千葉県袖ケ浦市の石炭火力発電所建設に反対する環境NGOのメンバー。世界的には大きな課題となっている地球温暖化対策だが、総選挙では大きな争点とはなっていない

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◆温暖化対策として、総選挙で石炭火力規制を「公約」にしている政党は皆無

 地球温暖化防止の国際的な枠組み「パリ協定」が昨年11月に発効したことで、世界経済は石油・石炭などの化石燃料への依存からの脱却へと急速に動いている。ドイツは2030年まで、イギリス・フランスなどは2040年までを目標に、ガソリン車やディーゼル車の廃止を表明。

 さらに、世界最大規模の運用額を誇るノルウェー政府年金基金が石炭関連事業への投融資をしないことを決定するなど、国際的な金融市場においても化石燃料への投融資を引き上げる動きが広がっている。

 脱・化石燃料へと世界経済が激変する中で、本来であれば「地球温暖化対策」は、今回の衆院選では各党の経済政策の柱となるべきものだ。だが実際には、温暖化対策は争点になっているとは言い難い。

 温暖化対策について政策提言しているNGO「気候ネットワーク」東京事務所の桃井貴子氏は「パリ協定での目標を守る気があるならば、石炭火力発電を規制していくべきですが、各党の政策集を読んでも、明確に石炭火力発電への規制を公約にしている政党がないことは残念です」と言う。

◆自公政権は、石炭火力発電を「推進中」

 日本の年間での温室効果ガス排出量のうち、発電などのエネルギー部門からの排出は全体の約4割を占める。

「特に火力発電の中でも、CO2排出係数の高い石炭火力発電を減らしていくことは、温暖化対策において最優先課題の一つ。ところが、日本は今後の石炭火力発電所の新設計画が42基もあるのです。これは世界の流れと逆行するものです」(桃井氏)

 新たに稼働し始めた4基に加えて新設42基が稼働すると、年間総排出量は約1億1876万トンとなり、日本の年間総排出量(2015年)の1割近く。これは「2030年までに26%削減(2013年比)」という日本のCO2排出削減の国際公約と矛盾する。

 関東で新規の石炭火力発電所の建設を計画している事業者に聞くと、日本の電力業界が石炭火力発電に前向きな理由の一つには「安倍政権が高効率型の石炭火力発電を成長戦略の柱に位置づけていることがある」という。

 2013年に閣議決定した「日本再興戦略」では「高効率火力発電を徹底活用」とあり、今回の衆院選での自民党の政策集にも「火力発電の効率化」との記述が書き込まれた。だが「高効率の石炭火力発電であっても、天然ガス火力発電の約2倍とCO2排出係数は高い」(桃井氏)として、気候ネットワークほか国内の環境NGOは石炭火力発電所の新設に反対している。

◆共産、社民、立憲民主各党の石炭火力に対するスタンスは?

 石炭火力推進の自公政権に対して、野党側にはどんな対策があるのかを質問してみた。

 安倍政権による石炭火力推進を強く批判しているのが共産党だ。政策集においても、石炭火力規制までには踏み込んでいないものの「火力発電における燃料を、石炭・石油からLNG(液化天然ガス)へ切り替えていきます」としており、実質は脱・石炭火力だと言える。

「2030年までに電力需要の4割を再生可能エネルギーで賄う」として、太陽光や風力などの推進にも積極的だ。安倍政権のもとで廃止された送電事業者の再生可能エネルギー買い取り義務を復活させる、再生可能エネルギーを受け入れ得るために電力網を増強させるなど、具体的な政策が明記されている。

 社民党は政策集の中で「2050年までに再生可能エネルギー100%を目指す」と書いており、それは「段階的に石炭火力を含む火力発電を廃止していく」ということを意味するのだろう。社民党の政策担当常任幹事に確認すると「石炭火力に否定的であることは間違いない」との回答を得た。

 立憲民主党は「石炭火力の規制も検討したい」「民進党では、2030年代原発稼働ゼロを目指すとともに、省エネは最終エネルギー消費を2010年実績から約25%削減するとともに、2030年に再生可能エネルギー30%以上、温室効果ガス90年比30%削減という目標を掲げた。これをさらにすすめる形で、リアリズムをもって臨む」と回答した。