9月20日、日の出とともにカテゴリー4のハリケーン「マリア」が上陸したカリブ海の小島プエルトリコ。多くの建物が倒壊し、全島が停電。通信も飲料水もなく、壊滅的被害を受け、34人が死亡する惨事となった。

 事態は深刻を極め、最大都市サンフアンの市長が連邦政府の対応の遅れへの不満を発言したことから、ドナルド・トランプ米大統領は彼女のリーダーとしての資質や自助努力の欠如を非難。

 メディアの報道姿勢にも「プエルトルコの人々よ、フェイクニュースを信じないで」などとツイートした。

 10月3日、ようやくトランプ大統領はプエルトリコ入り、サンフアン近郊の住宅地視察など行ったが、12日、「電気やインフラはハリケーン前から「disaster」だった」「連邦緊急事態管理庁、軍、救援隊も永遠にいるわけではない」とツイート・・・。

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米国籍はあっても投票権はなし

 1493年、スペインのイサベル女王の支援を受けたクリストファー・コロンブスに“発見”され、19世紀末の米西戦争までスペインの支配を受けてきたプエルトリコ。

 その350万人ほどの住民の大半はスペイン語ネイティブで、米国籍は持つが、大統領選の投票権はなく、ほとんどの場合、連邦所得税が免除されている自治的未編入領域「Commonwealth」という特殊な政治的地位にある。

 2015年にはデフォルトに陥り、今年5月、連邦地裁に破産申請。6月の州昇格を問う住民投票では支持票97%も、反対派野党のボイコット呼びかけもあり投票率は23%だった。今年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、米国代表がプエルトリコ代表と決勝戦を戦っている。

 こうした出来事からも歴史からも、「本土」とプエルトリコの間には、カリブ海という地理的隔たりだけではない微妙な距離感を感ぜずにいられない。

 カテゴリー1から5へと急速に発達した「マリア」がグアドループを襲いプエルトリコへと向かっていた頃、トランプ大統領は国連本部で就任後初の演説を行っていた。

 「自国や同盟国を守らねばならなくなれば、北朝鮮を『完全に破壊』するしか選択肢はなくなる」

 繰り返しミサイルを発射する金正恩朝鮮労働党委員長を「Rocket Man」と呼んだ非難演説は、その後、リ・ヨンホ北朝鮮外相からの「太平洋上での水爆実験」との言葉も呼んだ。

 9月23日には「北朝鮮外相の国連での発言を聞いた。彼が『Little Rocket Man』の考えを『echo』しているのなら、彼らは長く続かないだろう」とトランプ大統領がツイート。

 対するリ・ヨンホ外相が「明白な宣戦布告」だと主張するに至り、アントニオ・グテーレス国連事務総長は「言葉が過ぎると致命的誤解を生む」と、報道官を通じコメントする事態となった。

 こうした非難の応酬が現実の国際政治の舞台で行われていることに世界は困惑している。三文小説でも、視聴率狙いのテレビドラマでも、ポンコツアクション映画でも、血まみれゲームでも、ブラックジョークでもないのだ。

 無力な一般市民はただ傍観しているしかない。周辺にミサイルを撃ち込むと言われたグアムの人々でも・・・。

突然、宇宙人に攻撃されたグアム島

 突然の攻撃に壊滅状態に陥ったグアム島アンダーセン空軍基地。それは攻撃されるとブロック状になり砕け散ってしまう未知の軍事技術によるものだった。

 状況がアーケードゲーム「ギャラガ」に類似していることから、米国大統領ウィルは、かつてともにゲームセンターで遊んだ幼なじみのサムに相談する。

 1982年、サムが準優勝に終わったアーケードゲーム世界大会。その様子を当時のニュースやポップカルチャーとともに録画したビデオを乗せた宇宙探査機が打ち上げられた。

 ところが、映像を見た惑星ヴォルーラ人は、地球からの「宣戦布告」と勘違い。映像にあるゲームのキャラクターを戦闘員とし、人類に勝負を挑んできたのである・・・。

 かつて世を熱狂させた敵を破壊することを競うゲームが現実となり、人類がターゲットとなってしまう映画『ピクセル』(2015)で、エイリアンは、まず、グアム島のアンダーセン基地を攻撃する。

