ライブに参加したら肺に穴が開いた、はなかなか聞かない

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呼吸困難と息切れを訴えて受診した少女を検査したところ、肺や気道に計3か所の穴が開いているのが確認された。

かなりの重症にも思える症例報告が、米ダラス小児医療センターのマック・スローター医師によって2017年10月5日、「Journal of Emergency Medicine」電子版に発表された。

しかし報告によると症状は軽症で、発表されたのは恐らく唯一と思われるユニークな原因にあるという。

ワン・ダイレクションに興奮して叫んでいたら...

スローター医師が診察したのは、呼吸の異常を訴えている16歳の少女だ。前日の夜から激しい息切れを訴えていたが酸素レベルに異常はなく、スローター医師の目にも重症のようには見えなかったという。

念のため少女の既往歴をチェックしたが1型糖尿病以外に大きな病気はなく、呼吸器系の病気も発症していなかった。

呼吸回数を計測してみると、通常1分間に平均12〜16回のところが22回となっており、脇腹や胸部などを押すと「パリパリ」と、「まるでクリスピーライスのような音」が響いた。これらの症状からスローター医師はごく少量の空気が呼吸器から漏れており、その空気が肺周辺の軟部組織に流れ込んでいると推測。

CTスキャンで胸部の状態を確認したところ、肺を覆う膜である「肺胸膜」と横隔膜などと肺を隔てている「壁側胸膜」、そして「気管」の3か所に小さな穴が開いていることを確認したという。

患部は確認でき、穴も小さいことから自然に再生すると考えられたが、問題はなぜ穴が開いたかだ。

スローター医師によると一般的にこの3か所に穴が開くのは喘息発作や重量挙げ、スカイダイビング、空挺部隊の過酷なパラシュート降下などで気圧が急激に変化する場合に限られる。

しかし、少女に喘息はなく、重量挙げやスカイダイビングの経験もない。

息切れが起きる前の行動を詳しく聞き出したところ、少女は英国の人気ボーイズ・バンド、ワン・ダイレクションのライブに参加し、「息切れを無視して大声で絶叫し続けていた」ことがわかった。

この事実からスローター医師は「原因はライブでの絶叫」とし、

「無理をして叫び続けたことで組織が損傷し、空気漏れが発生。肺の周囲に空気が流れ込む『自然気胸』になったのだろう」

と結論づけている。スローター医師は診察後症例を調べたが、叫び声によって呼吸器3か所に穴が開いた例は2例しか確認できず、どちらもオペラ歌手だったとしている。ライブで絶叫したことで穴が空いたのは少女だけのようだ。

重症化すると死亡する可能性も

少女の例では軽症だったため、ある程度の空気が漏れたところで止まり、大きな問題にはならなかった。スローター医師によると自然に回復していることが確認されたため、一晩様子を見ただけで退院したという。

ただし、重症化すると肺を囲む胸膜腔が膨らみ続けや心臓を圧迫して死亡に至る可能性もあるため、急な息切れや呼吸困難、胸部の痛みなどを感じた場合や、呼吸困難を訴えてショック状態に陥ったような場合は注意が必要だ。

日本呼吸器学会の公式サイトに掲載された「呼吸器の病気」によると、10〜30代の痩せ型の男性の肺の上部には空気のたまった袋が発生しやすく、これが破れて肺の表面に穴が開き気胸になることが多いという。

叫び声で穴が開くことはそうそうないと思われるが、2例目にならないためにも用心はしておいたほうがいいかもしれない。