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「新しい選手をテストしたいという意向が、ニュージーランド戦よりも強く出ていた。しかし、中盤の動きは改善されていなかった。とりわけディフェンス面は後手を踏んでいた」

 ミケル・エチャリはそう言って、ハイチ戦を振り返っている。

 エチャリはスペインで目利きとして知られる。70歳になる現在の肩書きはバスク代表監督(FIFA未公認)で、第一線を退いてはいるが、昨シーズンで引退したシャビ・アロンソなど多くの選手が今なおアドバイスを求めるほどだ。その慧眼(けいがん)は、日本代表の本質的な問題を鋭く見抜く。

「ハイチ戦の3失点。すべてに共通するのは、日本代表の守備インテンシティの低さだ」


ハイチ戦では2点をリードしながら3失点した日本代表

 エチャリは厳しく指摘している。今回のテーマは「守備インテンシティ」になるだろうか。

「まず目を引いたのは、ハイチのキックオフだ。彼らは一度ボールを下げてから、結果的に左タッチラインを割るボールを蹴り込んでいる。どこにでも蹴れるボールを、なぜムダに相手に渡すのか? 相手のプレッシャーを避けるためだとしても、もっと中央寄りにボールを蹴って、攻撃の可能性を残すべきだろう。もしボールを失っても、そこで一気にプレスをかけ、ショートカウンターも狙える。

 自分たちがイニシアチブを持っているのがキックオフだということを覚えておくべきだ。なぜこんなことを言うのかといえば、日本も後半のキックオフでまったく同じくようにボールをプレゼントしているからだ」

 タクティクスとは、こうしたディテールを指しているのだろう。

「前半の日本は、尻込みしたハイチを相手に主導権を握っている。フォーメーションは4-3-3を選択。攻守両面で各選手の動きが噛み合っていた。相手のボールを奪った後、何度かコンビネーションからのショートカウンターを展開。ニュージーランド戦でも推奨したが、サイドバックの長友佑都がゴールライン付近まで駆け上がったことで、守りを崩すことに成功した」

 7分、杉本健勇がフリックしたボールを長友佑都が左サイド奥深くに持ち込み、ニアにクロス。これを2列目から飛び込んだ倉田秋がヘディングで合わせた。

「日本はその後も得点チャンスをたくさん作っている。長友は左サイドの奥まで進入。脅威を与えていた」

 17分には酒井高徳から乾貴士、浅野拓磨とつなぎ、杉本が倉田にラストパス。倉田のシュートはGKにブロックされたが、そのこぼれに杉本が反応しており、押し込んだ。これでリードを2点差に広げた。

「得点シーンには攻撃戦術の要素が多く盛り込まれ、まさに”チームとしてのゴール”だった。スペースを作り、スペースを支配する。サポート、ダイアゴナルの動き、人がいないところに飛び込む、2列目からの飛び出し、こぼれ球への反応、なにより攻撃中のリスクマネジメントもできていた。チーム全体でコンビネーションを使った、素晴らしいゴールだった」

 ところが2-0とした後、日本のプレーは急速にトーンダウンした。

「日本の選手たちは”リラックス”してしまった。28分には、かなり長めのグラウンダーのロングパスを、FWデュカン・ナゾンの足下に通させている(コースを開けてしまった)。マークしたのは昌子源だったが、強度が低く、潰せていない。これで右サイドからの攻撃を展開され、中にボールを通されると、これを受けたケビン・ラフランスに対し、GK東口順昭が出るが、鼻先で突かれた。一連の守備で、遠藤航は簡単に置き去りにされ、小林祐希はラフランスに前を取られ、昌子も本来のポジションから釣り出されていた。どこを切り取っても、守備強度は低かった」

 53分には左サイドでファウルを犯してFKを与え、クイックリスタートで折り返され、ナゾンをフリーにして失点を喫している。

「後半の2失点目に関しても、簡単にクロスを上げさせてしまった。守備が緩く、集中を欠いていた。また、エリア内でのマーキングも十分ではなかった。必然の失点だろう。

 追いつかれた日本の守備陣は、完全に受け身に回ってしまう。ハイチが勢いを得たことで流れに飲み込まれた。相手の中央部は守りが厚く、そこからのカウンターも怖いだけに、サイドでポイントを作りたかったのだろう。しかし後半は長友、酒井宏樹の不在の影響が顕著だった。押し返すことができないでいた」

 そして78分、ナゾンにミドルシュートを叩き込まれ、2-3と逆転されてしまう。

「3失点目も日本の守備強度が低かった。シューターに対して誰もブロックにいけていない。ハイチにバックラインのスペースを思うままに使われてしまった。ナゾンはサイドでボールを受けている。本来は右サイドバックに入った酒井高徳が厳しくいくべきだが、この瞬間、サイドは数的不利だった。中盤のサポートがなかったと言える。アンカーに入った遠藤はサイドまでカバーしないにしても、ただ上がる、下がるのではなく、もう少し横のスペースを意識してプレーする必要があるだろう」

 アディショナルタイム、日本は右サイドでポジションを上げた酒井高徳が放ったシュートのコースを香川真司が変え、どうにか同点に追いついている。

「逆転された日本は、交代出場の原口元気が際どいシュートを放ち、存在感を見せていた」

 最後にエチャリは、ハイチ戦について努めて好意的に捉え、分析を締め括った。

「様々なレベルの相手と対戦することで、異なるシチュエーションが出てくる。それは強化試合としては当然の試みだろう。適応力が問われるなか、試合中にインテンシティが極端に下がった点はひとつの課題だ。ニュージーランド戦で指摘していた危機管理の甘さも出てしまった。ただ、攻撃面では希望も見えた。失敗を教訓にすることで、チームとして成長することができるだろう」

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