試合前に挨拶を交わす両監督。互いに持ち前の攻撃サッカーを存分に披露し、スリリングな試合を演出した。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 2012年から2016年にかけて、風間八宏監督が率いていた川崎フロンターレと、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いていた浦和レッズの対戦はスリリングな試合が多かった。それは、互いに攻撃的なサッカーを志向していたからに他ならない。

 
 ただ、かつての“風間フロンターレ”を相手に、“ミシャ・レッズ”に勝るとも劣らない激戦を演じた好敵手がいる。それが、者貴裁監督が率いる湘南ベルマーレだった。
 
 足もとの技術を徹底的に突き詰めて高いポゼッション率を保ち、敵陣に侵入していく川崎と、圧倒的な走力を活かしたハイプレス・ショートカウンターを武器とする湘南。対照的な手法でアグレッシブなサッカーを展開する両者の対峙は、まさに手に汗握る展開の連続だった。前のめりになる川崎の攻撃を耐えつつ、ミスが生じたら大人数をかけてカウンターで仕留める湘南のゴールは印象的なものばかりである。
 
 今季から風間監督は名古屋へと活躍の場を移し、者監督の湘南もこれまでのスタイルから徐々に変化を加えてきている。そういう意味では、これまでと同じような展開にならない可能性があった。とはいえ、この両指揮官の戦いの歴史を踏まえれば、かなりの確率で“面白い”試合となるはずで、筆者自身そういう予測があったからこそ、37節の名古屋対湘南へと足を向けた。
 
 結果的に首位であり12戦無敗だった湘南を3-2で名古屋が叩き、自動昇格圏内の2位と勝点差を「3」まで縮めることになった。その中で生まれた5得点は両チームの哲学を見事に表わしていたように思える。
 
 名古屋の3つのゴール<ガブリエル・シャビエルの先制点、シモビッチのスーパーな一発、そして3点目のトリックプレーから生まれた玉田圭司のゴール>は、フィニッシュの形に関してはそれぞれが異なっている。しかし、先制点は起点となった小林裕紀から得点者のG・シャビエルまで、絡んだすべての選手のイメージが一致し、それを高い技術によって実現したものだ。
 2点目にしても“個の力”と言ってしまえばそれまでかもしれないが、アシストをした和泉竜司が「胸を狙った」と語るように、単純にシモビッチの高さに頼ったラフなクロスが呼んだものでなく、受け手と出し手のイメージが一致したがゆえに生まれたゴールだ。
 
 今の名古屋の躍進はG・シャビエルの加入ありきで語られる節があるが、彼を活かせるチームの基盤ができてきたという点にも目を向けたい。
 
「ベースがチームの中にできてきた。その中で彼(G・シャビエル)もほとんど無駄にボールを持たなくてすむし、それから逆に周りの選手も彼のアイデアによって引き出されるところもあります。シャビエルがマークをつけられても、いろんな選手がボールをもらえるようになりましたし、そのベースの中に彼が入ってきて、すごく合ってきたなということだと思います」
 
 攻撃を作るなかで個々のアイデアがつながり、高めてきた技術がそれを結実させられるレベルにまで上がってきている。名古屋の攻撃は着実にレベルアップしていると言えるだろう。
 
 一方の湘南は、その名古屋に対して受けの姿勢をとらず、かといって闇雲にプレスをかけるようなことはせず、全体が連動してパスを前線に入れさせないような位置をとる。そして奪ったあとは持ち前の縦への推進力を見せつけ、サイドから中へ斜めに入る攻撃を展開した。
 
 その中で奪った菊地俊介の同点弾、そして敵陣深くへ“追い込んで”名古屋のビルドアップを遮断して菊地が再び仕留めた逆転弾は、敵陣に人数をかけて圧力をかけるスタイルゆえに生まれたものだ。しかし、その流れのまま追加点を奪えず、後半開始早々に名古屋に2発を打ち込まれたことで勝敗が決してしまった。