夏に日本一の花火大会と言われる全国花火競技大会を開催する秋田県大仙市大曲で、大曲の花火 秋の章と題した花火大会が行われました。花火ミュージカルや秋田のお祭りを表現した花火が上がるなど、創造花火発祥の地らしい見応えのある花火が見られるとのことで、同時開催された新・秋田の行事と花火鑑賞士試験も合わせてレポートします。

大曲の花火 秋の章

http://www.oomagari-hanabi.com/autumn2017/index.html

「大曲の花火 秋の章」が行われる場所は、秋田県大仙市大曲です。

2017年10月14日、大曲駅前に到着。



2017年は「新・秋田の行事」も開催されており、コラボレーションイベントとなっています。大曲駅近くの花火通り商店街は歩行者天国となりたくさんの人出でにぎわっていました。



花火通り商店街にある「花火庵」では、花火について学べる「花火鑑賞士による花火セミナー」が行われるとのこと。



花火の種類や構造など、初心者向けのわかりやすい内容のセミナーです。会場いっぱい約60名の受講者が真剣に話を聞いていました。



花火大会の会場へ移動する途中、秋田竿燈まつりで見られる竿燈のデモンストレーションを見ることができました。「どっこいしょー、どっこいしょー」のかけ声が、お祭り気分をもり立てます。



花火大会の会場は、夏に行われる全国花火競技大会「大曲の花火」と同じ場所です。



会場で配られていたプログラム。明るいうちに花火大会の進行を確認しておきます。



打ち上げ開始1時間前、まだ時間があるので会場を散策。オープニングで行われる「ジャズバンドによる生演奏に合わせての花火」用のステージの前にやってきました。



最前列席の目の前には、川の方向に向けて傾けられた筒が置いてあります。対岸には通常の打ち上げ用の筒や扇状に向けられている筒、さらにはやぐらが立っているなど、いろいろな仕掛けで花火が上がるようです。



花火大会の最後に「重さ約70kg・開いた時の直径が約480mにもなる大玉の二尺玉が打ち上げられる」ということで、打ち上げる筒を探すと、離れた場所にぽつんと立っているのを発見。



この花火大会は実況生中継も行われます。左から、FMはなびパーソナリティの藤田浩士氏、NPO法人大曲花火倶楽部の富樫真司氏です。



「美郷ジャズオーケストラ with フレンズ」によるジャズの生演奏を聞きながら花火大会開始を待ちます。



午後6時、花火大会が始まりました。大会セレモニーの後、オープニング花火が打ち上がります。まずは、栗林聡子さんによる「秋田県民歌」の独唱、そして、サプライズ花火として、「WELCOME」「OMAGARI」文字の浮かび上がる花火が客席の目の前で打ち上がりました。写真は、動画から合成したもの。



実際に文字が浮かび上がる様子は、以下のムービーで確認できます。

文字が浮かび上がる不思議な花火とオープニング花火【2017大曲の花火 秋の章】 - YouTube

DJスターマイン福原こと福原尚虎氏による軽快なアナウンスと花火研究家の小西亨一郎氏の解説で花火大会は進行します。第1幕「秋田のまつり」は、秋田の情景・各地で行われる祭りを花火で表現します。まずは、冬の情景から「泣く子はいねかぁ」「親の言うこと聞かねぇ子はいねかぁ」と全国的にも有名な「男鹿・なまはげ」から始まりました。なまはげの様子を録音したBGMが流れ、赤や青の鬼のお面やハタハタなの型物花火を織り交ぜたスターマインが打ち上げられました。



「六郷・竹打ち」では、南軍と北軍に別れ竹を激しく打ち合う祭りを表現。地上から吹き上がるトラと呼ばれる花火が順番に角度を付けながら発射されることで「竹を振り、ぶつける」という動きまでも見事に表現されていました。



「湯沢・犬っこまつり、大館・秋田犬」として秋田犬も打ち上がります。この型物花火は、1週前の10月7日に行われた土浦全国花火競技大会の創造花火部門で優勝した株式会社北日本花火興業の作品「ダイエットわんちゃん ビフォーアフター」で打ち上がったものと同じもので、最新の優秀作品が見られるお得な花火でした。



春の情景では「角館の桜」「大潟村・菜の花ロード」「美郷町・ラベンダーまつり」を表現した花火が打ち上がります。







夏の情景では、「秋田・竿燈まつり」の竿燈を千輪(1つの花火から小さな花火がたくさん出てくる花火)で表現。



「中仙・ドンパン祭り」は、ドンパン節の「ドン・ドン・パンパン、ドン・パンパン」を花火の音で表現したり、手の振りを時差式発光の花火で表現して動きを見せるなど、形だけでなく、音や動きでお祭りを表現する花火もありました。



秋の情景では、「角館のまつり」から手踊りと山ぶつけを表現。花火の演出方法の1つ、不規則に飛び回る蜂や遊星が、まさに手踊りを踊っているかのような動きを見せます。



第1幕の最後は「黄金の稲穂」収穫の秋、黄金の稲穂が一面に広がるかのような錦冠の連続打ちが見られました。



第2幕、地元の花火5社による花火競演となっており「あきた満開(黄金風)」をイメージしたスターマインを各社が打ち上げます。1番目は、株式会社和火屋の「払田の柵〜古浪漫〜」。和火を中心とした構成でゆったりとしたムードで落ち着いたスターマインでした。



