長崎新幹線の建設現場では、真横を在来線が走る。通過する列車すべてに確認の合図をするという(記者撮影)

整備計画策定から40年以上。地元の期待を一身に背負った、佐賀県の新鳥栖(しんとす)と長崎市を結ぶ、九州新幹線長崎ルート(以下、長崎新幹線)の建設が本格化しつつある。

目下建設中の区間は武雄温泉―長崎間の計67キロ。起点である武雄温泉駅と終点の長崎駅に加えて、嬉野温泉駅(仮称)、諫早(いさはや)駅、そして長崎空港からほど近い新大村駅(仮称)が新幹線駅として整備予定だ。

地元長崎にとって、新幹線開通は悲願だ。2011年3月に全線開業した九州新幹線の鹿児島ルートは、博多を出発すると熊本や鹿児島方面へ南下し、佐賀や長崎には向かわないため波及効果は限定的だった。

だが長崎新幹線が開業すれば、博多―長崎間の所要時間が20〜30分ほど短縮される見込みだ。長崎県の試算によれば、観光や買い物などによる経済波及効果は71億円に上るという。

国の整備新幹線小委員会によれば、総工費は5000億円。2022年の暫定開業を目指し、関連設備の建設がヤマ場を迎えている。

鉄道工事に強い、その名も鉄建

期待の新幹線建設を担うゼネコンの1つが、東証1部に上場する鉄建建設(以下、鉄建)だ。同社の売上高は約1650億円と業界としては中堅に位置するものの、1944年に「鉄道建設興業」の名で創業し、現在でもJR東日本が10%を出資する筆頭株主で、鉄道工事分野ではスーパーゼネコンにも引けを取らない実績を誇る。

この長崎新幹線では総延長約2キロメートルの経ヶ岳トンネル、諫早駅付近の高架橋、さらに終点である長崎駅に至る線路の高架化に至るまで、数十億円規模の大型工事を多数受注している。

ほかにも北陸新幹線福井延伸ルートや北海道新幹線、さらにJR山手線品川―田町間の新駅設置工事など大型プロジェクトを次々と受注。鉄道以外の土木・建築工事も数多く抱える。


豊富な受注機会に恵まれ、業績も急回復している。前2017年3月期の決算では営業利益61億円(前期比3.4倍)と急伸。純利益に至っては39億円(同3.1倍)で21年ぶりに過去最高を更新した。

今2018年3月期は通期営業利益を横ばいの61億円と見込むが、第1四半期決算は営業利益14.6億円(前期比2.6倍)と出足は好調。11月10日に予定する第2四半期決算次第では通期業績見通しの見直しもありそうだ。

業績は昨年度から急回復

快走ぶりが目覚ましい同社だが、業績は数年前までは低空飛行が続いていた。2008年のリーマンショックや2009年からの民主党政権による公共事業抑制政策、さらに主要顧客の鉄道会社を筆頭に民間企業も投資を控えたことで受注競争が激化し、利益が圧迫されていった。大型工事で不採算案件があり、2013年3月期は7年ぶりの営業赤字に沈んだ。

以来、営業利益率は3年連続で1%台に沈んでいた同社だったが、ここへ来て不採算工事が一巡するとともに、工事の原価管理を徹底。量より質の受注姿勢へと本格的に舵を切った。

これまで手が付けられずにいた現場の業務効率化も進め、事務作業の外注やITの導入など施工効率化を進め、高騰する人件費を吸収。ようやく本格的な営業増益へとこぎ着けた。

今後も大型工事を控えることも、業績に追い風となっている。同社が得意とする鉄道工事は、ほかの土木・建築工事と異なり参入障壁が高い。

各鉄道会社によって、求められる要件や資格が異なるうえ、鉄道の運行に支障をきたさず工事をする必要がある。鉄道向けの建設を手掛けるのは、スーパーゼネコンを除けば東鉄工業といったJR系列のゼネコンなど一握りだ。

今回、記者が取材に訪れた諫早駅付近に建設中の栄田高架橋は、総延長の6割以上がトンネルを走る長崎新幹線において、在来線と並走する数少ない区間だ。

列車が工事現場スレスレを並走しており、見張り役が通過列車に対して毎回合図をしないと、運転手が危険と判断して列車を止めてしまう。さらに在来線に影響が出ないよう、橋脚部分の工事は終電から始発までの時間に限られる。

株価は足踏み状態


現在の長崎駅。在来線・新幹線共に高架化される予定だ。右側は建設中の高架の橋脚(記者撮影)

終点である長崎駅周辺の線路高架化工事では、用地が狭いため一度仮線路を敷設して車両を移し、空いた土地に高架橋を建設する。こちらも運行中の在来線と隣り合わせの工事だ。

長崎駅は留置所の役割も兼ねるため、それを支える高架橋のサイズも巨大だ。駅付近では新幹線、在来線、そして留置線がそろい踏みし、それを最大で幅38メートル、線路8本分もの橋桁が出現する。巨大な橋の超重量に耐えるべく、橋脚内部の鉄筋がさながら知恵の輪のように絡み合う姿は、熟練した職人をもうならせる。

こうした強みを持つ鉄建だが、株価は2014年に5000円台を付けてから、2017年は3000円台と足踏み状態。10月18日の終値でも3520円にとどまる(2017年9月末に10株を1株に併合)。営業利益率も今期の見通しで3.6%程度、上場する建設会社の平均営業利益率6.7%(『会社四季報2017年第4集』)を下回っており、株価も業績もまだ伸び代を抱えている。

これから本格化するリニア新幹線の工事も控える中、今後も業績を伸ばし続けることができるか。日本の大動脈の建設という重責を担う同社に引き続き注目だ。