 その地を選んだ理由は不明だが、北朝鮮が中距離弾道ミサイル「火星12号」4発を同時に打ち込むと挑発する地に選んだのは、「最も近い米国」マリアナ諸島にある米国の軍事拠点だからである。

 グアム島には、北部一帯にアンダーセン空軍基地があるほか、西部には海軍基地も備え、島の3分の1が軍用地なのである。

 日本人にとっては、週末にでも気軽に行ける身近な海外リゾートであるこの地は、米国人には本土から遠い自国との感覚が湧きにくい地でもある。

 そんなグアムも、プエルトリコ同様、米西戦争後、スペイン領から米国領となった自治的未編入領域である。

 1519年、インドを目指し、スペイン、セビーリャを出航したフェルディナンド・マゼラン率いる船団は、西回りで太平洋「探検」を進める中、マリアナ諸島を“発見”した。

 さらに西へと向かったセブ島での先住民との戦いでマゼランは死亡するが、航海を続けた船団は世界一周を達成した。やがてスペインはマリアナ諸島領有を宣言、以後、333年にわたりスペイン統治が続くのである。

中継地の役割を担ったマリアナ諸島

 フィリピン・メキシコ間のガレオン船定期航路が設けられ、マリアナ諸島は中継地の役割を担った。

 そんななか、1668年、イエズス会宣教師団が到着。4年の布教活動の後、その中心人物ディエゴ・ルイス・サン・ヴィトレスは殉教するものの、キリスト教とともに様々な西洋文化を伝えた。

 しかし、「先祖崇拝」禁止など先住民チャモロの価値観を否定することへの反発は強く、「スペイン・チャモロ戦争」も起きた。

 そんな地も、今では住民の75%がカトリック信者となっている。

 1819年、イェール神学校を卒業したアブナーは、ハワイからの留学生ケオキの要望に応えるように派遣されることになったハワイへの宣教師団に加わる決心をした。それには妻帯者であることが必須。

 しかし、厳格な禁欲主義者で高慢とも言えるアブナーには候補となる女性はおらず、学長に紹介されたジェルーシャと何とか結婚することで参加が決まった。

 東海岸から太平洋への航海は困難を極めた。多くがひどい船酔いに悩まされるなか、独り船酔いをしないアブナーの奮闘もあって、難関マゼラン海峡も乗り切り、ハワイに無事到着。

 ケオキの母親である首長マラマの暮らすラハイナでアブナーは布教を始めた。

 文化の違いに苦難の続くある日、捕鯨船船員たちが上陸してきた。その船長は、かつてジェルーシャの恋人だったレイファー・・・。

 ピュリッツァー賞受賞作家ジェームズ・A・ミッチェナーが、数世代にわたるハワイの人々を描いたベストセラー小説の映画化『ハワイ』(1966)。

 その登場人物も舞台もフィクションだが、背景となる多くの事件や人物は実在のもの。登場人物のモデルらしき人物もいて、実際、1820年、ハイラム・ビンガム、アーサー・サーストンら聖職者を乗せたタディアス号がハワイに到着、布教を始めている。

 彼らが島にもたらした変化は大きなものだった。しかし、それは信仰の力と言うより、西洋のテクノロジーの力が大きかった。

カメハメナ1世が統一したハワイ王国

 当初、宣教師たちは、映画に描かれているのと同様、先住民を極めて否定的にとらえていた。野蛮、無知、下品、好色。文明の進歩から取り残された不道徳な慣習に染まっており、キリスト教改宗により生活を変えることこそ、正しき道と考えたのである。

 1778年、英国人ジェームズ・クックが“発見”し「サンドウィッチ諸島」と名づけたハワイ諸島は、1810年、カメハメハ1世により全島統一され、ハワイ王国が建国されていた。

 そして、米国とアジアを結ぶ太平洋航路の寄港地として、「Beachcomber」と呼ばれる欧米人居留者も増えるなか、宣教師たちがやって来たのである。

 さらに『ハワイ』の主人公の1人、レイファー・ホクスワースが捕鯨船船長だったように、大西洋でのマッコウクジラの減少から遠洋捕鯨へと転換した米国捕鯨船の寄港地としても、重要な役割を果たすようになるのである。

