口内環境が健康寿命を左右する、ということをご存じだろうか。口は、食べ物の入口であるが、病気の入口にもなりうる。全身の健康を左右する「歯周病」の原因と予防法を知り、健康維持のために日常生活を見直したい。

そこで今回は、歯科医の野本秀材さん(サクラパーク野本歯科院長)指導のもと、【歯周病を防ぐ5つの習慣】についてご紹介しよう。

■1:鏡を見て歯ぐきをチェックする

自分で磨き残しを見つけることは難しいが、歯ぐきの状態はひと目でわかる。歯ぐきが赤い場合は歯肉炎が疑われる。歯肉炎が進行すると歯周病に移行し、骨が溶けるために歯ぐきが下がってくる。毎日鏡を見てチェックすることが、いちばんの予防策だ。

●健康な歯ぐき

歯と歯ぐきの境目が三角形に引き締まり、薄いピンク色。

●歯周病の歯ぐき

歯と歯ぐきの境目が丸みを帯びて腫れ、赤黒い。

■2:毎食後、5分以上歯磨きをする

最低でも1日3回、食事の後には歯磨きするのは必須 。歯の表裏、歯ぐきとの境目を磨き、すべての歯間をケアすると、少なくとも5分はかかるはずだ。磨き方は歯の部位によって異なるので磨き分けること(下写真参照)。

●前歯や犬歯

歯ブラシを45度の角度で歯と歯ぐきの間に当て、細かく動かす。

●奥歯の表面

歯垢がつきやすい奥歯の溝は、上から歯ブラシを当て、前後に動かす。

●前歯の裏側

下の前歯の裏は、歯ブラシのかかと部分を当て、掻き出すように磨く。

■3:自分に合った歯ブラシと歯間ブラシを選ぶ

50歳以上は歯間ブラシを必ず併用することをすすめる。自分に合った歯ブラシ・歯間ブラシでないと効果が半減、歯や歯ぐきを傷つける原因になる。なかなか自分ではわからないので、歯科医に相談するのが最善。

歯間ブラシはさまざまな種類があるので、自分の歯間に合わせて選ぶことが肝要。

歯ブラシが届きにくい奥歯の間は、L字形の歯間ブラシが使いやすい。

■4:だらだら間食をしない

食事の後は口内が一気に酸性に傾くが、唾液は弱アルカリ性なのでやがて中和される。しかし、頻繁に間食をすると、ずっと酸性の状態が続くため、虫歯や歯周病、酸蝕症の原因になる。

口の中のpHが5.5以下になると、歯の表面にあるエナメル質が溶け始める。酸度の強い食品を頻繁に口にする人は要注意。

■5:3〜6か月ごとに歯科検診を受ける

歯科検診で大切なのは、汚れを除去してもらうだけでなく、適切に磨けているか、磨き残しはないかをチェックしてもらうこと。痛くなってからではなく、何でもないときに行くからこそ、歯科検診の意味がある。

歯垢が硬くなった歯石は歯周ポケットの中に付着する。歯石ができやすい場所を知り、普段から丁寧に磨くことが大切。

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以上、【歯周病を防ぐ5つの習慣】をご紹介した。指導いただいた歯科医の野本さんは、自覚しにくい歯周病を初期段階で発見するには「とにかく鏡を見ること」と話す。

「歯を磨いたら、歯と歯ぐきの境目がちゃんと三角形になっているか、ピンク色かを見てください。丸みを帯びて赤黒く腫れていたら、歯周病のサインです」

その他、歯周病を防ぐための生活習慣を挙げてもらった。

「基本は毎食後の歯磨きです。“歯を磨かなくても虫歯になったことがない”と自慢する人がいますが、そういう人のほうが、歯周病になりやすいものです。高齢者に多いのは、歯根部のう蝕(虫歯)です。歯肉が退縮して下がり露出した歯根部は象牙質でできているため軟らかく、虫歯になって割れやすい。歯周病を防いでいれば、歯根が露出することはありません」

また歯磨きは、世界的に問題視され始めた「酸蝕症(さんしょくしょう)」対策としても有効だという。

「酸蝕症とは、強い酸によって歯の表面が溶けてしまう病気で、清涼飲料水などによる糖分や、酸の強い食品の摂り過ぎが主な原因です。逆流性食道炎の人なども、胃液による酸の影響で罹りやすい。歯磨きが有効な予防手段です」

食後にどうしても磨く時間がない場合は、水でよく口をすすぐだけでもずいぶん違うそうだ。

次回は口内を健康に保つ重要な役割を果たしている“唾液”を増やす【唾液腺マッサージ】の方法をご紹介する。合わせてお読みいただきたい。

【今回の案内人】野本秀材さん サクラパーク野本歯科院長。昭和31年、東京生まれ。日本口腔インプラント学会専門医。歯と口腔全体をひとつの器官として捉え、統括的な診療活動に努める。予防歯科学分野にも造詣が深い。

※この記事は『サライ』本誌2016年11月号「大人の歯磨き基本のき」より転載しました。記事内の肩書き等は取材時のものです(取材・文/大津恭子、撮影/福田栄美子、イラスト/岩井勝之)