【ライターコラムfrom川崎】チームを支える前後の柱…小林悠と谷口彰悟の“良質な関係”とは?

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「ショウゴ(MF谷口彰悟)が点を取ると、自分も点を取る率が高いんですよ」

 いつだったか、FW小林悠がそんな風に笑っていたことがある。

 谷口は今季の明治安田生命J1リーグ戦で、自身最多となる6ゴールを記録している。そのうち4ゴールが小林とのアベック弾で、最近では第26節の清水エスパルス戦と第28節のセレッソ大阪戦でゴールを挙げている。

 中でも印象的だったのが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝で浦和レッズに大逆転負けを喫した直後に行われた清水戦だ。心身ともに疲労困憊だったであろうアウェイゲームで、谷口はセンターバックでありながら3得点すべてに絡んでいる。3−0で勝利を飾った試合後、チームに意地があったと口にする。

「フロンターレは勝負弱いと言われていて、そこに負けたくなかった。僕らは優勝のために1年頑張っていて、こんなことで崩れてたまるかという気持ちがあったし、それをピッチで表現した。結果、3−0という形で終われた。チームとしても自信がつく内容だったと思う」。

 昨季ぐらいから、チームの中心選手としての自覚を持っているのは感じられた。しかし今年になってからは、去年以上に自分がチームを引っ張るという意志の強さが伝わって来る。そしてそれがゴールという結果にも結びついているのだろう。

 ディフェンスリーダーとして最終ラインを牽引する谷口は、昨年同様に副キャプテンを任されている。チームでの立ち位置は変わらないが、今年からFWの小林がキャプテンになったことで、試合中の役割は意識的に変えている。

 キャプテンである小林にはなるべくゴールを取ることに専念してもらって、試合中にチーム全体を見渡す役割というのは、センターバックの自分が意識してやるように心がけているというわけだ。そして、ときには自らゴールを奪いチーム盛り立て、キャプテンの小林のゴール欲を刺激する。なんとも、できた副キャプテンだ。

 そんな谷口の存在が、キャプテンを任されている小林の負担を軽減しているのは言うまでもない。シーズン序盤、初めてのキャプテンとなった小林は、自分なりのキャプテン像に悩んでいた。しかし夏以降は「自分がゴールを奪うことがチームを引っ張ることにつながる」と、自分のやるべき仕事を明確に打ち出し、ゴールも量産し始めた。

「それはハッキリしましたね。チームのことを考えるよりも、ゴールを決めることが一番チームに良い影響があるなと整理できている。後ろのことはショウゴなりリョウタ(MF大島僚太)、(韓国代表GK)チョン・ソンリョンが支えてくれている。自分がFWの仕事をやることを専念できていますね」。

 ストライカーであるキャプテンには自分の仕事でチームを引っ張ってもらい、チーム全体をコントロールする役割は、ディフェンスリーダーである副キャプテンが行う。中盤には成長著しい大島(現在離脱中)とミスターフロンターレ・MF中村憲剛がおり、真ん中でゲームをコントロールする。キャプテンに試合内容や勝敗の全てを背負わせるのではなく、センターラインの選手たちでその負荷をうまく分け合ってプレーできているというわけだ。

 こうした骨格にブラジル人DFエウシーニョやブラジル人MFエドゥアルド・ネット、チョン・ソンリョンという頼りになる外国人選手がチームを骨太にして、さらにMF阿部浩之やMF家長昭博といった新加入組が新しいエッセンスも加えている。そして鬼木逹監督も、去年より勝利にこだわった。

 前節のベガルタ仙台戦では、10人になりながらも終盤の5分間で2点差をひっくり返すという、J1史上初となる大逆転劇も起こした。その主役は2ゴールをあげた小林だ。試合後、キャプテンである自分の役割をあらためて、こう口にした。

「自分はFWだから、と割り切れたときからゴールもどんどん取れるようになってきたと思います。キャプテンだから、という考えが先に来るのではなくて、FWとして点を取って、チームを勝たせることが、いまの僕のキャプテンとしての仕事だとしっかり整理されている」。

 シーズンも終盤に入ってきてケガ人や出場停止の選手も増えてきたが、いまの川崎にはゆるぎないものがある。そしてその中心には主将・小林悠とともに勝敗を背負う副主将・谷口彰悟による「良質な関係」がある。そんな視点に注目しても、面白いかもしれない。

文=いしかわごう