夏のインターハイが終わり、全国の高校サッカー部の戦いの舞台は選手権の予選に移っている。各都道府県の予選は順調に消化され、いよいよシード校が登場する佳境に突入していく。

 そんななか、静岡県の時之栖(ときのすみか)スポーツセンターでは、今年で2年目の開催となるニューバランスチャンピオンシップU-16大会が行なわれた。

 今大会には、昨年度の選手権ファイナリストである青森山田高(青森)と前橋育英高(群馬)をはじめ、全国の強豪33チームが集結。台風の接近で豪雨・強風に見舞われながら、3日間にわたる激闘を勝ち抜いた昌平高(埼玉)と静岡学園高(静岡)による9月18日の決勝は、埼玉の”新鋭”が静岡の”古豪”を1-0で退けて2代目の王者に輝いた。


ニューバランスチャンピオンシップU-16大会を制した昌平高校

 2014年に初めて全国の舞台を踏んだ昌平の特長は高いポゼッション率にあるが、決勝に進出した両チームに提供されるデータスタジアム株式会社の試合データからもわかるように、この試合でボールを支配していたのは、選手権11回の出場を誇る静岡学園だった。


両チームに提供されたデータスタジアムの試合データ

 試合を通じて約60%のボール支配率をキープし、特に前半15分までは70%と圧倒。それを可能にしたのは、正確なパスだ。昌平より約200本も多い473本という本数の多さはもちろんだが、各選手の技術の高さ、的確なポジショニングにより約76%という成功率を記録している。

 その中心となっていたのは、8番MFの藤田悠介だった。味方からパスを受けた本数、パスを出した本数は共に両チームのなかで最多。藤田を中心にスピーディーにパスを回し、足元だけでなく、Jリーグ1試合のチーム平均数(15本)を大きく上回るチーム27本のスルーパスでDFラインを崩しにかかった。

 静岡学園は個人の能力に優れた選手も多く、10番MF田中大晟のドリブル突破などからクロスを19本上げてゴールに迫ったが、決勝までの5試合を無失点で勝ち上がってきた昌平の守備は堅かった。自陣深くに攻め込まれても、ディフェンシブサード(D3rd:フィールドを3分割したうちの、自陣側のエリア)で成功率が85%を超えるタックルでボールを奪取。特に、大会のMVPに選ばれた14番DFの西澤寧晟は、ペナルティエリア内でのクリアが11本と、ピンチにもまったく慌てることなく完璧な対応を見せた。

 前半9分に、67番FW山内太陽の2試合連続ゴールで先制点を挙げた昌平だが、リードを守るためにガチガチに守りを固めていたわけではない。自陣深くからの組み立てが多くなったとはいえ、前方へのパスの比率は5割に近く、積極的に追加点を狙いにいった。

 同点に追いつこうと前がかりになった静岡学園の裏を狙っていたのは、46番MFの鎌田大夢だ。兄は、今年6月にサガン鳥栖からブンデスリーガのフランクフルトに移籍した鎌田大地。本人も「兄譲り」と話す視野の広さを活かし、ひとりで13本ものスルーパスを供給した。

 このスルーパス13本という数字は、川崎フロンターレの司令塔・中村憲剛の今シーズン最多スルーパス数(26節:清水戦での12本)を上回る。そんな”最大の武器”で何度も決定機を演出したことで、静岡学園はその度にラインを下げざるを得なかった。

 その鎌田をはじめ、昌平の各選手は終始プレッシャーをかけるために走り続けた。球際も粘り強く、その選手が抜かれても他の選手がすぐさまカバーに回る。その意識の高さが、決勝までに星稜高(石川)や野洲高(滋賀)といった選手権の優勝経験校さえも完封する原動力となった。


昌平の無失点優勝に貢献し、大会MVPを獲得した西澤

 大会MVPの西澤は、この3日間でのメンバーの成長をこう話す。

「普段から、監督からは”チャレンジ&カバー”を徹底するように言われていますが、今大会ではそれができたように思います。この大会の前までは、コミュニケーション不足や集中力不足などで失点を重ねる試合が多かったので、この時期に、強豪校を相手にそれを改善できたのは自信につながります。トップチームのメンバーに入ることは簡単ではありませんが、この経験を活かしてさらに成長したいです」

 西澤も述べたように、多数の部員を抱える強豪校でレギュラーを獲得するのは容易ではなく、常に公式戦が続く中で高校1年生が実践経験を積む場は限られてしまう。それゆえ、このようなU-16大会でタイトルをかけた真剣勝負で得られる経験は何物にも代えがたいだろう。
 
 静岡学園は10月14日に富士宮北高を2ー0で下し、昌平は10月28日に選手権予選の初戦を迎える。今大会に出場した選手がいきなりスタメンで活躍することは難しいだろうが、1年後、2年後にチームの主力としてピッチに立っていることを期待したい。

■サッカー高校・ユース 記事一覧>>