欧州南天天文台(ESO)が公開した、銀河「NGC4993」での中性子星の合体を捉えた写真。8月17日に観測し、少しずつ赤みがかり、そして光が弱まっていった。チリ・パラナル天文台にあるVISTA望遠鏡で観測(2017年10月16日提供)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】遠方の銀河で発生した超高密度の中性子星同士のすさまじい衝突を、世界で初めて観測に成功したとの研究結果がこのほど発表された。研究チームは、宇宙に存在する金の半分以上がこの種の衝突現象で作り出されたと結論づけている。

 興奮に沸く研究チームらは16日、世界各地で開かれた記者会見で、中性子星の衝突で放出された重力波と光(電磁波)が約1億3000万光年を旅して8月17日に地球の検出器で捕捉されたと発表。同時に多数の関連する科学論文が主要学術誌に掲載された。

 今回の現象の共同発見者で、フランス国立科学研究センター(CNRS)のブノワ・ムール(Benoit Mours)氏は、AFPの取材に「われわれは歴史が開く瞬間を目の前で目撃した。2個の中性子星が接近し、互いの周囲を高速で回転してついには衝突、破片をそこらじゅうにまき散らした」と語った。

 今回の画期的な観測は数多くの物理学の謎を解明するもので、科学界全体に興奮の波が押し寄せるかたちとなった。

 多くの人々にとって最も驚きだったのは、宇宙に存在する金、プラチナ、ウラン、水銀などの重い元素の大半がどこで生成されたかを、今回の観測データがついに明らかにしたことだ。

 共同発見者で、英カーディフ大学(Cardiff University)のパトリック・サットン(Patrick Sutton)氏は「あなたの結婚指輪に含まれる金は、太陽が生まれる50億年くらい前に銀河系内で発生した中性子星の合体で生成されたものである可能性が高い。歯の詰め物の中の水銀もだ」と話す。

 科学者らによると、「ビッグバン(Big Bang)」で出現した当時の宇宙は、最も軽い元素の水素とヘリウムで主に構成されていたが、後に恒星の内部で起きた核融合で鉄までの元素が生成されたという。

 鉄より重い元素については超新星爆発で生成されたとする説があるが、超新星爆発の発生頻度とそこで生成される物質の量では、宇宙に存在する重い元素の半分未満しか説明できない。

 重い元素の供給源に関するもう一つの説が、中性子星の合体だった。

 今回の研究では、中性子星合体で放射された電磁波バーストに、新たに合成された重い元素の痕跡が発見された。

 研究チームの一人で、米カリフォルニア工科大学(Caltech)のマンシ・カスリワル(Mansi Kasliwal)氏は「地球の質量の約1万倍に匹敵する量の重い元素を生成している宇宙鉱山の決定的証拠が初めて確認された」と述べている。

■短時間ガンマ線バースト

 中性子星は、大質量星が燃え尽きて爆発し、死を迎えた後に残る超高密度の燃えかすの芯だ。

 通常は直径約20キロだが、太陽より大きな質量を持つ超高密度状態で、強力な電磁波を放射する。中性子星の物質ひとつまみが世界最高峰エベレスト(Mount Everest)の重量に匹敵する。

 中性子星2個の合体により、重力波として知られる時空のさざ波と、「ガンマ線バースト(GRB)」と呼ばれる高エネルギーの閃光(せんこう)が発生することは、すでに理論化されていた。

 そして8月17日、うみへび座にある同じ場所から生じている両方の現象が、1.7秒の間隔を置いて検出器で観測された。

 米レーザー干渉計重力波検出器(LIGO)に参加する研究者のデービッド・シューメーカー(David Shoemaker)氏は「観測から数分以内に、連星中性子星の検出であることが明らかになった」と話す。LIGOは米ルイジアナ(Louisiana)州リビングストン(Livingston)と米ワシントン(Washington)州ハンフォード(Hanford)の2か所に設置されている。

 シューメーカー氏は、AFPの取材に「その信号はあまりに見事すぎて、それ以外のものではあり得なかった」と語った。

 今回の観測は、地上および宇宙空間を拠点とする世界中の観測施設70以上で数千人に上る科学者が長年努力を積み重ねた成果だ。

 研究にはLIGOの他、イタリアに設置された欧州の重力波検出器「Virgo」や米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope)など多数の地上と宇宙空間にある望遠鏡の観測チームが参加した。

 LIGOに資金を提供している全米科学財団(NFS)のフランス・コルドバ(France Cordova)理事長は「宇宙の仕組みに関する人間の理解を転換させる希少な出来事を経験するのは大いに心躍ることだ」と話した。

■宇宙の根本

 2017年のノーベル物理学賞(Nobel Prize in Physics)は、2015年9月に初めて重力波を検出したLIGOの科学者3人に贈られる。

 重力波は初検出以来これまでに4回観測されているが、いずれもブラックホールの合体で生じたものだった。現象の規模は中性子星合体よりはるかに大きいが、光は放射されない。

 今回で5回目となる最新の重力波検出には、ガンマ線バーストが付随していた。

 これにより、もう一つの謎が解明された。中性子星合体が、短時間ガンマ線バーストとして知られる高エネルギーの閃光の発生源の一つであることが明らかになったのだ。

 8月17日の観測で捉えられたのは、通常より短時間で輝度が低く、かなり地味なガンマ線バースト現象だった。この閃光は、わずか1.7秒前に全く同じ場所で中性子星合体の重力波が検出されたという事実がなければ容易に見過ごされていたかもしれない。

 カーディフ大のサットン氏は、「これがいうなれば、決定的証拠だ」と話し、「この現象から分かることは、宇宙の近傍で発生しているこの種の短時間ガンマ線バーストが、従来の予測よりはるかに多い可能性があることだ」と指摘した。

■膨張する宇宙

 また、重力波とガンマ線バーストが初めて同時に観測された今回の中性子星合体のデータにより、今後は、宇宙の膨張速度の完全で正確な算出が可能になることが期待される。宇宙膨張速度を正確に割り出すことができれば、宇宙の年齢や宇宙に存在する物質の量などを知ることができる。

 さらに、中性子星合体の観測データを活用することで、自然の法則や極限状態での物質の振る舞いなどに関する知識が得られる可能性もある。

「この贈り物は今後もいろいろなものを与え続けてくれるに違いない」と、シューメーカー氏は話した。
【翻訳編集】AFPBB News