IBEX35の銘柄でもあり、ガス取扱量で世界第4位を誇る大企業ガス・ナチュラル・フェノーサもバルセロナからマドリッドに移転した。 photo by Ricardo GNF via Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)

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 10月13日、スペインの報道メディアは一斉に10月9日から11日までの僅か3日間でカタルーニャ州から500社以上が州外に本社を移転したことを報じた。

「El Pais」紙によれば、9日(212社)、10日(177社)、11日(135社)という具合で、3日間で524社がカタルーニャ州から登記上の本社をマドリード、バレンシア、アリカンテ、サラゴサなどに移したのだという。更に、10月1日から12日までに一部企業は上述期間と重複することになるが、以前に既報の大手銀行2行を含め大手企業など44社が州外に去ったそうだ。

 10月1日は違憲住民投票が行われた日。9日はカタルーニャ議会で独立宣言が行われる日とされていたが、それが1日延期されて10日に議会が招集された。そこでプッチェモン州知事は独立宣言を曖昧な形で表明したため、その後スペイン政府から独立宣言をしたのか、しなかったのか明白な回答が要求されることになった。

 そして12日は、ジュンケラス副州知事がテレビ6チャンネルに出演して司会者から「多数の企業がカタルーニャから去っているという噂があるが?」という質問に、同副州知事はそのような噂を一切否定したのであった。しかし、現実には9日から3日間で上述したように異常な数で企業が州外に去って行ったのであった。

 国家法務局の登記の統計は即座には判明しないことから、ジュンケラス副州知事が司会者の質問に答えていた時には、3日間で500社以上の企業が州外に去ったということは知らされていなかったわけである。

 しかし、忘れてはならないのはカタルーニャで州政府による独立の動きが活発になった2012年から今年まで5年間でおよそ4800社が本社を州外に移転させたという事実である。もちろん、州内に移転あるいは設立される企業もある。ただ、例えば2012年だけを見ると州外に去った企業は4804社、州内に移転或いは設立された企業は3095社となり、差し引き1709社がカタルーニャ州から企業数が減少したことになるという計算だ。

 むろん、登記上の本社を州外に移すということでは、現状の本社勤務社員はそのまま現在の勤務地で勤務するというわけで、素人目から見てカタルーニャ州にとってそれは単に書類上の変更だけだと思われがちである。しかし、実際にはカタルーニャの今後の経済成長に深刻なマイナス影響を及ぼすことになるのは必至である。

 例えば、カイシャバンクとサバデル銀行という大手銀行2行を含めた大手企業44社が州内にいたときは、法人税およそ21億ユーロ(2兆7300億円)のうち、およそ10%がカタルーニャ州政府の財源として還元されることになっていたのだ。それが今後の財源として得られなくなるのである。(参照:「El Confidencial」)

 実際に本社を州外に移した企業が数千社にも及ぶことになれば、どれほどの打撃になるか想像に難くない。

 S&Pは現在のカタルーニャ州を(B+/B’)と格付けしており、今後さらにスペイン政府と対立が続くと景気の後退を余儀なくさせられるとしている。現在のカタルーニャ州の格付けは債務不履行の心配があるという段階に入る一歩手前に位置しており、厳しい状況下にある。

 景気と言えば、スペイン国内からカタルーニャ州への注文も減少しており、零細企業では平常の受注量から70%減少しているという深刻な事態にある企業も現れているという。(参照:「El Confidencial」)

 また、カタルーニャからバンカイシャとサベデル銀行の大手2行が姿を消したが、それに続いて他の銀行も本社を州外に移しており、カタルーニャ州で本社を構えている銀行は皆無となった。

 カタルーニャ州政府は共和国になった暁には、この2大銀行を共和国のメインバンクとすることを期待していたが、この2行の経営者は政治家の理想論よりも現実経済を選んだというわけである。