸透を背景に、「天気と投票率」の関係は薄れつつあるとの見方もある。総務省が16日に発表した中間状況によると、今回の選挙で15日までに投票を済ませた人は全国で410万人に上り、前回同期の1・5倍に増えた。同省が今年1月にまとめた「目で見る投票率」によると、14年衆院選や13年参院選で、天候が悪いことを理由に棄権した人は1、2%となっている。(猪塚麻紀子、隅内曜子)

足止めの一因に 気象情報会社ウェザーマップの江花純気象予報士の話


 一般的に晴れると行楽に出てしまい、雨だと家から出ず投票率が下がるとされ、曇りの日は投票に行く人が増えるといわれる。ただ、もともと選挙に行こうと考えている人は雨でも投票所に行き、選挙に関心がない人は雨がやんでも行かないだろう。天候に左右されない有権者もおり、天気はそこまで大きくは投票率に影響しないともみられる。

 それでも、悪天候になれば投票に出掛けようとする人を足止めするのは確かだ。夏の投票日に一時、激しい雷雨に見舞われた地域では、その時間帯だけ投票者が激減した例がある。今回の投票日は台風や前線の影響で荒天になる恐れがあり、悪天候になる前に投票に行ってほしい。