<「悪者」トランプがムチを振るうのなら、欧州にアメをやる役を任せるべし>

交渉をまとめるためには、場合によっては「悪者」になることも必要だ――ドナルド・トランプ米大統領は87年の自伝でそう主張した。対イラン政策でも、この本の手法をそのまま踏襲しているのは確実だろう。

トランプは10月13日、15年に結んだ核合意をイランが遵守しているとは認めないと宣言。「さらなる暴力と恐怖、イランの核武装という極めて現実的な脅威」につながる道は歩まないと強調した。

この「脅し」が追加の譲歩を引き出すためのものだとしたら、トランプは間もなく、交渉にはムチを振るう「悪者の警官」とアメをやる「善人の警官」の両方が必要なことを悟るだろう。イランとの交渉で後者の役割を最もうまく務められるのは、ヨーロッパだ。

イランにとってのアキレス腱は今も経済だ。ヨーロッパとの経済関係の強化は、イランの行動を変えさせる強力なてこになる。トランプ政権はヨーロッパを説得して、共同でイランに圧力をかけるべきだ。

イランの核武装阻止を目的とした15年の核合意を破棄したいと考える勢力はほとんどいない。それでも、トランプの対イラン強硬策がヨーロッパで一定の理解を得られる可能性はある。

中東におけるイランの地域戦略に対し、アメリカとヨーロッパは共通の懸念を抱いている。イラクとシリアへの武力介入、イスラエルの国家としての生存権に対する強硬な反対、イラン国内の抑圧的な支配などだ。

ただし、両者が足並みをそろえるためには、必要不可欠な条件が1つある。アメリカが核合意を破棄しないことだ。

性急な核合意破棄はヨーロッパの多くの国々に恐怖をもたらす。アメリカは根気強くヨーロッパとの協調を模索すべきだ。

例えばヨーロッパは、イランのミサイル開発を正当防衛的な軍事戦略の一環と見なす傾向が強い。しかし、この解釈はイラクやシリアなどへのイスラム革命の輸出というイランの長期的な取り組みと矛盾する。

イランがこれらの国々で武装勢力を支援する背景には、中東の政治秩序をひっくり返そうとする狙いがある――この点はヨーロッパも認識している。トランプはヨーロッパとの話し合いでそれを強調すべきだ。

アレックス・バタンカ(米中東問題研究所上級研究員)