GAP銀座店(「Wikipedia」より)

写真拡大

 米衣料品チェーン大手のギャップは9月6日、今後3年間で傘下の「GAP」と「バナナ・リパブリック」の店舗を約200店閉鎖すると発表した。

 ギャップ社の業績は悪化している。2016年度(17年1月28日に終了した会計年度)の売上高は、前年度比1.8%減の155億1600万ドル(約1兆7000億円)、14年度比では5.6%の減少となった。2期連続での減収だ。16年度末の店舗数は14年度末から50店減っている。08年のリーマンショック以降は緩やかながらも売上高は上昇傾向にあったが、ここにきて急ブレーキがかかったかたちだ。

 背景にあるのは、主力ブランドのGAPとバナナ・リパブリックの不振だ。16年度のGAPの売上高は54億5500万ドル(約5900億円)で、13年度から14.1%減少している。3期連続での減収だ。一方のバナナ・リパブリックも、16年度の売上高は24億7100万ドル(約2700億円)で14年度から15.4%減少し、2期連続の減収となっている。

 GAPはドン&ドリス・フィッシャー夫妻が1969年に米サンフランシスコで第1号店をオープンしたのが始まりだ。80年代に「SPA」と呼ばれる、製造から小売りまでを一貫して手掛ける体制を提唱したことで知られている。クラシックでありながらモダンなアメリカンカジュアル(アメカジ)を中心に販売している。

 GAPが世界的なブランドにまで成長できたのは、SPAにより製品を低コストで生産したことが大きい。製造から小売りまでの全工程を自ら関与することで効率性を高め、低コストで製品を生産して高い利益率を確保することができるようになった。そして80年代から90年代にかけて大きく成長していった。

 しかし、その後は業績が低迷する。北米市場で店舗数が飽和状態に達したことと、「ZARA」や「H&M」といったファストファッションが台頭したことなどが大きく影響した。日本でも「ユニクロ」が大きく成長した。これらのファストファッションの多くがSPAを採用していることもあり、GAPの優位性は次第に薄れていった。

 さらにインターネット通信販売が普及したことも大きい。アマゾンなどのネット通販の攻勢で、GAPなどは消費者を奪われている。店舗網が充実していなくても、衣料品が売れる時代になった。GAPのような大きなブランドほど、そのしわ寄せは大きい。物販のうちネットを介して売買される比率(EC化率)は、米国では約7%と高く、その市場規模は年々増加している。

 GAPの姉妹ブランドである「オールドネイビー」との自社競合も影響している。オールドネイビーを簡単に表現すると「GAPの廉価版」だ。アメカジを低価格で提供しており、1万円もあれば全身をコーディネートできる。

 オールドネイビーの16年度の売上高は前年比1.1%増の60億5100万ドル(約6600億円)でGAPの約2倍、バナナ・リパブリックの約3倍にもなる。店舗のほとんどが北米にあり、その数は1000(16年度末時点)を超える。一方、GAPは北米で800店以上(同)を展開しているが、両ブランドでカニバリゼーション(共食い)が発生し、GAPがオールドネイビーに食われているのだ。

●日本でも低迷

 日本のGAPも厳しい状況にあると考えられる。GAPが日本に上陸したのは95年で、東京・銀座の数寄屋橋阪急に日本1号店がオープンした。現在は約110店を展開している。決算は非公開のため日本のGAPの業績はわからないが、1号店から22年を経て110店舗体制ということを考えると、業績が好調とはいえないのではないか。日本ではユニクロが800店以上を展開し、ZARAやH&Mも店舗数を伸ばしており、GAPが競合に押されている感が否めない。

 ブランド力が低下していることも影響していそうだ。先述したように、GAPはアメカジを販売している。アメカジを簡単に表現すると「アメリカ風の衣料品」だ。かつては、日本人の多くがアメリカへの憧れを持ち、アメカジがブームになったこともあるが、今は下火といっていいだろう。時代の進展とともにアメリカへの憧れは消えつつあり、アメカジを志向する人は減っていったといえる。

 また、GAPはアメカジを主に扱ってはいるが、一方でベーシックな製品も少なくない。しかし、そういったベーシックな製品は、ユニクロなどに侵食されている。同じようなデザイン・品質の商品を、他店で、しかもより低価格で買えるようになっている。こうしたこともあり、GAPのブランド力は相対的に低下していったといえる。

 GAPは価格政策で失敗している側面もありそうだ。日本にあるGAPの商品価格は、カジュアルブランドのなかでは高いほうだ。たとえば、デニムの中心価格帯は定価で7900〜9900円となっている。今や、この価格帯で売っていくのは難しい。そこで、GAPでは30〜50%オフといったセールを頻繁に行うことで、販売促進につなげようとしている。50%オフであれば、デニムは4000〜5000円程度になる。この価格帯であれば買う人は少なくないだろう。

 ただ、こうした手法に対して厳しい意見も多い。「品質以上の価格を定価で設定して、常に大幅な割引をして販売するのは詐欺に近い」といった意見を持つ消費者が増えているのだ。こうした価格政策が、消費者からの信頼を損ねている可能性も指摘されている。

 日本のGAPが苦戦しているなか、さらにギャップ社は日本市場において手痛い失敗を犯している。同社はオールドネイビーの1号店を12年7月、東京都江東区のダイバーシティ東京にオープンした。北米以外では初出店だ。その後、イオンモールなどショッピングセンターを中心に出店を重ね、53店を出店した。しかし、わずか4年で撤退追い込まれ、全53店を閉鎖することとなった。

 撤退に追い込まれた理由はいくつかあるだろうが、「ブランド力が落ちたGAPの廉価版」というイメージを覆すことができなかったことや、ユニクロなどのファストファッションで事足りてしまうという消費環境が、大きく影響したのではないだろうか。

 競合という点では、ユニクロの姉妹ブランドで、より低価格の「GU」が急成長していたことも無視できない。GUとオールドネイビーは、価格帯がほぼ同じだ。そうなると、特に好みのファッションでない限り、ブランド力で大きな差がつくことになる。「GAPの姉妹ブランド」よりは「ユニクロの姉妹ブランド」のほうが支持する人が多いのかもしれない。オールドネイビーの日本撤退からも、GAPのブランド力の衰えがうかがえる。

 ギャップ社は約200店を閉鎖するだけでなく、ブランド力の回復も検討する必要があるのではないだろうか。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。