スマホやパソコンを日常的に使用する人にとって、もはや生活の一部になりつつあるGoogle。メルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者でWindows95の設計にも携わった世界的プログラマーの中島聡さんは、10月4日のイベントで新スマホ、翻訳イヤホン、スマートスピーカーなど6種類もの新ガジェット発表ラッシュとなったGoogleから、これまでの動きと大きな違いを感じたようです。中島さん曰く、その背景にはライバルでもあるApple、Microsoft、Amazonなどの動向が大きく関係していると分析しています。

Googleのハードウェアビジネス

Google が、10月4日に一連のハードウェアを発表しましたが、これまでとは大きな違いを感じました。このイベントを受けて、The Verge が「Google Hardware is no longer a hobby」という記事を書きましたが、まさにその通りだと思います。

単にGoogleに限った話ではなく、数年前から起こり始めたハードウェア・メーカー、ソフトウェア・メーカーという区切りを乗り越えた変化の第二局の始まりだすらと感じました。

この手の事象を、単に「Googleもハードウェアビジネスに本気になった」と局所的に捉えるのではなく、Apple、Microsoft、Amazonなどの動きも把握した上で包括的に捉えると色々なものが見えてきます。

ソフトウェア会社がハードウェアにまで踏み込んでもの作りをすることの強さを証明したのは Appleです。最新のハードウェア技術を最大限に活用するにはソフトウェアが重要だし、ユーザー体験の設計は、ハードウェアとソフトウェアを切り離しては行えないからです。そんなアプローチだからこそ可能になったのが、Appleのビジネスをここまで大きくした iPhoneであることは、Googleだけでなく、Microsoftや Amazonも注目していたと思います。

Microsoftは、逆に、ハードウェア・メーカーに対して Windows OSというソフトウェアを提供するという水平展開のビジネスで成長した会社なので、ビジネスモデル面でも、カルチャー面でもAppleのような垂直統合的なハードウェア作りは得意ではありません。

しかし、iPhoneの成功を目の当たりにし、同時に(パソコンと同じようなビジネスモデルの)Windows Phoneが失敗したことを反省し、Nokiaのスマートフォンビジネスを買収しましたが、結局これも失敗に終わりました。しかし、パソコンに関しては、Microsoft Surfaceというハードウェア・ビジネスが徐々に立ち上がっている点は高く評価出来ます。

今後Microsoftとハードウェア・メーカーの関係がどうなるかを予想するのは難しいですが、Microsoftのビジネスが、エンタープライズ向けのクラウドサービスに大きくシフトしているので、いずれにせよ中長期的には、パソコンはMicrosoftが提供するクラウドサービスへアクセスするためのコモディティ化した端末という位置付けになると思います。

しかし、今回のGoogleのハードウェア戦略にもっとも大きな影響を与えたのは、AppleでもMicrosoftでもなくAmazonだと私は見ています。

AmazonはKindleで自社が提供するサービス専用のハードウェアを提供することのメリットを学び、スマートフォンは失敗したもの、Fire TV、Fire Stick、Echoと着実にこの世界で存在感を高めています。

Amazonのハードウェアビジネスが Apple のそれと大きく異なるのは、ハードウェアで利益を稼ごうとは全く考えてはおらず、AmazonのPrime Membershipというサービスに加入している人たちにより良い体験を提供することにより、メンバーを増やそう、メンバーにとってなくてはならない会社になろうという明確なビジョンがそこにある点です。

Amazonと違って、ハードウェアで利益をあげるAppleにとって、iCloudやiTunesはハードウェアを売るための道具でしかないのです。iCloudが未だに中途半端であり、(先行していたのにも関わらず)iTunesビデオがNetflixやAmazon Videoに圧倒されてしまっているのは、そこに理由があります。

これまで Googleは、MicrosoftやAppleがやってきたことを見た上で、ハードウェアを作って来ましたが、それだけでは、それが自分たちのビジネスにとってどうプラスになるかが明確ではなかったのだと思います。しかし、Amazonがクラウド側のAlexaをどう活用してハードウェアビジネスをしているかを見た結果、自分たちは「どこで勝負すべきか」が明確になったのだと思います。

今回、発表されたハードウェアの中で、Pixel Budsが Googleの戦略をもっとも的確に具現化しています。これはハードウェア上は、AppleのEarPodsと同じくワイアレス・ヘッドフォンですが、GoogleのスマートフォンPixelと繋ぐことにより、翻訳機能が提供されるという点が、特徴です。

これは、ハードウェア+ソフトウェア+クラウド上のAIを活用した良い例で、クラウド上のAIに弱いApple には簡単には真似できない製品です。

個人的に少し悔しいのはClipです。数ヶ月前に、某カメラメーカーの経営陣に向けて、「GoProを単に『アクションカメラ』と捉えるべきではない。被写体に向けてシャッターを切る、という行為そのものを否定し、その瞬間・瞬間を楽しみながら写真や映像が残せる、新しいジャンルのカメラだと捉えて、今後の製品作りをすべき」とメモを書きましたが、まさにそのアイデアを具現化した製品を先にリリースされてしまいました。

今回の発表で明らかになったことは、これからPixel Budsのようにハードウェア+ソフトウェア+AIを活用した製品の分野で、Apple、Google、Amazonの三つ巴の戦いが激化するだろうということです(Microsoftはコンシューマー市場にはもう本気では出て来ないと思います)。AppleはクラウドとAIが弱く、Googleはユーザー体験のデザインが弱く、Amazonはスマートフォンを持っていない点が弱点ですが、面白い戦いになりそうです。

将来的には、ここに Facebookが参入する可能性もありますが、今のところOcculusしか持っていないので、簡単ではないと思います。どうしても参入したいとなれば、ソニーのスマートフォン部門の買収ぐらいのことをする必要があります。

image by: Twitter(Made by Google: @madebygoogle)

 

出典元:まぐまぐニュース!