 1819年、マサチューセッツ州ナンタケット島。

 オーウェンは、船長になる約束を反故にされ、2000バレルの鯨油を持ちかえれば、次は船長になれるとの新たなる約束のもと、一等航海士として、捕鯨船エセックス号に乗り込み、太平洋へと出た。

 しかし、巨大マッコウクジラに破壊され難破。海に投げ出された船員たちは長期にわたる漂流生活を強いられることになる。やがて食糧は尽き・・・。

 『白鯨との闘い』(2015)は、捕鯨産業で栄えたナンタケット島から出港した捕鯨船が太平洋で難破、20人が3艘のボートに分乗し3か月間漂流した実話を下敷きにしたサバイバル劇。

 米国人作家ハーマン・メルヴィルが、1850年、エセックス号船員トーマスを取材するかたちで描かれる。実際、自身「Beachcomber」であり捕鯨船乗務経験もあったメルヴィルは、小説「白鯨」執筆の際、この事件を参考にしたという。

 捕鯨の主目的は鯨肉ではなく、灯火燃料などとしての鯨油。19世紀の米国では、船員たちは、クジラを採取できる鯨油量から「〜バレルの鯨」と表現していた。

 映画では、メルヴィルがトーマスと別れる際、ペンシルベニアで石油が出たことが話題に上る。米国捕鯨業は19世紀半ばがピーク。

米国の謀略に嵌ったハワイ王国

 石油採掘が始まると、鯨油需要は減り、集中的な捕獲でマッコウクジラの漁場が荒廃したことと相まって、1870年代、太平洋での捕鯨は実質的に終わった。

 ホイップ・ホクスワース船長は多くの中国人移民を乗せハワイに戻って来た。しかし、宣教師の子孫たちが力を持つ社会で、祖父の遺産として受け継いだのは不毛の土地だけ。

 それでも、井戸を掘りあて、仏領ギアナから輸出禁止のパイナップルを持ち込み、豊かな農園へと変えた。

 やがて日本人移民女性と暮らすようになっていたホイップは、王国転覆を企てる一派の中にいた。そんなある日、逮捕・・・。

 『ハワイ』の続編『大洋のかなたに』(1970)は、白人による「開発」が進み、サトウキビやパイナップルの農園が繁栄、労働力不足を中国や日本からの移民でまかなっている2世代後を中心とした物語。

 キリスト教伝道にやって来た者の子孫が宗教ばかりか政治経済までも我が物にしていく過程が描かれる。

 ハワイ王国は米国にも独立国として承認されていた。しかし、1850年に王国領土の分配・私有化の土地改革が行われ、外国人の土地所有が認められてからは、急速に米国人の利権の場となり、1890年までに4分の3の土地が白人のものとなったのである。

 そんななか、イオラニ宮殿を建てハワイ文化再生をはかった王カラカウアは、白人の反感を買い、1887年、修正憲法承認へと追い込まれ、国王権限は縮小され、対米従属を余儀なくされてしまう。

 1891年、カラカウアが亡くなり、即位したリリウオカラニ女王は、王権再興を試みた。しかし、結局は共和派との対立を深める結果となり、93年1月、農場主らが米軍の支援を得て起こしたクーデターで、廃位の憂き目に遭うのである。

 『プリンセス・カイウラニ』(2009)には、王位継承者たるその姪カイウラニが、グロバー・クリーブランド大統領に、クーデターの不当性、ハワイの惨状を訴えるため訪米する様が描かれる。

領土拡大には消極的だったクリーブランド

 その効果のほどは不明だが、クリーブランドはハワイ併合を進めようとしなかった。共和党政権が続くなか、分断された2期を務め上げた民主党の大統領クリーブランドは、「Manifest Destiny」は終わっていると考え、領土拡大には消極的だった。

