恩師ミシャの誕生日に捧げた“無失点勝利” 浦和の守護神が抱くACL制覇への思い

写真拡大

上海上港戦でビッグセーブ連発の西川 「怖さはみんなが消してくれた」

 浦和レッズのGK西川周作は、18日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第2戦、上海上港(中国)戦で見事に相手の攻撃をシャットアウト。

 強力攻撃陣を封じ込めてチームは1-0と勝利し、2戦合計2-1で決勝進出を果たした。奇しくもこの日は、西川にとって“恩師”である存在の誕生日だった。

 西川はこの上海戦で、相手の元ブラジル代表FWフッキが前半24分にゴールから約30メートルの直接FKを狙ったところで、タイミングをしっかりと合わせてセーブ。後半33分にはフッキの強烈ミドルを弾いたところでFWエウケソンに狙われたが、素早く体勢を立て直して距離を詰めてブロック。ギリギリのシーンを守り切った。そうしたシュートストップだけではなく、CKやクロスボールへの対応にも安定感があり、無失点勝利の立役者になった。

 その勝利について西川は、「試合前から無失点で終われば勝ち上がりとシンプルに考えてはいました。強力なFW陣にどこまで守れるかにチャレンジしたかったですが、みんなが厳しく行けて危ないシーンも作られなかった。怖さはみんなが消してくれていたと思う」と、集中力を切らさず組織的な守備を構築したチームメイトに感謝した。

 浦和は今季、リーグ戦で不振に陥っている。西川も「今季は自分たちに思うような結果が出ず、48失点という不甲斐ない数字がある」とその状況を認めており、自身も日本代表から外れるようになってしまった。それだけでなく、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が7月末に契約解除となり、現在はコーチから昇格した堀孝史監督の下で戦っている。

「結果を残してミシャにお礼を言いたい」

 このACLもラウンド16の済州ユナイテッド(韓国)戦までは、ペトロヴィッチ前監督とともに戦ってきた。西川にとってはサンフレッチェ広島時代からの恩師だが、奇しくもこの18日は“ミシャ”の愛称で親しまれたペトロヴィッチ前監督の60歳の誕生日だった。だからこそ西川は、改めてミシャへの感謝を口にしている。

「今の自分のプレースタイルや、プレーする楽しさを教えてくれたのはペトロヴィッチ監督ですよね。今シーズン、自分たちが結果を出せなかったことで責任を取って……。そういう申し訳ない気持ちは今でも持っています。それと同じく、ミシャへの感謝の気持ちは持っています。お礼はハッキリ言えていないですけど、自分たちが結果を残してミシャに対してお礼を言いたいですよね。ミシャが残してくれたものは数多くあるので」

 GKを11人目のフィールドプレーヤーと公言して憚らなかったミシャとの出会いは、GKとして類まれなキック精度と足下の技術を持ち、それをゲームで発揮することを奨励された西川にとって財産になっている。今季は確かに失点に絡むミスもあった。それでも、西川のスタイルはミシャと長く時間をともにしたことで、一人のプロサッカー選手として代名詞となるようなものになった。

 そうした思いがあるからこそ、西川は「ミシャのサッカーに素晴らしかったものは多々ある。それを自分の中に潜めるのではなく、今でもしっかりと出していきたい」と話した。試合が終わり、浦和サポーターの前で吠えるようなガッツポーズで喜びを表現した“笑顔の守護神”は、自身のスタイルを貫いてアジア王者を奪いにいく。それを達成できた時、恩師に最高の笑顔で「ありがとう」の言葉をかけにいけるはずだ。

【了】

轡田哲朗●文 text by Tetsuro Kutsuwada

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images