ACL決勝進出の浦和、上海戦でも光った「デュエルの強さ」 データで探る快進撃の理由

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AFCが公開しているデータで分析 上海上港戦で圧巻の数字を叩き出した右SB遠藤

 日本サッカー界では、日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督による「ポゼッションは勝利を約束しない。デュエルに勝つことが重要だ」という発言が一つの話題になっているが、18日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の準決勝第2戦、浦和レッズ対上海上港(中国)戦におけるアジアサッカー連盟(AFC)の公開しているデータでも、同じような傾向が見られた。

 浦和が敵地での初戦を1-1で引き分けて迎えた第2戦だっただけに、上海がより攻撃的な姿勢を見せることは予想されていた。さらに、前半11分に浦和FWラファエル・シルバが先制点を決め、さらに上海が攻撃を仕掛けなければいけない状況となっただけに、ボールポゼッションが上海に偏るのは自然なことだった。実際のゲームデータでは、上海のポゼッション率は60.4%まで上昇し、浦和は39.6%と4割を切るところまで追い込まれた。

 しかし、浦和が上回っていたデータこそ、「デュエル勝率」だった。地上戦の勝率が53.7%、空中戦は51.7%と上海を上回り、タックル成功率も76.2%を記録。ボール際の争いで優位に立っていたことが数値上で証明されている。

 そのなかでも、圧巻のデータを残したのは日本代表DF遠藤航だった。地上戦が14勝2敗、空中戦が6戦全勝という強烈な当たりの強さを発揮し、ファウルもわずか1回のみ。それも、敵陣でボールを受けたMFオスカルがそこに立っていた遠藤を利用して転んだプレー1回のみで、自陣での勝負の局面でファウルに頼って止めた場面は皆無だった。逆にファウルを4回受けている上に、インターセプト5回も記録。この試合では右サイドバックを務めたが、完全にサイドを制圧していたことが明らかになった。

シュート決定率22.4%もトップの数値

 また、中盤ではMF青木拓矢は地上戦5勝5敗、MF柏木陽介は4勝4敗とイーブンの成績だったが、MF長澤和輝が地上戦14勝10敗、空中戦1勝0敗と勝ち越した。そもそも全25回のデュエル回数はチーム内最多で、中盤でゲームを組み立てようとする上海の元ブラジル代表MFオスカルやウズベキスタン代表MFオディル・アフメドフに自由を与えないキーマンになっていたことが浮かび上がる。

 この浦和の傾向は大会全体を見ても同じであり、チーム全体でのデュエル勝率は52%と半数を超えている。

 上海戦では元ブラジル代表FWフッキに苦戦し、地上戦で5勝6敗、空中戦で0勝3敗と負け越した日本代表DF槙野智章だが、大会全体で見れば地上戦が勝率63.7%、空中戦の勝率が64.4%とチーム内では遠藤と双璧をなす。リーグ戦では失点の多さにより苦戦している浦和だが、ACLでは無失点試合が5試合を記録している。その一端に、球際の勝負に勝っている部分があると言えるだろう。

 その上で、浦和がデータ上でACL出場チーム中トップに立っているのが、ゴール数と決定率だ。準決勝まで勝ち残っている試合数からトータル28ゴールがトップなのは自然な部分もあるが、その決定率22.4%も大会で最高の数字だ。そして、そのゴールのすべてがペナルティーエリア内で生まれたというのも特徴だと言えるだろう。球際で粘り強く守り、ゴール前まで進めた攻撃を効率良くゴールにつなげていることがデータにも表れている。

決勝でも鍵を握る「デュエル勝率」

 ハリル監督によるポゼッション否定論は多くの話題を呼んだが、浦和は基本的にポゼッション志向のチームだ。それでもベースにあるデュエルの強さによって、ACLの舞台で劣勢に回ったゲームでも大崩れしていないと言えるのかもしれない。

 浦和にとって優勝した2007年大会以来10年ぶりとなる決勝の対戦相手は、サウジアラビアのアル・ヒラルとなった。球際で勇敢に戦ってボールを奪い取るという今大会で見せているベースが崩れなければ、浦和にとって勝機は十分にあると言えるのかもしれない。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images