衆院選を前に開催された日本記者クラブ主催の党首討論会の様子(2017年10月8日、写真:つのだよしお/アフロ)


 10月22日の衆議院総選挙・投票日に向けて候補者たちが熾烈な戦いを繰り広げるなか、経済団体が硬軟自在のアプローチで各党に牽制球を投げかけている。

 選挙戦が公示になった10月10日、午後の記者会見で経団連(日本経済団体連合会)の榊原定征会長は、「政治の安定こそが経済発展の前提条件」として、与党が安定多数の議席を確保して政治の安定が続くことに期待したいと表明。安倍政権については「個人的には」と前置きした上で、経済や外交、安全保障などそれぞれの政策でかなりの成果を出していると評価した。

 現与党の政策を礼賛しつつ安定対数を期待するという物言いは、いかにも伝統的な経団連会長の発言と言えよう。

 経団連は「企業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、我が国経済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与すること」を使命として掲げている。だが、榊原会長の発言からは、「国民生活の向上」を真剣に願う姿勢は伺えない。

 結局は、経団連は企業、それも大企業の利益代表でしかないということだろう。もちろん企業の利益はそこで働く人の利益にもなる。とはいえ、それは国民全体からいえばごく一部の人々である。経団連の誘導する利益が多くの生活者の暮らしに資するものでは決してない。

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税は適正に使われているのか?

 一方、今回の衆院選にあたり、より踏み込んだ形で各党に具体的な提言を行った経済団体がある。550の企業や団体が加盟する「生団連」(国民生活産業・消費者団体連合会、小川賢太郎会長)だ。

 生団連ではかねてから「税金のムダ使いへの監視、分析の強化」を重点課題に掲げていたが、この選挙期間中の10月12日、各党に対して提言を送った。

 その内容は「政府の予算編成過程の透明性を確保し、PDCAサイクルを機能させよ」というもので、税が適正に使われているかを監視する「独立財政機関」を設置し、そのうえで以下3つの施策が必要だとしている。

(1)独立財政機関の指針に基づく中期歳出枠を設定、歳出枠を毎年度の予算編成において遵守する。

(2)同機関により歳出の費用対効果分析や目標との乖離原因の分析を行う。分析結果は国民に公開し、翌年度以降の予算策定手続きに反映させる。

(3)中期歳出枠の考え方や、予算編成手続き、その検証・評価結果を国民に開示し、国民が納得する財政運営を行う。

 流通小売業界が多く加盟する生団連にとって、増税凍結は最も直接的な利益につながる。そういう意味では、経団連の向こうを張って、それを公約に掲げた「希望の党」を推してもおかしくない状況だった。しかし提言では透明性の高い予算制度づくりにフォーカスしており、増減税には触れていない。

 透明性の高い予算制度づくりの仕組みができて初めて「国民生活の安全、安定の確保と質の向上」が実現でき、国民の信任を得られるというのが生団連のスタンスである。

対照的な両経済団体の対応

 生団連の提言に対して、自民党は迅速に対応した。10月16日、自民党は生団連の提言を「今後の財政再建、PB黒字化に向けた具体的な計画を作る上で、時宜を得た提案」と評価したうえで、「中長期的な歳出枠の設定、予算の客観的な評価指標の設定と検証、これらの国民への開示など、提案内容を可能な限り計画に盛り込めるよう取り組みたい」と回答した。

 また、立憲民主党も17日に生団連に回答を寄せた。「貴連合会から頂戴しました『財政・予算制度改革についての提言』につきましては、きわめて重要な内容を含むものであり、今後、生活者の視点を大切にする立憲民主党として、党内で誠意をもって検討を行わせて頂きます」という。

 あくまでも“戦後体制”の安泰を願う経団連、かたや国民生活の向上につながる具体的な提案を与野党に突きつけた生団連。今回の総選挙は、図らずも両経済団体の“本性”の違いをまざまざと見せつけることとなった。

筆者:三田 宏