 しかし、ハワイ臨時政府は内政干渉と抗議。1894年7月4日、「ハワイ共和国」成立が宣言される。

 その頃、遠く離れたカリブ海では、ハワイ同様サトウキビに経済依存するキューバの解放運動が続いていた。

 ホセ・マルティ率いる革命運動が燃え盛り、1895年には第2次独立戦争開戦、98年春には島の大半を支配するまでになる。

 映画史上屈指の名作『市民ケーン』(1941)では、そんなキューバからニューヨークのチャールズ・フォスター・ケーンに電信が入る。

 「詩を送りたいが、あなたのカネを使いたくない。キューバに戦争はない」

 ケーンは返事をする。

 「詩を提供してくれ。私は戦争を提供する。(You provide the prose poems. I’ll provide the war.)」

 ケーンのモデルは新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハースト。実際、ハーストは「You furnish the pictures and I’ll furnish the war.」と語ったとされており(ハースト自身は否定)、映画には米西戦争を「ケーン氏の戦争」と語る台詞もある。

 宗主国スペインのキューバ人に対する残虐行為がセンセーショナルに報道され続けるなか、米戦艦メイン号がハバナ湾で爆発し沈没。266人もの乗員を失った事件の原因は今も定かではないが、確かな証拠もないまま、スペイン人の仕業と主張する記事が紙面に踊った。

 そうしたセンセーショナルな記事を載せることで発行部数を競ったのが、ハーストの「ニューヨーク・モーニング・ジャーナル」とジョゼフ・ピュリツァーの「ニューヨーク・ワールド」。

 両紙が、コマ漫画「イエローキッド」の取り合いをしたことから、こうした報道姿勢を「イエロージャーナリズム」と呼ぶようになった。

ついに米国に併合されたハワイ

 もちろん、様々な要因あってのことだが、そんな報道の効果もあってか、「Remember the Maine!」なるスローガンに煽られた世論も後押しし、1898年4月、米西戦争は始まった。その時大統領の座にあったのは、共和党のウィリアム・マッキンリーだった。

 フィリピン、グアムも舞台とする戦いで、補給地の重要性が論じられた。そして、アジア進出への戦略的地点にあること、石炭船には適切な間隔で補給が必要だったこともあり、ハワイ併合案も一気に可決。

 米西戦争が交戦状態を停止したのと時を同じくして、1898年8月、ハワイの米国への併合が宣言された。

 米西戦争に勝利した米国は、キューバと連動するように独立運動が起きていたプエルトリコを得た。スペインが長年太平洋航路の拠点としてきたフィリピン、グアムも獲得した。

 キューバは独立を達成したが、実際には米国の保護国となった。さらに、ハワイ、東サモアも加え、本土の「フロンティア消失」宣言から10年もせず、米国は海洋国家としての足場を固めた。

 米西戦争後、スペインからドイツ帝国へと売却された北マリアナ諸島は、ドイツ領ニューギニアの一部となった。

 そして、第1次世界大戦後、国際連盟により日本の委任統治領となり、第2次世界大戦後の国連の太平洋諸島信託統治領としての米国統治を経て、1986年、米国の一部となった。いま、プエルトリコ同様、「Commonwealth」と呼ばれる自治的未編入領域である。

 マリアナ諸島南端の島グアムも未編入の自治的領域だが「Commonwealth」ではなく、米領サモアは自治を行っているものの自治法が制定されておらず正式には非自治的領域、さらに1959年から州となっているハワイもあり、海外には様々な政治的地位の米国がある。

 ニュージャージーに正体不明の物体が出現、中から現れた火星人が熱線を使い攻撃を始めた。さらに、火星人はニューヨークに侵攻、街は大混乱・・・。

 1938年10月30日、音楽番組を遮る臨時ニュースの形で火星人襲来のラジオドラマがオンエアされた。原作は英国人H・G・ウェルズの有名作「宇宙戦争」。地名は米国のものに置き変えられていた。

 番組はパニックを引き起こした。人々は山に向かい逃げ出し、街に戻るまで1か月はかかったと、『オーソン・ウェルズのフェイク』(1975)は語る。

米国をかき回した「臨時ニュース」

 そうした話は誇張されたもので、実際には大した混乱はなかったとも言われている。そもそも、この映画が語ること自体、どこまでが真実でどこまでが「フェイク」なのか、分からないのだが・・・。

