伏見稻荷大社の「千本鳥居」(「Wikipedia」より)

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 7月1日時点の都道府県地価(基準地価)で、京都など観光名所周辺の上昇が目立った。訪日外国人旅行者の増加が地価を押し上げた。

 京都府内の基準地価は、外国人観光客の急増による宿泊施設の需要の高まりを背景に、商業地の平均上昇率が前年比2.4ポイント増の5.7%と全国都道府県でトップとなった。上昇は4年連続で、上昇率はバブル崩壊後の最高を記録した。

 上昇率29.6%で全国一となったのは、朱色の大鳥居がそびえ立つ京都市伏見区の伏見稲荷大社に近いJR稲荷駅前の通りだ。「お稲荷さん」の総本山として知られる観光地だ。このスポットでもっとも有名なのが、本殿の背後にある稲荷山に林立する千本鳥居。トンネルのように連なる真紅の鳥居は圧巻だ。

 千本鳥居をバックに撮影した写真が、会員制交流サイト(SNS)を通じて全世界に拡散。世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」で、日本の観光地として4年連続人気1位になった。

 商業地の上昇率トップ10には、1位の伏見稲荷大社周辺のほか、八坂神社のある東山区など京都の5地点が入った。

 京都市の外国人宿泊数は16年に過去最高の年間318万人を突破し、ここ数年で3倍に急増した。京都市による訪問地アンケート調査によると、清水寺、金閣寺、二条城、祇園に次いで伏見稲荷大社は5位。京都観光の外国人の4割が訪れているという。

 住宅地の上昇率トップは外国人の別荘需要が高い北海道の観光リゾート地ニセコがある倶知安町の28.6%増。前年に続いて全国1位だ。

 ニセコのパウダースノーを世界に知らしめたのは、オーストラリア人の口コミといわれている。粉状になっているパウダースノーは、最高の雪質とされる。そんなニセコでは、中国人が投資目的で多くの物件を所有している。東京の湾岸部のタワーマンションが中国マネーに爆買いされたように、ニセコの不動産も中国マネーが買い漁った。ニセコの住宅地の上昇は、中国マネーによって引き起こされたものだ。彼らの目的は、長期保有ではない。不動産バブルがピークだと判断したら、即、売り逃げるだろう。

 そうなれば、平成の“不動産バブル”の崩壊とともにニセコの地価は下落することになる。

●訪日外国人の消費額は、国内の酒類市場以上

 観光庁は、訪日外国人数が9月15日時点で2000万人を突破したと発表した。過去最高を記録した16年(暦年)の2403万人を上回るハイペースだ。

 17年1〜8月までの累計は、前年比18%増の1891万人。昨年同期と比較して286万人増えた。中国が9%増の488万人、韓国が42%増の466万人、台湾が8%増の311万人、香港が25%増の151万人。これら4カ国・地域で全体の4分の3を占める。

 しかし、中国からの観光客は減ることになりそうだ。中国当局が一部の旅行会社に「日本への団体旅行を制限せよ」と通達したと報じられた。日本を訪れる中国人のうち4割が団体ツアーといわれており、その影響は小さくない。

 中国当局は資金流出を防ぐため、海外での消費を厳しく監視している。海外で購入した高額品の関税を引き上げたことで、中国人の爆買いがストップしたことは記憶に新しい。転売を目的とした高額品の大量購入が姿を消したため“中国人御用達”の店は閑古鳥が鳴いた。

 爆買いが一服し、1人当たりの支出は減少したが、訪日外国人は増え続けており、消費総額は増加した。リピーターは体験重視の「コト消費」と呼ばれるグルメ食べ歩きや、観光地や温泉地巡りを楽しんでいる。外国人が地方にも足を向けるようになり、宿泊施設や飲食店が増えて地価を押し上げた側面もある。

 16年の訪日外国人旅行消費額は、前年比8%増の3兆7476億円で過去最高となった。ビールなど酒類の国内市場規模3兆5738億円(16年度、矢野経済研究所調べ)を上回り、清涼飲料の3兆8787億円(16年、全国清涼飲料工業会調べ)に匹敵する。訪日外国人の需要は今や、巨大な産業となった。

 政府は20年の訪日外国人数の目標を4000万人に倍増させた。今は中国、韓国、台湾、香港からの旅行者が中心だが、他の東南アジア諸国や欧米など多様な国・地域からの集客が課題となる。
(文=編集部)