こんもりと盛られた大量の野菜に目を奪われる、井手ちゃんぽんの「ちゃんぽん野菜大盛り」(860円)

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団体ツアーで巡るド定番の観光スポットには惹かれない。あらかじめ決められた料理を食べるのも嫌。でも、行程を考えるのは面倒だし、慣れない土地で車を運転するのも不安…。秋の行楽シーズンを迎え、こんなお悩みを抱える方も多いのではないだろうか。そんなあなたにおすすめしたいのが、「シェアトラベル」という新しい旅の形だ。

【写真を見る】井手ちゃんぽんはカウンターが特等席

今回紹介するのは、九州佐賀国際空港活性化協議会とディアンドデパートメントが共同プロジェクトを立ち上げ、この秋申込みを開始した「シェアトラベル佐賀」。ディアンドデパートメントが発行するトラベルガイドブック『d design travel』の編集部が、佐賀県に2カ月間住み込んで厳選したスポットを、チャータータクシーで巡る1泊2日の旅だ。

「シェアトラベル」は2人から最大8人まで、タクシーの乗り合い人数が増えるほど、料金がお得になる仕組み。二世帯や仲良し家族との合同旅行など、人数が多いグループ旅行には特にうってつけと言える。料金に含まれているのは、往復の航空券と宿泊代(朝夕食事付き)、チャータータクシー代のみ。ツアー中に立ち寄る食事処では、好きなメニューを注文できるのも魅力の1つだ。

「シェアトラベル佐賀」では、佐賀の土地に長く続く「個性」と「らしさ」をテーマに、4つのコースを用意。今回はそれらの中から、佐賀の文化と歴史を学び、感じることができる「佐賀のロングライフデザイン定番旅」(7万7300〜10万3500円)を、記者が体験してきた。

■ 井手ちゃんぽん

羽田空港から全日空を利用し、約2時間で九州佐賀国際空港へ到着。佐賀初体験となる記者を「これでもか!」というほど歓迎してくれたのが、昭和24年創業の人気店「井手ちゃんぽん」の大盛りちゃんぽんだった。

同ツアーでは、移動中の車内で『d design travel』ナガオカケンメイ編集長による、音声ガイドが流れる。「ちゃんぽん野菜大盛り」(860円)がおすすめと聞き、普段は大盛りなど頼んだこともない記者だったが、迷わずこれを注文。

朝早くの出発で朝食を食べていなかったこともあり、出てくるのが待ち遠しい。カウンターに腰掛け、目の前でテンポよくちゃんぽんが作られていく様子を眺める。中華鍋で野菜を豪快に炒めるジュワッという音、店内に広がる香ばしい香り、あふれる活気。料理を待つ間、こんなにワクワクしたのはいつぶりだろうか。

そんな記者の前に現れたのは、麺の姿が見当たらないほど高く野菜が盛られた、度肝を抜くボリュームのちゃんぽんだった。早速、シャキシャキ&アツアツの野菜を頬張る。まろやかなとんこつベースのスープに、野菜の甘味がマッチし、箸が止まらない!

やはり野菜の多さは目を見張るものがあり、自分ではかなり食べ進めたつもりでも、なかなか麺にたどり着かないのだ。麺かと思うと、かなりの確率でモヤシ。無我夢中でちゃんぽんを口に運び続けていると、徐々に旅のエンジンがかかり出す自分がいた。旅のスタートに、この土地で60年以上にわたり愛され続けてきた、ソウルフードをお腹いっぱい味わう幸せ。東京一色だった体に、佐賀の血が一気に流れ込んできた気がした。

■ 武雄市図書館・武雄神社

はち切れんばかりのお腹を抱えて、次にやってきたのは、TSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する「武雄市図書館」。足を踏み入れた瞬間、美しい空間デザインに思わず心がときめく。木の温もりを感じる開放感たっぷりの館内に並ぶ、膨大な本の数々。特に、天井近くまで書架がそびえる2階部分は、圧巻の迫力だ。1階にはスターバックスが併設され、コーヒーを飲みながら読書にふけるのもOK。

日本中から注目を集める前衛的な図書館の裏手には、自然豊かなパワースポット、武雄神社がある。この地方特有の形をした肥前鳥居をくぐり、本殿をお参り。ちなみに境内には、2本のヒノキが根元で結ばれた「夫婦檜(むすびの樹)」があり、縁結びのスポットとしても人気を集めているそう。さらに境内の奥へ足を進めると、樹齢3000年の大楠も待ち構えている。凛とした空気を体いっぱいに吸い込めば、自然と心もリラックス!