 とは言え、程度はともかく、米国をかき回したことは確かで、世のパニックぶりを、実際に新聞は報じている。

 もちろん、フィクションである旨、最初に「お断り」を入れていたし、最後、「ハロウィーンのでっち上げ話」だとも言っている。とは言え、最後のコメントは、既にパニック状態にあることを知った放送局幹部に言われ急遽つけ加えたもの、との「神話」もあるのだが・・・。

 贋作画家や偽伝記作家などを追う『オーソン・ウェルズのフェイク』で「贋作画家はピカソを偽造したが、自分は空飛ぶ円盤を偽造した」とウェルズは語る。

 さらに、同様のドラマを南米で作った男は監獄行きになったらしく、「自分は幸運にも監獄の代わりににハリウッドに入ることになった」とも語る。

 そして完成した処女作が『市民ケーン』(1941)。ラジオで世をかき回した男は、イエロージャーナリズムで世をかき回した男ハーストを描き、世紀の大傑作に仕上げたのである。

 1930年代の世ではラジオが最先端情報端末だった。『オーソン・ウェルズのフェイク』は、テレビ出現前のラジオ黄金期だから起きた出来事だと語る。

 そしていま、一般家庭に当たり前のように鎮座しているテレビは、情報操作の大きな武器となっている。フィクションかノンフィクションかなんて、視聴者には区別のしようがない。そんなことは分かっている、と思っていても、つい騙されてしまう・・・。

 大統領選も終盤戦。現役大統領が少女へのイタズラで告発された。そのもみ消しに駆り出されたのがコンラッド。

 「ロナルド・レーガン政権時代、ベイルートで海兵隊員240人が殺された。24時間後、グレナダに侵攻した」

 「こうしたことは何ら新しい手立てではない。話をすり替え、気をそらすのさ」

権力者の常套手段

 そう語るコンラッドは、名映画プロデューサー、スタンリーとともに、アルバニアとの戦争危機のでっち上げ映像をテレビで流し、様々な誤算も映画作品をプロデュースするかの如くあの手この手で乗り越え、無事、選挙戦を勝ち抜く・・・。

 都合が悪くなると、別のインパクトある出来事を引き起こし注意をそらすのが権力者の常套手段であることを、我々は日常的に知っている。

 そんなとき、暗躍するのが、政治に精通したコンサルタント集団。

 クライアントに権力の座を与え保たせるため、メディアを操り世論を操作する戦略を司る者を「スピンドクター」と呼ぶ。『ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ』(1997)は、スピンドクターたるコンラッドの「活躍」ぶりを、皮肉たっぷりに見せるブラックコメディ。

 「なぜハリウッドの人間である自分のところに来たのか?」と問うスタンリーにコンラッドは説明する。

 「Forty-four 40 or fight.」「Remember the Maine!」・・・どれも戦争のスローガン。しかし、スローガンは覚えていても、どの戦争か忘れている」

 「勝利のVサイン、硫黄島に星条旗を立てる5人の海兵隊員・・・戦争のことは忘れても、写真は覚えている」

 「湾岸戦争。煙突に落ちる爆弾。1発の爆弾で米国人が本物の戦争だと思った。戦争とはショービジネス。だからここに来た」

 一方、ドキュメンタリー映画『すべての政府は嘘をつく』(2016)では、社会運動家で米大統領選にも出たラルフ・ネーダーが語る。

 「イラク侵攻の際、大手メディアは、政府の判断に否定的な自分たちのような者たちの声を締めだした」

 組織に属さず、地道な調査報道を重ね、1980年代まで政府や大企業の欺瞞を暴き続けたフリージャーナリストI・F・ストーンの言葉を表題とするこの映画は、ベトナム戦争やイラク侵攻での政府の欺瞞を提示し、ストーンの精神を受け継ぐジャーナリストたちが昨年の米大統領選や違法移民問題で奮闘する姿などを追っている。

