スポーツショップのみならず、すべての業種に当てはまる的確なアドバイスが好評の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』。今回は著者で現役コンサルタントの梅本泰則さんが、スポーツ業界のこれまでの歩みを振り返るとともに、今後生き残っていくために必要な戦略について記しています。

社員に伝える業界の歴史と未来

あなたのお店では、従業員の皆さんに、スポーツ業界の未来やお店の未来をどのように伝えておられるでしょうか。その先が暗いものであれば、なかなか希望が持てません。ですから、お店の将来の姿を明確に伝えておられる経営者もいます。もちろん成長戦略です。

とはいえ、業界全体が下降線をたどっているのであればその成長戦略もハードルが高いものになります。そのためには、業界全体の未来の姿を見通さなくてはなりません。

では、いったい業界の未来はどうなっていくのでしょうか。未来を知るには、現状を分かっておくことが必要です。そして、現状の姿は、過去からの延長線上にあると言っていいでしょう。ということは、業界の未来を考えるためにはその歴史を知っておくことも重要です。

もちろん、あなたは業界の歴史には詳しいと思います。しかし、従業員の皆さんはどうでしょう。ベテランの社員はともかく、その歴史を知らない人たちも多いようです。そこで、まずは業界の歴史について、簡単にまとめてみます。

実は、スポーツ業界の歴史は、そんなに長くはありません。業界として大きく発展をし始めたのは、せいぜい60年前のころです。もちろん、明治大正のころからスポーツ用品は販売されていました。とはいえ、本格的にスポーツ用品が売れ始めるには、1960年代を待たなくてはなりませんでした。その1960年以降の歴史を、年代順に見ていきます。

業界のおおまかな歴史

まず、業界黎明期の1960年代です。全国各地にスポーツショップが出来始めました。そして、なんといっても1964年の東京オリンピック開催が転機となり、スポーツを楽しむ人たちが増え始めます。商業統計は1972年から始まっていますのではっきりとした数字は分かりませんが、1960年代の終わりには、スポーツショップの数は1万店くらいになっていたようです。売上規模は1,500億円くらいだったと推定されます。

1970年代は日本経済の高度成長が続き、スポーツ業界もレジャーブームに押されて伸びていきました。多くの人がスキー、ゴルフ、テニスを楽しみます。また、アディダスやナイキなどの海外ブランドが続々と入ってきて、国内メーカーさんも発展していきます。お店は、何もしなくても飛ぶように売れた時代です。売上規模は、9,000億円くらいになります。

1980年代は経済安定成長期です。バブルも続いていました。大型スポーツチェーンが全国に進出していったのもこの頃です。それにつれて、メーカーさんもますます力をつけていきます。売上規模は1兆2,000億円ほどです。

1990年代になると、Jリーグも出来て業界の勢いは続くかのように思えました。ところが、良いことは長くは続かないものです。バブルが崩壊しました。やがて、銀行も倒れ、大手GMSも苦しくなります。レジャーブームも終わりです。それでもスポーツ小売市場は1兆8,000億円まで伸びていきました。

2000年代には、とうとう不景気の波をかぶります。大型スポーツチェーンの業績も悪化です。大手メーカーさんも苦しい経営を強いられます。苦しい時代です。町のスポーツショップも、例外ではありません。売上がじわじわと下がり続けます。年間売上は1兆3,000億円まで急降下です。

2010年代になるとさらに状況は悪化していき、中小スポーツショップの激減時代が始まります。その間、大手スポーツチェーンは、商品構成を切り替えながら生き残りを図っていきます。さらに、流通構造を変える要因の一つになっていったのがネット販売の増加です。一方、メーカーさんは販売店の集約化を図りながら、未来に向けた戦略を展開していっています。現在の市場規模は1兆2,000億円ほど。

おおまかに言えば、これがスポーツ業界の現在までの歴史です。こうしてみると、中小のスポーツショップにとっては、あまりいい現状とはいえません。何だか未来も明るくなさそうです。しかし、従業員の皆さんには、こうした歴史と現状を伝えつつ、将来の明るい展望を伝えなくてはいけません。なぜなら、まさに将来は明るいからです。

業界の未来は明るい

どうしてそんなことが言えるのでしょうか。業界にとって明るい将来が見通せるようになったのは、2020年の東京オリンピック開催決定が契機です。それを受けて、2015年にスポーツ庁が出来ました。

そして今年、「第二期スポーツ基本計画」が発表されたのはご存知でしょう。国は、明らかにスポーツ産業を成長産業として見ています。経済活性化、地方創生のエンジンとして考えているのです。業界にとっては、1980年代以来に訪れた、絶好の機会と言っていいでしょう。

ですから、この契機を活かすには、国がどのような計画を持っているかを知ることが、重要なポイントです。その流れに、いかにうまく乗れるかどうかが、スポーツ業界の未来を決めます。

ただし、それには条件があります。過去60年間に行ってきたことと同じことを続けない、ということです。つまり、今まではメーカーさんが開発したり輸入をしたりした商品を有名スポーツ選手を広告塔として、小売店を通じて販売してきました。そのためには、大きな売場を持っているお店が有利でした。メーカーさんにしても問屋さんにしても、販売力のあるお店を大切にするからです。

その一方では、価格を武器にしたネット販売が台頭してきました。その流れに乗ったお店もあります。しかし、他業界で起こっているように、大手チェーンストアの勢いも減速していくでしょう。ネット販売も、アマゾンによって変化していきます。

そんな時代の流れの中で、中小スポーツショップは今までと同じ戦略を続けていても未来はありません。どうすればいいでしょう。ここでは具体的なお話は出来ませんが、小売店さんは、お客様にお店へ足を運ばせるだけの独自性を打ち出すことです。そして、楽しく居心地の良い、こだわりのあるお店を目指さなくてはダメでしょう。さらに言えば、スポーツ産業のとらえ方が今までとは違ってきます。そこに商機があるのです。

こうした未来を、従業員の皆さんに語ってやってください。そうすれば、今以上に希望をもって明るく楽しく働いてもらえるのではないでしょうか。

■今日のツボ■

お店の未来を考えるには、業界の歴史を知っておくことも必要。国のスポーツ産業政策を見れば、業界の将来は明るいことが分かる。社員の皆さんに業界の未来を伝え、希望を持っていただく。

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