彼岸花の群生地として知られる「九品寺」(奈良県御所市)について先日、「景観が危機に瀕している」との投稿がツイッター上になされました。撮影者のマナーが悪く、地域住民から「彼岸花の群生をなくしてしまっては」などの声も上がっているそうです。

 その「マナーの悪さ」とは具体的に「咲く寸前で無残に踏み荒らされた花」「お寺への無用な問い合わせ」「駐車場でのトラブル」「夜半の話し声」。この投稿者は撮影者に向けて「地域の方の景観を大事にしたいという思いにそえるよう、撮影者等がお互いに注意しあい、地域の方の努力を裏切らない撮影・鑑賞マナーを」と呼びかけました。

 今回は、国内外の企業や大学などでマナーコンサルティングや人財教育を行うほか、NHK大河ドラマなどのドラマや映画、テレビ番組でもマナー指導や監修を数多く務め、70冊以上のマナー本があるマナーコンサルタントの西出ひろ子さんに、九品寺のような景勝地における撮影マナーについて聞きました。

マナーだけでなく「法律」の問題

Q.問題になっている九品寺での行為の数々はマナー違反と言えるでしょうか。

西出さん「言えます。ただ、マナーは法規や協定などではありませんので“違反”という言葉を使うのは、少し強過ぎる言い方になるかもしれません。とはいえ景勝地に限らず、周囲に対して迷惑をかける行為はマナーに反すること。また、今回のケースはマナー云々では済まされない、法に抵触しうる内容でもあります」

Q.法律の問題を含めて、景勝地でしてはいけないことは何でしょうか。

西出さん「私有地に無断で侵入するなどの行為が法に触れる可能性があることは、意外と知られていないかもしれません。リバティ法律事務所の塩野正視弁護士によると、柵などで囲まれていたり、看板などがある土地に無断で立ち入れば住居侵入罪(刑法130条)が成立しえます。そうでなくても、きちんと植栽をして管理しているお花畑であれば、お花を踏み荒らすような立ち入りは同罪が成立しうるそうです。つまり、マナー云々では済まされない、刑法に觝触する話といえます。どうしても私有地に立ち入りたい場合、管理者に確認や許可を取ることが必要です。一方でマナーの観点からは、人のみならず、物や動植物、自然界すべてが対象です。『写真を撮って残したい』『SNSにアップしたい』という気持ちは理解できますが、すべての対象(相手)を思いやり、迷惑をかけない、傷つけないように意識するのが大前提といえます。その上、知らなかったでは済まされない法を犯す行為は当事者のためにもやめるべきです」

注意する場合は「クッション言葉」を

Q.マナーの悪い人を見かけた場合、どのように対処すべきでしょうか。

西出さん「善かれと思って注意したことで、逆恨みから事件が起きる悲しい現実もあります。見て見ぬふりをして、注意をしない方が身の安全ともいえますが、注意されて初めて誤りに気づく人がいるのも事実。注意することはその当事者を救う行為でもあるのです。注意する時はまず「すみません」(「Excuse me」の意味)と、話しかける前のひと言を伝え、相手がカッとしないような穏やかな表情で『お気持ちはわかるのですが』などと、相手の気持ちに共感する柔らかいクッション言葉を用いた後、注意内容を伝えましょう。相手への思いやりを持った伝え方をすることで、素直に聞き入れてもらえると信じます。また、注意された側もカッとならず、誤りを素直に認めて『失礼しました』『ご指摘ありがとうございます』と言えると素敵です。相手を傷つけたり迷惑をかけたりしないことがマナー。皆でマナーを意識し合うことでお互いにプラスとなるよう、声を掛け合うことは素晴らしいこと。マナーあふれる社会は、景勝地同様に美しいものです。一人一人が法を遵守し、マナーを意識して美しい自然と社会にしていきましょう」

(オトナンサー編集部)