 独立系メディア「デモクラシー・ナウ!」のエイミー・グッドマンは語る。

フェイクニュースが跋扈する現代

 「メディアは平和をもたらす最強の力となり得ることをストーンは気づかせた。なのに、いま、戦争の武器として使われている」

 「彼は、政府は嘘をつくものだと教えてくれた。特に戦争の最中には」

 ストーンはホワイトハウスの記者会見の出席資格を持っていなかった。だから嘘を聞くことに時間を使わなくて済んだ。直接、文書や過去の記録にあたり、何が起きているかを知ることができたのだ、と映画は語る。

 いまや、情報が溢れんばかりのネット社会に暮らす現代人。フェイクニュースが跋扈し、何が本物なのか、どれが重要なのか、分かりづらくなっている。

 しかし、交通整理をしてくれるはずの大手メディアは信頼を失い、その傾向はネチズン(ネット市民)の間では顕著だ。

 その一方で、オンデマンド化が進み、ネチズンは、欲しい情報ばかり得て、嫌なものは避ける傾向にある。

 ある主張が同種の考えの持つ者により「Echo Chamber(残響室)」にいるかのように反復される「エコーチェンバー現象」の罠にはまりやすい状況にあるのだ。下手な伝言ゲームのように、それが、誇張され、歪んでしまう危険もある。

 記憶として定着したはずのものでも、実際に起こったことと自身の解釈が混在したり、他人から聞いた経験談を自らの体験と本気で思いこんでしまったりして、変化してしまうことは少なくない。

 時を経れば個人はおろか社会にも忘却は訪れる。だから、代わり映えがしない、と批判を浴びようと、繰り返しメディアが発信する歴史的出来事の特集にも意味がある。

 米西戦争も、冷戦も、湾岸戦争も、いまや9・11さえ、受験生たちは「勉強」して知るのだ。

 自分では当たり前の出来事の解釈も、経験のない者は何かしらのソースを使い「学ぶ」しかない。そして、いま起きていることも、早晩「歴史」になる。だから、その時代を生きた者が事実を後世に伝えるのは使命、義務でもある。

SNSは諸刃の剣の側面も

 しかし、そこに「意図」が織り込まれてしまっては逆効果となる。監視社会の恐怖を描くジョージ・オーウェルの「1984」の主人公は、「真理省」に勤め、絶対的支配者「ビッグ・ブラザー」の都合に合わせ、歴史データを書き換える。

 そこまでことが進んでいるとは思えない(そう思いたい)が、スピンドクターは世の至る所で活動している。

 短文に世事が凝縮されるSNSの即時性はジャーナリズムの武器になる。しかし、誤報もフェイクもすぐに広がる諸刃の剣である。

 Echo Chamberにいるかのように、繰り返し響く言葉には、独りよがりの罠がある。バカげた嘘でも繰り返すうち信じるようになるのが人間というものであることを心しておく必要があるだろう。

 そんな世界に、ポピュリズムやイエロージャーナリズムは相性がいい。スピンドクターもほくそ笑んで利用しているに違いない。

 国のため、民族のため、社会のため、信仰のため、会社のため、家族のため、あなたのため、子孫のため、そしてそれに続く刺激的なスローガン。

 トランプ大統領のツイートが世界中をかき回す現実に危機感は深まるばかりだ。

(本文おわり、次ページ以降は本文で紹介した映画についての紹介。映画の番号は第1回からの通し番号)

(1341)ピクセル (39)(再)ハワイ (1342)白鯨との闘い (40)(再)大洋のかなたに (579)(再)プリンセス・カイウラニ (54)(再)54.市民ケーン (403)(再)オーソン・ウェルズのフェイク (223)(再)ウワサの真相 (1343)すべての政府は嘘をつく

ピクセル


1341.ピクセル Pixels 2015年米国映画

(監督)クリス・コロンバス
(出演)アダム・サンドラー、ケヴィン・ジェームズ、ミシェル・モナハン

 宇宙へ送られてきたアーケードゲームの映像を宣戦布告と勘違いしたエイリアンが始めた戦いを迎え撃つかつてのゲーム仲間とライバルの活躍を『ホーム・アローン』(1990)のクリス・コロンバス監督が描くコメディ。

