10年ぶりのACL決勝進出に沸く埼玉スタジアム。浦和は11月、サウジの強豪アル・ヒラルと雌雄を決する。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 浦和レッズが堀孝史監督のチームになった。上海上港とのホームゲームでそう強く印象付けられたのは、私だけではないだろう。
 
 確かに、ベースを築き上げたのはミシャ(ミハイロ・ペトロビッチ)だ。選手たちの戦術理解度を深め、長い時間をかけて重厚なチームワークを作り上げた。そこを基盤にスタートしたのが、新しいプロジェクト。当初はミシャ政権下のような中盤からの早いパス回しが見られたものの、いまでは縦に素早く繋ぐ場面が多く、状況に応じてもっとも効果的な攻撃をチョイスしているように感じる。チェンジ・オブ・ペースが巧みで、焦って無理に仕掛けることもない。上海上港とはその点で、成熟度に違いがあった。
 
 ミシャの頃では考えられないほど、ポゼッションへの拘りが薄れている。一気呵成に仕掛けた時の迫力はなかなかのもので、スピードとテクニックが高次元で融合するレッズのカウンターは対戦相手にとって脅威だ。水曜日のナイトゲームでは、その逆襲のタイミングと敵陣深くでの攻撃のアイデアが素晴らしかった。
 
 カウンターのベースとなるのは言うまでもなく、守備だ。堀監督の(3バックから)4バックへの転換が、チームに大きな安定を与えた。とくにマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた阿部勇樹が最終ラインで絶妙な動きを見せていて、玄人芸のカバーリングを披露。実に動きやすそうで、生き生きしている。対峙したエウケソンにほとんど仕事をさせず、危険なシーンにはほぼ阿部が顔を出していた。攻撃参加のタイミングも抜群で、いぶし銀の輝きを放っているのだ。
 
 レッズにとって埼玉決戦のポイントは、フッキを止めることにあった。槙野智章と青木拓矢を中心に、これを見事に封殺。戦術レベルの勝利であり、ゲームプランの勝利であったと思う。
 
 守備陣形はきわめてコンパクトで、堀監督が敷いたフォーメーションは、ゲームの最初から最後まで規律良く機能していた。選手個々のボールへのチャレンジが素早く、敵に最低限のスペースしか与えなかったのである。
 
 スタンド上段のプレス席から見ると、上海上港のフォーメーションは明らかにルーズで間延びしていた。選手一人ひとりがかなりアバウトに位置していたのに対し、レッズの選手たちはそれぞれが役割を理解して効果的に動いていた印象だ。上海上港はレッズのコンパクトなサッカーを前にして、ほぼお手上げの状態だった。

【PHOTO】R・シルバの決勝ヘッドで浦和が10年ぶりのACL決勝進出 
 フッキもオスカールも窮屈そうだった。フッキはいくらあちこちを走り回っても、最後までレッズ守備陣の裏を取ることができず、図抜けた才能を持つオスカールでさえ、効率良くボールを配球することができなかったのだ。レッズの完勝と言うほかない。
 
 とはいえ、リスタートはやはり怖かった。フリーキック、コーナーにおけるフッキのロングショットは得点に繋がる可能性を秘めていた。それでもフッキのシュートは青木、槙野、柏木陽介、長澤和輝らがしっかり身体を張って食い止め、コーナーとフリーキックもチームとして、よく研究していたように思う。
 
 もちろんヒヤリとする場面はあったし、キーパー西川周作の何度かのファインセーブに救われた場面はあったが、不思議と安心して見られた。それだけ上海上港はバラバラで、レッズの攻守両面における効率性の良さが際立っていたということだ。
 
 水曜日の夜、久々にアジアに誇れるレッズを目の当たりにした。アル・ヒラルとのファイナルも楽しみだ。

<了>

取材・文:マイケル・プラストウ(『ワールドサッカー』誌)
 
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著者プロフィール
マイケル・プラストウ/1959年、英国のサセックス州出身。80年に初来日し、91年からは英国の老舗サッカー専門誌『ワールドサッカー』の日本担当となり、現在に至る。日本代表やJリーグのみならず、アジアカップやACLも精力的に取材し、アジアを幅広くカバー。常に第一線で活躍してきた名物記者だ。ケンブリッジ大学卒。