久保建英の奮闘も虚しく日本はイングランドのゴールネット揺らせず【写真:Getty Images】

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U-17日本代表、W杯ベスト8進出ならず

 U-17W杯の決勝トーナメント1回戦、日本は17日にイングランドと対戦した。結果はPK戦の末にベスト16敗退。それでも日本の選手たちは最後まで諦めずに戦い、世界の強豪相手にも通用する力があることを示した。一方で課題も多く出た大会となったのは事実。結果以上に有意義なものが得られた大会となった。(取材・文:舩木渉【コルカタ】)

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 いつも淡々としている久保建英ですら、言葉に詰まった。それほどあの1試合にかける思いは強く、力を出し切ったということだろう。

 17日に行われたU-17W杯の決勝トーナメント1回戦。日本は大会屈指のタレント集団にして優勝候補のイングランドと激突した。結果は90分で0-0、PK戦で3-5。ギリギリまで追い詰めながら、あと一歩及ばなかった。

 グループステージを3連勝、全試合3得点以上という圧倒的な強さで勝ち上がってきたイングランドは、ヨーロッパでも黄金世代と評価の高いチームだった。難しい相手に間違いなかったが、日本の選手たちは日の丸を背負うことの誇りと魂を存分に見せてくれた。

「17歳でも日の丸を背負って戦えるということは本当に言葉では言い表すことができない大きいものだと思います。W杯という舞台で、ピッチの11人に入るという責任もありました。背負いたくても背負えない日本の選手がいたりだとか、(大会直前にケガをした)斉藤(光毅)選手や瀬古(歩夢)選手もここに立ちたかったと思うんですけど、そういう人たちの面も含めて気持ちが乗り移ったと思います」

 DF菅原由勢は、誰よりも体を張ってイングランドの選手たちに立ち向かっていった。彼の奮闘なくして、0-0で90分を終えてPK戦に持ち込むという結果はなかったかもしれない。3-5で敗れたPK戦でも、1人目のキッカーとして、きっちりと責任を果たした。

 日本の戦い方は概ねプラン通りだった。グループステージ2戦目のフランス戦で、格上のチーム相手にボール支配率を上げて試合の主導権を握ろうとする形が失敗に終わっていた教訓が生きていたのかもしれない。イングランドに対してはしっかりと策を練り、まずは粘り強い守備から入ることを強く意識していた。

 前半からイングランドにボールを持たれる時間は長い。それでもゴール前はしっかりと固め、決定的な場面は体を張って阻止する。なかなか思うようにゴールを決められない展開に、イングランドのスティーブ・クーパー監督も怒りを隠せなかった。

「あれが森山ジャパン」。大一番で見せた日本の底力

 日本がゴール前を死守する姿は、まるで対戦相手と同じものを見ているようだった。イングランドは攻撃が自陣まで迫ってくると、最終ラインの4人がペナルティエリアの幅まで絞り、シュートを打つスペースすら与えない守備陣形を敷く。「ゴールを守る」というサッカーの守備の原則に忠実で基本的なプレーだが、グループステージも含めて見ていると、これがまた強固だった。そしてそれは日本にも乗り移る。

 菅原は「あれが森山ジャパンです」と笑顔を見せる。どんな時も戦う姿勢を見せることこそ、森山佳郎監督が2年半をかけて教え込んできた、チームのベースとなる部分だった。主将の福岡慎平も「(森山監督からは)ファイティングスピリットを学びました。泥臭く勝つとか、球際で戦う部分です」と話す。まさに積み上げてきたものが集大成として発揮された。

 森山監督が最初に現U-17代表につながるチームの指揮を執ったのは2015年4月のU-15日本代表のインドネシア遠征だった。当時から現在までの約2年半、福岡、久保、菅原をはじめ、鈴木冬一、宮代大聖、喜田陽、谷晃生、棚橋尭士といった選手たちが中心としてチームに残り続けている。

 その遠征でU-15インドネシア代表に1-2で敗れたところからのスタート。森山監督曰く「とにかくユニフォームをドロドロにして走って戦って、というベースの部分がちょっと忘れかけていた」ところから戦う姿勢を見直してきたが、「僕もプレーの質とか、コンビネーションとか、そういう方向に、主導権握ってやろうという方向にちょっとフォーカスして、走る、戦うという部分がおざなりになっていた」とW杯期間中に改めて気づかされた。それがグループステージ第3戦のニューカレドニア戦(1-1のドロー)である。

「ニューカレドニアの意地でも勝ち点1を取ってやろうという気持ちだとか、そういう根本のところか、僕たちの原点を思い出させてくれたというか、本当にそういう、相手よりも走る、相手よりも戦う、相手よりも球際で負けないという、本当に根本のところをニューカレドニアがしっかり教えてくれて、そこからチームがうまくまとまって、守備もできた」(菅原)