ハワイ


(再)39.ハワイ Hawaii 1966年米国映画

(監督)ジョージ・ロイ・ヒル
(出演)マックス・フォン・シドー、ジュリー・アンドリュース、リチャード・ハリス
(音楽)エルマー・バーンスタイン

 米国東海岸からハワイへとキリスト教伝道にやって来た宣教師一家の苦難を『明日に向って撃て!』(1969)のジョージ・ロイ・ヒル監督が描くエルマー・バーンスタインの音楽も秀逸な一作。

 『南太平洋』(1958)『サヨナラ』(1957)などアジア太平洋地域を舞台にした映画化作も多いジェームズ・A・ミッチェナー原作の長編小説の映画化である。

白鯨との闘い


1342.白鯨との闘い In the heart of the sea 2015年米国映画

(監督)ロン・ハワード
(出演)クリス・ヘムズワース、ベンジャミン・ウォーカー、ベン・ウィショー

 巨鯨に船を壊され、太平洋を長期漂流することになってしまった船員たちの実話を、「白鯨」で知られるハーマン・メルヴィルが生き残りの船員を取材するかたちで描く『アポロ13』(1995)のロン・ハワード監督よるサバイバル劇。

太平洋のかなたに


(再)40.大洋のかなたに Hawaiians (Master of the island) 1970年米国映画

(監督)トム・グリース
(出演)チャールトン・ヘストン、ジェラルディン・チャップリン
(音楽)ヘンリー・マンシーニ

 白人によるハワイ「開発」が進み、中国や日本からの移民も労働力として、その政治経済支配を進めていく様を描くヘンリー・マンシーニの音楽も印象的な前作『ハワイ』(1966)から2世代後の物語。

プリンセス・カイウラニ


(再)579.プリンセス・カイウラニ Princess Ka’iulani 2009年米国映画

(監督)マーク・フォービー
(出演)クオリアンカ・キルヒャー、バリー・ペッパー

 ハワイ王国「最後の王女」カイウラニを『ニュー・ワールド』(2005)のポカホンタス役クロリアンカ・キルヒャーが演じるイオラニ宮殿でロケもされた消えゆくハワイ王国の悲劇。

市民ケーン


(再)54.市民ケーン Citizen Kane 1941年米国映画

(監督・主演)オーソン・ウェルズ
(出演)ジョゼフ・コットン
(音楽)バーナード・ハーマン

 ウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルに、新聞王へと上りつめた男の野望と挫折を描く、話法的にも映像手法という意味でも完成度の高い歴代映画ベストテンで第1位に選出されることも多いオーソン・ウェルズの処女作。

オーソン・ウェルズのフェイク


(再)403.オーソン・ウェルズのフェイク F for fake 1975年イラン・フランス・西独映画

(監督・出演)オーソン・ウェルズ
(出演)エルミア・デ・ホーリー、クリフォード・アーヴィング

 「Fake」をテーマに、モジリアニ、ピカソ、マチスなどの贋作を世界中の美術館に「収める」贋作画家、偽のハワード・ヒューズ自伝を書き上げた男、ピカソをはめた女性といった面々が自ら登場、オーソン・ウェルズ独特の皮肉に満ちた切り口で語られる異色作。

ウワサの真相


(再)223.ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ Wag the dog 1997年米国映画

(監督)バリー・レヴィンソン
(出演)ダスティン・ホフマン、ロバート・デ・ニーロ

 「もみ消し屋」が、映画プロデューサーの協力を得て、架空の戦争危機をでっち上げ、大統領のセックススキャンダルを切り抜けていく様を『レインマン』(1988)のバリー・レヴィンソン監督が描くシニカルなポリティカルコメディ。

すべての政府は嘘をつく


1343.すべての政府は嘘をつく All governments lie: Truth, deception, and the Legacy of I. F. Stone 2016年カナダ映画

(監督)フレッド・ピーボディ

 政府や大企業の欺瞞を暴き続けたフリージャーナリストI・F・ストーンの言葉を表題とし、ストーンの精神を受け継ぐジャーナリストたちが、地道な調査報道で真実を伝えようとする姿を追うドキュメンタリー。

筆者:竹野 敏貴