■ 武雄温泉

武雄神社の散策で軽く汗をかいたところで、次は佐賀の温泉文化を体感できる武雄温泉へ。武雄温泉の歴史は古く、1300年前に書かれた「肥前風土記」の中にも登場するというのだから驚きだ。温泉の入り口に立つ朱塗りの楼門は、東京駅を設計したことで知られる、辰野金吾によるもの。異国情緒あふれる門が、レトロな温泉ワールドへと誘ってくれる。

資料館を見学した後は、明治9年に建築された大衆浴場「元湯」でひとっ風呂!高い天井から漏れ入る陽の光をぼんやりと眺めながら、柔らかなお湯に身をゆだねる。深呼吸をすれば、体中を心地よく木の香りが巡り、この上なく幸せな気分に。まるで明治にタイムスリップしたかのような非日常感を味わえる名湯は、なかなかお目にかかれない。「元湯」の入浴料は大人400円。タオルとバスタオルは250円で借りられる。

■ 志田焼の里博物館

佐賀の“ロングライフデザイン”と聞き、真っ先に焼き物を思い浮かべる人も多いだろう。佐賀県における磁器の焼き物の歴史は1600年頃にさかのぼり、志田焼は1700年頃から志田地区で作られていたという。その生産の中心となり、大正3年から昭和59年にかけて稼働していた工場の姿を今に伝えるのが、「志田焼の里博物館」だ。釘1本に至るまで当時のままに残された工場は、全国的にもとても珍しいのだとか。

ここに残されているアナログな機械は、もちろんすべて実際に使用されていたもの。歴史の重みが詰まった設備の数々を見学しながら、焼き物が完成するまでの工程を学ぶことができる。なかでも、かつて火鉢を焼いていたという、巨大な窯は大迫力!ここでは窯の中に入る、貴重な体験が可能だ。

有田焼が高級品であったのに対し、志田は庶民のために器を焼き続けた歴史がある。生活を支える器の生産に誇りを持ち、人生を捧げた職人たちの熱気が、時を越えて今も館内に渦巻いていた。

■ 大正屋

同ツアーで宿泊する大正屋もまた、“ロングライフデザイン”を体感できる歴史ある宿。大正14年に創業した老舗旅館で、建築家・吉村順三が改修設計を手がけている。到着した瞬間から、趣ある佇まいに心を奪われたが、なかでも感動したのが2つの大浴場だ。

到着したその日の夜は、宿泊者専用の「滝の湯」へ。窓の向こうに広がる日本庭園には滝が流れ、池の鯉が優雅に泳ぐその様を、温泉に浸かりながらゆったり眺めることができる。こちらの大浴場は、24時間営業しているのも嬉しいポイント。記者が行ったのは深夜だったこともあり、情緒たっぷりの景色を独り占めする、最高に贅沢なひと時を過ごすことができた。

翌朝は、高い天井とガラス張りの壁面が開放感を演出する、露天風呂風の大浴場「四季の湯」を堪能。緑に囲まれ、朝の陽ざしを浴びながら入る温泉は、昨夜の「滝の湯」とはまた違う、爽やかな気分をもたらしてくれた。

ちなみに、朝食では温泉水で豆腐を煮込んだ名物「とろける湯どうふ」をいただける。嬉野温泉の優しい泉質を彷彿とさせる、どこまでもまろやかで、とろけるような口当たりの湯豆腐が、旅立つ前の心と体をじんわり温めてくれるのだ。【ウォーカープラス編集部/水梨かおる】