 痛恨のドローが、もともと一体感に定評のあったチームの団結を一層深めた。個人の差を組織力で埋める…チームが本来の強さを取り戻した。

突きつけられた力の差。選手たちは次のステップへ

 それでも個々のクオリティの差はピッチ上で如実に現れた。「負けたのには足りなかったことがあったわけで、それはゴールにつながるクオリティや、ゴールに向かう迫力、あとラストのところですね。それはこれからの宿題」と森山監督は認める。

 やはりそれは攻撃面である。今回はイングランドを無得点に抑えたが、日本も無得点に抑えられた。「自信があった」というラスト20分、相手の足が止まり始めてから日本は主導権を握って何度もゴールに迫ったが、あと一歩が足りずネットを揺らせなかった。必ずどこかでイングランドの守備にほんの少しだけ上をいかれる。

 そういった極限状態で決定機を逃さない力、一瞬しかないチャンスを決め切る能力、局面打開における的確な判断、屈強なDFに当たり負けしないフィジカル、相手のプレッシャーをかわすプレースピード…挙げればきりがないくらい多くの課題が出た。これらは日本国内で共有し、より厳しい環境の中で研ぎ澄ましていかなければならないだろう。

 相手にした「個人の足し算ではNo.1」のイングランドを追い詰め、勝利までもう少しのところまで達しただけに、悔しさは大きい。だが、選手たちはまだ若い。W杯での経験はこれからのキャリアに必ず生きるはずだ。

「U-17でもU-16でもU-15でも、すべてはA代表でプレーするためにやっていますし、僕たちは17歳の日本代表ではなく、A代表としてW杯で戦わなければいけないと思います。僕たちはこの経験をできた以上、本当にその責任というか、『俺たちは世界を経験しているんだぞ』と、経験できなかった人よりも、その10倍くらい頑張らなければいけないと思いますし、常にA代表を目指して頑張りたいと思います」(菅原)

「ゴリさん(森山監督)の下でプレーできて幸せでした。本当に世界一の監督にしたかったですけど、僕の中では世界一の監督です。この2年半、このメンバーでやれて本当に楽しかった。遠征がある度に楽しみで仕方がなかった。このメンバーで優勝して終わるのが一番でしたけど、これから東京五輪とA代表があるので、そこでまたみんなと会えるように、優勝できるようにやっていきたいです」(福岡)

「今日で終わるという実感はないんですけど、いままで切磋琢磨してきて、みんなで今日は後悔をしない試合ができて、誰も後悔しない。本当にいいチームだったと思います」(上月壮一郎)

「もう試合がなくなっちゃったのは悔しいです。(W杯の経験は)マイナスにはならないでしょうね。絶対プラスになると思うので、でも、それもここからこの大会に出ていなかったような選手たちが活躍するかもしれないですし、経験をプラスにするかマイナスにするかは自分しだいだと思うので、帰って無駄じゃなかったと思えるように努力していきます」(久保)

負けをエネルギーに。森山監督が伝えたかったこと

 U-17W杯を経てよりたくましく成長し、未来に目を向ける選手たちに、「ゴリさん」の愛称で親しまれた森山監督もエールを送る。

「最後まで諦めずにボールを追いかけて、本当に極限まで戦ったその姿に心を打たれたというか、本当に素晴らしい、誇らしい選手たちと、2年半の旅が終わってしまいましたが、本当に素晴らしいハートを見せてくれた。選手たちは大泣きしていましたが、その涙はこれからの大きな成長のエネルギーにして欲しいですね」

「かなり違うレベルの相手に対してこの集中力、組織力というのは十分にできた。その組織力を構成する個をもうちょっとだけ、インテンシティを、強さ、フィジカル…いろいろなものを総合的に上げていくということじゃないかな。それを体験できた選手たち、今日のゲームに出場した選手たちは、絶対自分で『これが足りなかった』とか、『こうすればシュートが決まってたのに』とか、そういう思いで、今日イングランドが勝った姿も目の裏に焼きつけながら次のステップを踏んでくれるんじゃないかと思います」

 U-17日本代表は信じられないほどの集中力とモチベーションでイングランドに挑み、はかなくも散った。彼らのキャリアが今後どうなっていくかは誰にもわからない。それでも世界に通用した日本の組織力に自信を持ち、突きつけられた世界との個人能力の差をエネルギーに、必ず成長した姿を我々の前で見せてくれるはずだ。今度はA代表のW杯で、彼らの輝く姿が見られる日がくると信じている。

(取材・文:舩木渉【コルカタ】)

text by 舩木渉