2番目は、株式会社小松煙火工業の「Golden Sun」。黄金ということで郷ひろみ「Goldfinger'99」のBGMに合わせて軽快な花火が上がります。



3番目は、大久保煙火製造所の「金色のカーテン〜秋の実り〜」。秋田で収穫されるさまざまな秋の農作物を表現したかのように、時間いっぱい多くの花火を上げる豊かな構成でした。



4番目は、響屋大曲煙火株式会社の「GLORY〜私の金メダリスト〜」。オリンピックのイメージで安室奈美恵「Hero」のBGMに合わせ、5色の輪や色が何度も変化する花火が上がるなど、色彩豊かな構成でした。



最後は、北日本花火興業の「神楽」。菅井えり「Voyage to Asia」に合わせ、印象的な八方咲きがいくつも上がりました。こちらも色彩豊かな構成です。



続いて、ハーフタイムショーとして、ELE TOKYOの協賛によるスターマインが打ち上げられました。



第3幕は「尺玉 日本花火作家選抜 伝統割物と斬新自由玉 競演」です。全国花火競技大会の歴代内閣総理大臣受賞者と前大会で部門賞を獲得したえりすぐりの花火作家10人による尺玉の競演です。1発ずつ上がりますが、とても芸術性の高い花火が見られました。株式会社マルゴー「昇り曲付芯入往来環」写真で見ると青をベースにした色鮮やかな花火に見えるだけですが、動画だとまるでアニメーションのように光が動く不思議な花火が見られます。



花火の光が動く様子は、以下のムービーで確認することができます。

アニメーションのような動きを見せる時差式発光花火【2017大曲の花火 秋の章】 - YouTube

第4幕「花火ミュージカル2017『ライオンキング』」ライオンキングのサウンドトラックに合わせての花火ミュージカルです。第1部「サークル・オブ・ライフ」では、型物で打ち上げられたライオンや動物たちがとても印象的でした。





第2部「ムファサの死」では、中央に設置されたやぐら「タワー」から放射状にトラ(吹き上がるタイプの花火)が発射されています。



終盤、下側のトラの部分と上空の大玉の間で、垂れている花火は、30秒近く上空にとどまりナイアガラ花火のように火の粉を吹き続けます。これは、パラシュートを使った吊り物と呼ばれる種類の花火です。



第3部「愛を感じて」では、第2部の激しい花火と違いエルトン・ジョンの「愛を感じて」のBGMに合わせながらゆったりとした雰囲気の花火が上がります。向かい風で煙が重なってしまっているのが残念なのですが……



その向かい風に乗って、第2部の演出に使われたパラシュートがいくつか観客席にゆっくりと落ちてきました。



第4部「プライド・ランドに平和が戻る」では、最終章にふさわしい壮大なスケールの花火が打ち上がります。3重の芯が見える三重芯や4重の芯が見える四重芯など、競技大会でしか見られないような芸術玉も途中打ち上げられていました。



会場全体を包み込むように、幅約500mの打ち上げ場を目いっぱい使ったワイドな花火で締めくくります。



終幕(第5幕)は、大曲商工会議所創立20周年記念「二尺玉打ち留め」です。1発だけの花火ですが、二尺玉(芯入り黄金冠菊小割浮き模様)ということで爆発音も大きく、腹にズシンと響くほどでした。



花火の打ち上げは終了しましたが、最後に夏の全国花火競技大会でも行われている「花火師と観客の『光の交信』」が行われました。観客から花火師に向かってペンライトや携帯画面を振って「ありがとう」を伝え、花火師からは赤色の発煙筒を振って「ありがとう」を伝えます。



翌日も「新・秋田の行事」の2日目として、大曲ではお祭りが行われていました。通りでは、角館のまつりのデモンストレーションが行われています。この日は「花火鑑賞士試験」も行われる日でもあり、近くにある試験会場に向かうと……



試験前に行われる講義の最中でした。響屋大曲煙火株式会社の齋藤健太郎氏が「花火の製造・打ち上げについて」の講義を行っています。



2017年は、90名が試験を受けます。試験終盤「ビデオを見て打ち上げられた花火の名前を答える」という花火鑑賞士試験の難関と言われる試験前の様子。緊張感が漂っています。



ビデオを見た後、解答を記入します。問題は5問、幅広い知識が無ければ満点を取ることは難しい、多種多様な花火が問題として出されていました。



試験終了後「外で行われているお祭りの花火が見られる」とのことなので、近くの橋から花火を鑑賞。2日連続で大曲の花火を見ることができました。



「大曲の花火 秋の章」は、花火研究家の小西亨一郎氏によるプロデュースで演出された花火大会でした。花火大会の途中、打ち上がる花火の見どころや花火の変化する様子をわかりやすく解説するなど、サービス精神あふれる楽しい方です。



「大曲の花火 秋の章」は、地元の花火業者それぞれの特徴と、実現させたい演出が見事にマッチした花火劇場となっていました。1つの地域に複数の花火業者が存在する花火の街「大曲」だからこそできた花火大会だと言えます。