スタートから攻守ともに狙い通りに戦えていた。しかし、ハマり過ぎていた感が試合を難しくいたとも言える。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第28回。テーマは「統一感」だ。ルヴァンカップ準決勝の第2戦に続いて、等々力陸上競技場で2連敗。なぜ2点をリードしながら、逆転を許してしまったのか。
 
 2トップにした意図は? 川崎にあって、仙台になかったものとは? 高い授業料を払うこととなった一戦を渡邉監督に振り返ってもらった。
 
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[J1リーグ29節]川崎 3-2 仙台/10月14日(土)/ユアスタ
 
 ルヴァンカップ準決勝の川崎戦、特に第2戦では相手の技術力の高さや局面での速さ、立ち位置の巧みさによって全体をプッシュアップできずに苦しんだ。また、相手のプレシャーに慌ててしまうシーンも見受けられたため、今回は布陣を3-4-2-1から3-5-2に変更して臨んだ。
 
 スタートから攻守ともに狙いどおりに戦えていたと思う。攻撃ではアンカーがボールの中継地点として機能した。相手ボランチが食い付いてくれば、その背後のスペースを使えるし、トップ下の(中村)憲剛がケアするのならば、3バックに余裕ができる。
 
 守備でも2トップと中央の3枚を押し上げることで、ウイングバックが迷わずに高い位置からチェックに行け、結果的に前からプレスをハメることができた。
 
 ただ、ハマり過ぎている感が試合を難しくしたのかなとも思う。「前からプレスを掛け続けよう」という感覚のままゲームを進めてしまい、自陣でしっかりブロックを組もうという時間帯で5-4-1を敷いても、どこかしらに隙ができてしまった。
 
 敗因はそれでけではない。後半の45分間はマイボール時に、あまりにもゴールへと向かうプレーがなかった。60分に(石原)直樹がゴールを決めた後、試合終了までの約30分でうちのシュートは茂木駿佑が放った1本のみ。
 
 シュートを打たないということは、ボールを失ってカウンターを食らうリスクが増大するということ。打てばGKにキャッチされても、枠を外れても、ゲームは一旦切れる。そこから前向きに守備をすることが可能だ。
 
 それが気になったため、途中でベンチから「ゴールに向かえ!」「ボールを前に持て!」と指示を出した。しかし、誰も走らないし、誰も仕掛けない。省エネモードになってしまっていたとも言えるだろう。
 
 その理由を紐解くと、やはりルヴァンカップ準決勝の第2戦に行き着く。相手がひとり少ないにもかかわらず、2戦合計でリードを許していたために攻め急いでしまった。その反省を生かそうと思うのは当然だ。だが、あまりにも「ただボールを回していただけ」になってしまった。
 試合の翌日、「あの状況で『自分たちが何をしたかったのか』と『実際に何をできたのか』を擦り合わせてごらん」と伝え、負傷などで離脱している者も含めて選手だけでミーティングをさせた。
 
 もちろん冒頭には私から布陣変更などの狙いを話した。それでも、「実際にプレーするのはお前たちだ」と。なぜかと言えば、ピッチ上での統一感が足りないように感じたからだ。
 
 例えば「前からプレスを掛けたい」と前線は考えているが、後ろは「ラインを上げられない」と状況を分析しているかもしれない。川崎戦では“やりたいこと”と“実際にやれること”の齟齬があったと思う。
 
 82分、エウシーニョに1点を返された時に何人かの選手で話をしたようだが、普段よりもバラバラッとした雰囲気で再開してしまった。その結果として何が起こったかと言えば、キックオフ後にすぐに相手ボールにされてしまい、その流れで小林悠に同点弾を食らったのだった。
 
 対する川崎は違った。ルヴァンカップ準決勝の第2戦、奈良竜樹の退場後にヨシ(中野嘉大)のゴールで1-2となると、すぐに全員が集まった。「こう戦おう」という意思統一をしたのだと思うが、恐らくそれはベンチからの指示ではなく、自発的に行なったものだと思う。
 
 全員で擦り合わせるか、合わせないか。時間にすればたった1、2分もないかもしれないが、その差はすごく大きい。
 
 もちろん、主将の(富田)晋伍が負傷離脱中でピッチにいなかったのも影響はあっただろう。経験値の高い選手が足りなかったのかもしれない。キャプテンマークを巻いている(大岩)一貴は「俺がその役目を果たすべきだった」と思っているはず。だからこそ、この経験が、彼をより一層成長させるのだ。
 
 なんにせよ、等々力陸上競技場の2連戦では高い授業料を払う結果になった。「無駄に高かった」としないためにも、そこでの学習をしっかりと血肉にしなければいけない。
 
構成:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
 
※渡邉監督の特別コラムは、J1リーグの毎試合後にお届けします。次回は10月21日に行なわれる30節・清水戦の予定。お楽しみに!