MBAを取得してメリットはあるのか?(写真:JackF / PIXTA)

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はじめまして、玉川大学経営学部の中田と申します。私は現在就活中で、来年あるベンチャー企業に就職する予定です。
将来的にはMBAを30歳までに取ると決めているのですが、いくつか気になることがあったので質問させてください。
なぜ安井さんは、MBAを取ろうと思ったのですか? なぜケンブリッジを選んだのでしょうか? MBAを取ってどんなメリットがありましたか? MBAを志す者として意見を聞きたいと思っています。
大学4年生 中田

なぜMBAを取ろうと思ったのか


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私がMBAを取得しようとした理由は明確で、卒業後ベンチャー企業にしか勤務していなかったからです。そして目的は、自分の実力を客観的に判断する場としての側面、経験を棚卸して知識を体系化する側面、そして自分の学歴コンプレックスの払拭と休暇の4つです。

私自身がMBAを取ることを決意したのはまだ大学在学中でした。詳細の理由は拙著『非学歴エリート』をご参照いただきたいのですが、当時の経済や就職の環境、そして自己研鑽の場として最高であるという理由から、卒業したらベンチャー企業に行くと決めていたため、どうしてもビジネススクールに行くというキャリアを描く必要があったのです。

といいますのも、ベンチャー企業とはまさに小さな組織であり、まだ未熟な組織ですから、そもそも社員の教育制度も何もないケースが大半なわけです。また、必要最低人数で回していて業務が忙しいことからも、先輩社員が手取り足取り仕事を教えてくれるということはありませんし、もっというと先輩社員ですら経験していないことも非常に多いわけです。

そうすると、必然的に私もそうでしたが独学で勉強をして、独自のやり方で仕事を覚える、ということをせざるをえないわけです。それが大企業なら、新卒社員の導入研修がご丁寧にマナー研修からあったり、現場配属後はいわゆる先輩社員がいろいろと教えてくれたりとするものです。

私自身としては、自分の努力次第でどこまででも上に行ける「可能性のある」、そのような環境を欲していたからこそ、そういったベンチャー企業に飛び込んだわけですが、いかんせん前述のとおり自己流にすべてがなるわけですから、客観的視点がどうしても欲しくなるわけです。具体的には、「この会社ではこのやり方が通用したが、ほかの会社ではどうなのだろう」といったようなことですね。

世間知らずや井の中の蛙(かわず)になったり、間違えた自信を持たないように、客観的な環境における自分の実力のチェックがしたかったわけです。

理由がそれだけであれば転職という選択肢もあるのですが、もう1つ、ベンチャー企業における仕事が自己流であり、なおかつ実務中心にどうしてもならざるをえないので、今後のキャリアを考えて自分の経験を自分の中で整理し体系化したい、という欲求があったのです。

といいますのも、私にとって最高の学びは「実践と学習」のループを絶え間なく回して、そのバランスが取れている状態であろう、という考えを持っているからです。

自己流でやる中で、各種資格の取得などをベンチャー企業にいる間に文字どおり寝る間を惜しんでしてきたわけですが、ビジネス・経営系の最高峰であるMBAをどうしても狙いたかったのです。

それに加え、私自身が決してトップ大学を出ているわけではないので、非常にお恥ずかしいながらそのコンプレックスの払拭のために最高の環境と世界の中でのbest & brightestに囲まれて勉強でき、なおかつ誰もが知っているブランドを欲していたというのがあります。

ケンブリッジを選んだ理由

さらに、2年間ではなく1年間で集中して一気に学び、早く仕事の場に戦線復帰したい、という欲もありましたから、MBAが1年制のケンブリッジとオックスフォードしか受けていません。そしてありがたいことに両校よりオファーをいただきました。

そして最後の理由、休暇。これは当時ここでは決して書けないような仕事量と時間を、文字どおり血を吐いてまでこなしていまし、仕事以外にほぼ何もしていなかったので、社会に出て初めての休暇を取りたかったというのも事実です。

MBAに行って、社会人になって以来初めて1日3時間以上寝ましたし、お酒を飲む時間もようやく確保できるようになったのです。

そのような理由で、MBA、それもケンブリッジに行ったのです。

結果はどうだったか?

キャリアにおける自分自身の投資(もちろん私費です)において2番目のリターンでしたから、大正解だったと思います。ちなみに1番目はベンチャー企業に勤務して、文字どおり血を吐くまでやって結果をそれなりに出せたことです(詳細はここでは割愛しますが)。なぜならば、上記の目的を達成できたということを通じて、自分により自信が持てるようになったからです。

MBAは魔法ではない

もちろんMBAに行く理由は人それぞれでしょうが、絶対にやってはいけないのは、「何となく」とか、「現状を打破したいから」とか、「周りが行くから」という、主体性のない理由です。ましてや英語を学びたいからなんて、MBAは上級語学学校じゃありませんから、論外です。

といいますのも、MBAはあくまでも学位であり、魔法ではないのです。それだけで現状なんて打破できませんし、自分が突然スーパーマンに変身できるわけではないのです。

MBAとは手段ですから、その目的がしっかりとしているかぎりにおいて初めて効力を発するのです。目的次第で、MBAはよい投資にもなりますし、大失敗にもなりえます。

中田さんもぜひ、ご自身のキャリア観におけるMBAの位置づけを明確にしたうえで進学をされるとよいでしょう。その後の活躍を心より応援しております。