<記者コラム:オトゴト>
 音楽好きのみなさまは、音源の「迫力」についてどのように感じられているのだろう。やはり、ダンスミュージックやヘヴィロックなどのバキバキの音楽は、音の密度がより高いものに快感をおぼえるのだろうか。「音圧」が高く、小さな音量でもしっかりどっしり聴こえて、ちょっといいヘッドフォンで聴くと陶酔感が味わえるパツパツの迫力の音源は確かな満足が得られるし、何しろ気持ちいい。でも、控えめな音量で“チル”な音楽をしっぽり楽しむのもまた粋だ。

 エレクトロミュージックや2000年以降のロック盤などでは「音割れるんじゃない?」というくらい、「音の密度」ではちきれんばかりの作品がたくさんある。しかし、大迫力でロックやオルタナティブミュージックを聴くぶんには、ちょっと音が割れているくらいでも気持ちよかったりするのだ。国内の音源では“音割れ”はなぜか御法度のようだが、洋楽盤ではどう聴いても割れているのがけっこうあったりする。

 音源の波形データを“のり”と呼ぶことがある。視覚的に表した音源データの音圧と音量がパツパツ過ぎて“海苔”みたいになっていることから、一部の音楽クリエーターからはそう呼称されている。

図解1“海苔”
Cubaseで書き出したもの

・どのセクションでも音圧がぎっしりなのがわかる。波形の色こそ白だが海苔のような状態の波形。実際にこの音源はバキバキのEDM。音量控えめでもしっかり気持ち良く聴ける。

ちなみに、“のり”ではなく割とスタンダードな音源波形データはこんな感じだ

(図解2)“非海苔”2mixデータ
Cubaseで書き出したもの

・ギザギザした部分で音の大小が視覚的にもわかる。こちらもエレクトロミュージックの音源だが、作者が意図的に音圧を控えめにしているもの。プレイヤーの音量をちょっと上げると作品の真骨頂が味わえる。

 音圧がパツパツの音源は、音量が小さくてもしっかり聴けて頼もしい音源という反面、図で識別できるように、どこを聴いても迫力があるのでダイナミズム的な“わびさび”に長けている訳ではない、という一面がある。人によってはただただやかましく聴こえることも。

 対して、マスタリング工程などで音圧を過度に上げていない音源は、常にしっかりした音量という訳ではなく、セクションによっては「音小さいかな?」と感じることもあるが、佳境では最高の迫力を魅せ、楽曲や演奏のダイナミズムを充分に味わえるという点がある。音圧の高い音源も、そうでない音源も、どちらも一長一短あるのが面白い。(後編へ)【平吉賢治】