ストレイテナー、トリビュート盤が示したバンドのあり方 彼らの音楽が長く愛され続ける理由に迫る

写真拡大

 ストレイテナーが結成20周年、メジャーデビュー15周年を記念した、アニバーサリーイヤーに突入。その第一弾として10月18日に初のトリビュートアルバム『PAUSE 〜STRAIGTENER Tribute Album〜』をリリースする。

(関連:ストレイテナー、洗練された音楽と飾らない姿で魅了した夜 人見記念講堂ツアーファイナル公演レポ

 トリビュートアルバムはバンドが参加アーティストや選曲に全面的に関与することもあれば、企画としてディレクターなど第三者に一任することもある。今回の場合はストレイテナー側からバンド、アーティストを厳選して依頼。熟慮の末、共に切磋琢磨してきた同世代バンドをメインに、これまでメンバーがプロデュースで関わったり、対バンで繋がったアーティストを選出したそうだ。そして選曲は各アーティストに任せたところ、驚くことに1曲の被りもなく希望する楽曲を11組が担当してくれたのだという。それだけ参加したバンド、アーティストのオリジナリティに幅があるとも言えるし、ストレイテナーの楽曲にもまた幅があるということだ。

 改めて楽曲と参加アーティストを紹介しよう。「ROCKSTEADY」MONOEYES 、「KILLER TUNE」go!go!vanillas、「シーグラス」back number、「SIX DAY WONDER」ACIDMAN、「冬の太陽」majiko、「Melodic Storm」9mm Parabellum Bullet、「TRAVELING GARGOYLE」SPECIAL OTHERS、「シンクロ」THE BACK HORN、「REMINDER」My Hair is Bad、「SENSELESS STORY TELLER SONY」ASIAN KUNG-FU GENERATION、「Farewell Dear Deadman」the pillows、そしてストレイテナー自身が再録に選んだのはファン投票で選曲した2度目の日本武道館公演で1位を獲得した「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」である。

 大別するとアジカンやACIDMAN、THE BACK HORNやSPECIAL OTHERSは同世代バンドと言えるだろう。MONOEYESに関しては細美武士はシーン登場時はご存知の通りELLEGARDENの成功によって日本にオルタナティブ、エモ、ポップパンクを浸透させた同士でもありつつ、ストレイテナーとは若干異なる手法で前を走る存在でもあった。その他のバンドも現在のようなフェス文化での繋がりとはまた違う、互いのバンドがしのぎを削り合う対バンという形で現在まで信頼を培ってきた同士たちだ。

 例えば、イギリスの先鋭的なバンドやアメリカのオルタナティブロックのバンドからの影響の還元については微妙に成分は異なるとしても、ホリエアツシも後藤正文も愚直なまでに自分たちのスタイルを曲げることをしてこなかったし、洋楽からの影響を素直にバンドに反映するのみならず、日本でロックバンドとして表現することの意義をーー表面的な見え方は違っても、互いに見出し、影響し合ってきた。また、洋楽的な音だけでなく、ものの考え方やストーリーテリングで展開する歌詞でいえば先輩であるthe pillowsによる「Farewell Dear Deadman」がまるでthe pillowsのオリジナルに聴こえるのも不思議はないのかもしれない。山中さわおとホリエの曲には発想の部分で近いものがある。

 加えて現在のフェス文化から派生したであろう繋がりも、若手バンドに受け継がれたストレイテナーのDNAを顕在化させている。ホリエがプロデュースしたアーティスト関連でいえば、「おはようカルチャー」で新たなバンドの軸をもう一本作り上げたgo!go!vanillasによる「KILLER TUNE」の解釈が面白い。ダンスロック・テイストのハードなオリジナルをバニラズらしくカントリー要素を含むカウパンクにアレンジし、原曲でのホリエのセクシーなボーカルを牧達弥自身の持つルーツライクな艶っぽい歌い回しで消化。中盤のラップ部分は生音でファンキーに展開するという大胆なリコンストラクションを聴かせてくれる。My Hair is Badのリコンストラクションもユニークで、BPMこそオリジナルよりアップしているが、アレンジは忠実。だが、Aメロはオリジナルの歌詞に椎木知仁が自分の言葉を融合させ、しかも早口で語りまくるマイヘア節をぶち込むという荒技が、彼らなりの“リマインド”を再定義している。しかし、そういったリスペクトがこめられた彼らの表現は、“今の自分たちの活かし方”に対しても非常に自覚的で、聴いていて頼もしさすら感じる。

 また唯一の女性アーティストであるmajikoがカバーした「冬の太陽」。楽曲の構成もメロディの高低の幅も相当難易度の高い曲である。序盤はエレクトロニックなフォークの趣きで淡々と歌い、サビではR&B / ヒップホップ寄りのビートとライミングで表現。心の赴くままに発声した感の強いオリジナルのメロディを再構成しながら、majikoの歌として成立しているのが素晴らしい。唯一といえば、インストであの鉄板ナンバー「TRAVELING GARGOYLE」に挑んだSPECIAL OTHERS。基本的に歌メロはウワモノである柳下“DAYO”武史のギターと芹澤“REMI”優真のエレピが担っており、8ビートで4分台にアレンジを収めながら、いつものあのジャムテイストも盛り込まれているところが最大の聴きどころである。

 それにしても、驚くほど原曲のメロディをどのバンドのボーカリストも自分のレパートリーのように着こなしている。そこにはホリエの書くメロディに対する純度の高い愛情があるのだろう。なかには、今だからしっくりくる組み合わせもある。THE BACK HORNは彼らの「世界中に花束を」とも共鳴する「シンクロ」をカバーしているが、特に最近の「あなたが待ってる」などミディアムの名曲を経てきた山田将司が歌う「シンクロ」の優しさは至福。また、<あの日の約束は果たせなかった それも今では僕の一部だ>という歌詞のラインもまるでTHE BACK HORNのオリジナルの言葉のように聴こえる。年齢を重ねてきた一人の男性の潔い決意。楽曲にこめられたこのようなメッセージも多くのバンドマンを魅了し、互いを結びつける一つの理由になっているのだろう。

 デビュー当時からの対バン文化、そして10年代に突入してからの世代を超えたバンドとの交流という、日本のロックバンド・シーンの成熟。また色褪せないメロディがジャンルを軽々と超えていくことの強み。今回のトリビュートアルバムは、リスナーからもバンドマンからも長く愛される音楽を作り続けてきた、ストレイテナーというバンドのあり方の結実を示す作品でもある。

 彼らの活動をこうして捉えてみると、アニバーサリーイヤー第二弾となる、秦 基博とのシングル『灯り』(11月15日リリース)の必然性も理解できる。バンドにとって初の取り組みとなる、他アーティストとのコラボレーションだ。ストレイテナーが新たに撒きはじめた種は今年、まだ見たことのない美しい花を数多く咲かせることになるだろう。(石角友香)