前回の記事「「岸田総理」も? 波乱の衆院選を在米ジャーナリストが大胆予測」で、メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』の著者である在米ジャーナリストの冷泉さんが予測した「衆院選の対立構造」は、「希望の党」が自公を脅かすというものでした。しかし、その後に状況は一変し希望の党は勢いを失ったのです。また、石原慎太郎氏が今回の選挙を「関ヶ原の合戦」に例え、立憲民主党が躍進するものの、自公で300超と予測しています。なぜこのようなことが起きたのか、その理由についても詳しく解説してくれました。

総選挙情勢を憂慮する

ここ数週間、この欄では希望がそれなりに勝って小さな政府論を代表し、自民が負けて左シフトし立憲と組んで実務型の反緊縮をやる、そのような対立構図を描いていたのですが、どうも難しくなってしまいました。まあ、この問題はどうにも仕方がないのですが、全体的な情勢を見ていると、現時点ではかなりガッカリという感じです。

例えば石原慎太郎氏は、

「今度の選挙では候補者達の卑しい人格が透けて見える。戦の前に敵前逃亡、相手への逃げ込み、裏切り。まるで関ヶ原の合戦の時のようだ。その中で節を通した枝野は本物の男に見える」

などと言っているようです。関ヶ原への見立ては面白いし、枝野さんを褒めたというのもエンタメとしては成立する表現になっています。ですが、国政を選択する選挙としては、何とも言えないものがあります。

勿論、まだ一週間あるわけですが、流れが激しい中での一週間ということなら面白いのですが、流れがどんどん淀んできた中では、この情勢の延長でゴールしてしまう可能性もあるからです。

仮にそうなって、自公で300ということになりますと、とにかくそこから民意を掴み取ることが難しくなります。要するに選挙で何が判断されたのかが分からないということになります。

まず、これで消費増税と、子育て支援への転用が承認されたのかというと、有権者にはそんな実感はないと思います。ですが、解散目的がハッキリ掲げられて、勝敗がハッキリ出れば、それは政治的には重い話ですから、2019年4月の10%というのは既定路線化するでしょう。

ですが自民党が選挙に勝ったからと言って、景気が良くなる保証はありません。総理は「リーマン級が来たら見送るかもしれない」と言っており、実はこの言い方は前からあるわけですが、前回は「リーマン級ではないが見送った」経緯があり、「リーマン級なら見送る」と言っておいて「リーマン級ではない」景気後退でも見送るという「前例」があるわけです。そんな中で、消費税に対する民意のありかは全く不透明です。

改憲もそうです。希望が負けて自民が勝ったとして、9条の1項、2項は変えないという「安倍案」が信認を受けたのでしょうか? これも良く分かりません。原発再稼働もそうです。

安倍総理に関する「森友」「加計」の問題についてもそうです。これで、安倍総理は「選挙の禊(みそぎ)」を通過したので「もう大丈夫」なのかというと、どちらの問題も完全に鎮火したわけではありません。

最大の問題は何かというと、票の問題です。

1996年の小選挙区制導入以来、過去の小選挙区では、とりあえず自民党と新進党または民主党が二大政党という格好になっていました。共産党が「独自の戦い」のために、全選挙区に候補を立てるということがありましたが、とりあえず二大政党の対決という形はできていました。

その結果として、直近の2014年12月の総選挙では、自民党は小選挙区全体としての得票率は48.1%でしたが、小選挙区全体の75.6%の議席を得ています。この結果について、共産党の「しんぶん赤旗」が以下のような「文句」を言っています。

●小選挙区「死票」総得票の48%に 民意切り捨てはっきり

今回行われた総選挙の295小選挙区で、候補者の得票のうち議席に結びつかなかった「死票」の割合(「死票」率)が50%以上となった小選挙区が全体の4割強にあたる133に及ぶことが本紙の調べでわかりました。「死票」は全国で2540万6240票にのぼり、小選挙区得票の48%を占めました。民意を切り捨てる小選挙区制の害悪がいっそう浮き彫りになりました。

というのですが、少なくとも2014年の選挙では死に票は50%を切っていたわけです。

ですが、今回は下手をすると、

自民・・・35%

希望・・・25%

立憲・・・25%

共産・・・  8%

といった格好の選挙区が多く出て来るのではないかと思われます(この数字はあくまでモデルです)。自民、希望、立憲の3党が揃う選挙区は必ずしも多くはないかもしれませんが、維新や訳ありの無所属などを入れると、「有力候補が三つ巴え」という選挙区は相当数に上ると思われます。

そうなると「死に票率」は全国平均で50%超え、下手をすると限りなく60%に近いということになるかもしれません。これでは、結果的に自民党が勝利しても、その政治的安定はそれほど期待できないということになります。

更に制度的な問題としては、衆議院と参議院の問題があります。特に民進党の場合は、参議院の民進党議員団は民進党のままであって、例えば蓮舫議員は「私は今なお参院民進党の国会議員。信頼できる方だけを応援する」とか、「立憲民主と希望の候補が一緒に出ているところでは、立憲民主の候補者を応援したい」という調子で活動しています。

●蓮舫氏「耳を疑った」 街頭演説で小池氏と前原氏を批判

これも非常に分かりにくい話であって、だったら参院の民進党も2つに分かれて希望と立憲に行けばいいと思うのですが、そうはならないわけです。

勿論、以上については、現在の選挙情勢の延長で22日の投開票結果に行くということを前提にお話をしているわけです。今週一週間のうちに何らかのドラマがあるかもしれませんが、さすがに公示後ですから起き得ることは限られています。どうやら困った結果になるような気がしてなりません。

普通なら株は下がるのでしょうが、アベノミクスの株高メカニズムが承認されたということで、堅調になるのかもしれません。それはそれで、そうなった場合、中長期的には調整の先送りという感じもします。

いずれにしても、政策論争の見えにくい選挙戦、しかも3つから4つの勢力が漫然と競い合うという中で、政権選択ということでは結果は出るかもしれませんが、政策の信認ということでは、何とも曖昧な結果に終わることを憂慮しています。

ちなみに関が原のたとえですが、小池さんが三成、枝野さんは宇喜多、小早川秀秋はさて石破さん?(未遂に終わりそうですが)という感じですが、家康にあたる人物は見当たらない感じです。韓国との関係修復と相互信頼を構築した家康のような人物が今は必要なのですが・・・。

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出典元:まぐまぐニュース!