図1 事業創造フレームワーク  連載第2回、第3回では、事業創造フレームワークの1「準備期のコンセプト」について解説します

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3年間で8つの事業を立ち上げた山口揚平氏いわく、「起業には定石があり、時流にうまく乗ったコンセプトを作ることができれば、起業は9割成功する」。この時流を見極めるには、(1)政治と(2)経済の状況を理解する必要がありますが(第2回)、それだけでは足りません。(3)社会価値と(4)技術革新にも目を向けるべきとのことですが、それはどういうことでしょうか。

時流を見極める観点3 社会価値
「モノ」より「体験」にカネが集まる

 社会価値とは、人々が持っている価値観を意味する。たとえば、何に対して価値があると感じるのか、どのように行動すべきだと考えているのか、ということだ。価値観は普遍的なように見えて、時代とともに移り変わっていく。その変化をとらえることが有効である。

 社会価値の変化をとらえるといっても抽象的なので、少し前に流行った「シェアリング・エコノミー」の例を挙げてみよう。多くの人が感じているように、世界にはモノが余っている。先進国では特にそうだ。日本の空室率は15%(2025年にはやがて25%となる)だ。人口が減っているはずなのに、車の台数は10年前と変わらない(5000〜6000万台前後)。家具も家電も服も余っている。

 この機をとらえ、メルカリはフリーマーケットを創り、CtoC取引を拡張した。ラクスルは余っている輪転機を使って印刷代を安くし、Airbnbは余剰空間を宿泊所として売り出した。いまや、余っているモノは容易に手に入れられるようになった。

 「シェアリング・エコノミー」の「シェア」の本質は、共有することではない。余剰を可視化して安価で取引させることにある。これからますます余剰物の価値が再認識されるだろう。ドローンやAIカーによって輸送により流通コストが下がればなおさらである。釣り人が釣った魚、引退したシニアが趣味で育てた野菜、引っ越し前日の家財、人の入らない映画館の座席やライブ会場、主婦の余った時間など、あらゆるものが安価に取引される。それらをかき集めて販売する事業はこれから拡大すると予想できる。

 人が純粋なモノ(機能)を買うのは最低限になるだろう。おそらくGDPの15%くらいまで落ち着くのではないか。ではこの21世紀、人は何を買うのだろうか。

 それは「モノ」ではなく「コト」(つながりや物語)である。人はもはやモノを求めていない。求めているのは文脈、承認、そして孤独を埋める関係である。体験型ステイ、新しいコミュニティに参加するための村民権、家系図と家の歴史の調査、自分の木からとれたメイプルシロップなどだ。AKBのファン投票もそうであるし、「VALU」というビットコインをつかった個人の疑似株式を購入・売買するサービスも同様だ。

 VALUを買うことになんのメリットもないように見える。しかし人はつながりたいのである。できれば憧れの有名人と。その距離を埋めるためにお金を使うし、人気者の価格は青天井になるだろう。握手券が数千円の時代など、まだまだ黎明期である。憧れへの繋がりに対して、数百万円から数億円のお金が動く。しかもその権利が二次売買されることによってさらに拡張していく。21世紀、人は承認とつながりばかり買うようになるだろう。

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