by Steve Herring

タバコの吸殻のポイ捨てが問題となっているオランダで、問題解決のためにカラスの学習能力を利用するという試みが行われています。カラスが吸殻を入れるとえさが出てくるという自動販売機のような機械を使うことで、吸殻拾いをカラスに行ってもらうという、テクノロジーと動物の知能を掛け合わせたデバイス「Crowbar」が開発中です。

Crowded Cities - Training Crows

http://www.crowdedcities.com/



毎年60億本のタバコの吸殻が道に捨てられているというオランダ。タバコの吸殻を道に捨てるのは簡単ですが、タバコのフィルターはプラスチック繊維でできているため、自然と分解されるには10年の月日を要します。60億本もの吸殻を手で拾っていくというのは途方もない作業になるということで、Ruben van der VleutenさんとBob Spikmanさんという2人のデザイナーは「カラスにタバコを拾ってもらう」という方法を考えたとのこと。

カラスにタバコを拾ってもらう、というアイデアは、以下のような形で実現されます。

街に設置された「Crowbar」という設備に吸殻を加えたカラスが訪れ、吸殻をCrowbarに落とします。



Crowbarがカメラで吸殻を認識したら、カラスの目の前にあるテーブルに、餌が落とされます。



常に装置からえさが出てくることを学べば、カラスは繰り返し吸殻を集めてくるというわけ。餌を食べたカラスが仲間のカラスにCrowbarの存在を教えるのか自分だけの秘密にするのかはあずかり知らないところですが、Crowbarの存在がカラス界に広がるほど、多くのタバコの吸殻を集めることが可能です。



Crowbarのアイデアは、カラスのための自動販売機Crow Boxを開発した、ハッカーであり作家でもあるJoshua Klein氏にインスピレーションを受けたものとのこと。Klein氏はTEDの講演の中で、Crow Boxの技術がカラスに競技場でゴミを拾わせることや、廃棄物から高価なパーツを探させること、遭難者の探索などにも応用できると言及していました。CrowbarはKlein氏の提案を具現化したものの1つといえます。

これがCrowbarの設計図。



吸殻を認識するシステム。



ソフトウェアをテストしているところだと見られます。



これがハードウェア。街に設置してもうるさくない、シックかつモダンなデザインです。





カラスは道具を使うことができる知能の高さで知られており、Crowbarはそんなカラスの知能を利用したもの。カラスがどのくらい道具を使いこなすのかは以下のムービーでも確認可能です。

Are crows the ultimate problem solvers? - Inside the Animal Mind - BBC - YouTube

BBCによって公開されているムービーでは、画面の一番左端に餌の入ったケース、真ん中に石の入ったケージ3つ、右側に長い棒を取り出すための仕掛け、天井からは小さな棒がつるされています。



一番左のケースには、透明な2枚の板の間にカラスのえさが挟まれています。くちばしを差し込んでえさを取ることはできず、セット右側の仕掛けから長い棒を取り出して使う必要があります。



このセットにカラスを入れてみます。



セットに入った当初は状況が読み込めず、カラスは何をするでもなくうろうろと動き回ります。



その後、まずは短い棒を抜き取り……



えさのケースに差し込みますが、届きません。



そこで、今度はケージから石を取ろうとします。



2個目のケージからも石をゲット。



石を長い棒の入った仕掛けに入れます。



3つ入れたところで……



落ちてきた長い棒をゲット。



長い棒を使って見事えさを引き寄せることに成功しました。





Crowbarについて、ワシントン大学で野生動物についての研究を行うJohn Marzluff教授は「カラスは即座に学んでCrowbarを使うでしょう」と語りつつも、人々がタバコを口にくわえているのを見たカラスが「食べ物である可能性」を考えタバコを口にすることも考えられるほか、吸殻を殺虫剤がわりに巣作りに利用するなどして、健康上の被害が出ることも指摘されています。また、カラスを奴隷化して人間の代わりにゴミ拾いをさせるという発想にも、倫理的な観点から反対の意を示しています。

カラスの健康被害について、デザイナーの2人は「吸殻との接触時間が短いため、影響は最小限に抑えられる」としており、「もしカラスに悪影響を与えるとわかったら別の解決策を考える必要があります」と語りました。なお、Crowbarのアイデアはカラスを利用することだけではなく、最終的に人間の吸殻に対する意識を変え、ポイ捨てそのものを減らすことも目的としているとのことです。