主人公・日浦美月を演じる中谷美紀/カメラマン=舞山秀一  、ヘアメイク=下田英里、スタイリスト=岡部美穂

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10月21日(土)よりWOWOWプライムにて「連続ドラマW 東野圭吾『片想い』」が放送される。本作は、東野圭吾原作のヒューマンミステリー作品で、中谷美紀が性同一性障害の主人公・日浦美月を演じる。今回、新境地に挑みさまざまな役作りを行った中谷にインタビューを行い、作品の見どころの他、難しい役への思いを聞いた。

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■ オファーは手放しで喜んでというよりも演じ切れるのか恐る恐るだった

――今回「連続ドラマW」初主演ということで、性同一性障害の主人公・美月のオファーがきてどのように思いましたか? まずは感想をお聞かせください。

WOWOWのドラマは美しい映像と骨太な物語が見られるので、ぜいたくでとても好きだったんです。今回美月役のお話をいただいた時は、手放しで喜んでというよりは恐る恐るでした。とても難しい作品でしたので、むしろ私では演じ切れないのではないかなと。20代後半〜30代前半の細い男性の方が演じた方が、もっといい作品になるのではないかなと思ったりもしていました。

■ どうあがいても“本物”になれないもどかしさ

――演じる上で特に心掛けていたことや難しかったことはありますか?

せりふの中で「どうあがいても本物にはなれない」という言葉が出てきて、今回はそのせりふをよりどころに演じました。

実際どんなに頑張っても、どんなに筋トレをして低い声を出してみても私自身本当の男にはなりきれないんですよね。それが非常にもどかしくて、もどかしくて。これが本当にホルモン剤を打てば、もっと楽に演じられるのにと思いつつ、でもそれは演じるということとは変わってくるので、それもしたくないんです。

でも、本物に近づかないのも悔しいので、その理想と現実のせめぎ合いで、どうしても乖離(かいり)してしまいます。

そういった、この役に成り切りたくてもなれないもどかしさと美月の男性になりたくてもなれないもどかしさを重ねながら演じていました。

――今回、自分を男性だと旧友にもオープンにできるようになった現在と、心は男なんだけど女性として振る舞っている大学時代の両方を演じられていましたが、演じることは難しくなかったですか?

演じていてとても気持ちが悪かったですね。大学時代も女でもない男でもないけど女を装っているというのは、ちょうど男らしさを追求しているときだったので、女性物のかつらをかぶったり、結婚式のウエディングドレスを着るというのが何とも居心地が悪かったです。女装している感覚というか。たぶんそれが美月の感じていた、自分の性に関する違和感と重なるかなと思います。

■ 今回は贖罪の気持ちも込めて

――中谷さんと役が重なるようになってジェンダーについて思うところや変化はありましたか?

演じれば演じるほど、ジェンダーって白黒つけられないものだという思いが募ります。自分が女性であったとしても誰しも女性らしさを演じていたり、あるいは仕事の場面によってはあえて女性らしさを排除していたり。男らしさとか女らしさとか、ジェンダーについては永遠の理解できないテーマかなと思いますね。

――「性同一性障害」についてどういったイメージを持たれていましたか?

たまたま持って生まれた心が自分の肉体的な性や社会的な性と違ったにもかかわらず、「障害」と名前が付いてしまうのも、歯がゆいというか、何とも言えないなあと。むしろそういった方々を若いころは面白いなあと思ってしまって。

実は今回贖罪(しょくざい)の気持ちも入っているといいますか…若い頃に出会った性的マイノリティーの方が珍しかったり頭の回転も速くて話術も巧みなので、一緒にいると楽しかったんですね。自分が楽しいがために、相手の気持ちも考えずにそういった方々と交流していたんだなと思うと、本当にそれは自分が未熟で失礼だったと感じますね。

■ 髪の毛をバッサリ15cmカット!「毛量の問題が…」

――髪の毛をバッサリ切られるという印象的なことがありましたが、髪形を変えるということはご自身の中で、思い切ったという思いはあったのでしょうか?

むしろ髪形を変えることは一番楽な役へのアプローチで、髪形を変えることで「別の人物になれるのならいくらでも!」という感じです(笑)。

――特に抵抗はなかったんですか?

特になかったですね。ただ1点悔いがあるとすれば私の毛量がもっとあれば…刈上げももっと格好良く決まるのになという、毛量の問題だけが…(笑)。

――ビジュアルについて、周りの方から反響はありましたか?

ジムで擦れ違うご婦人に「いいわよ、その髪形、似合っているわよ」って褒められました(笑)。

――今回主人公・美月は国仲さん演じる理沙子に恋心を抱くという役柄でしたが?

今回は“国仲涼子さんを旦那さんから奪う”ということを最終的なゴールとして頑張ったんです(笑)。残念ながら、思惑とは裏腹にその気配はまるでなく、完全な片思いに終わりましたが…。

――共演者の方々との印象深いエピソードなどはありますか?

和田正人さんが高知のご出身の方で、そういえば初ガツオの季節だったなと思ったんですね。しかも、ちょうど徳谷トマトの時期だったのも思い出しまして。「おいしいよね〜みんなきっと食べたいと思うんだよね」と言ったら、本当に全員分を空輸して持ってきてくれました(笑)。本当にうれしかったし、おいしかったです!

――改めて、視聴者の方へ見どころ、メッセージをお願いします。

東野圭吾さんが練りに練った展開が読めないミステリーで、きっと飽きずにご覧いただけるので、ぜひ最後まで見ていただきたいです。キリキリと胸が切なくなりつつ、温かい感動に包まれるような作品だと思います。