北村匠海、10代最後に見せる“輝き” 『恋と嘘』献身的なヒーロー役に注目

写真拡大

 ムサヲによる人気マンガを原作に、アナザーストーリーとして実写化した映画『恋と嘘』。幼い頃から子役として活躍し、今年20歳を迎える北村匠海が、10代最後のキャリアに追い込みをかける、瑞々しく爽やかな演技を見せている。

(参考:北村匠海 画像

 幼少期から数多くのテレビドラマ・映画でキャリアを築いてきた北村。思えばいくつもの作品で、主要登場人物の少年時代の姿を演じている。フジテレビ系ドラマ『太陽と海の教室』(2008)、『重力ピエロ』(2009)では岡田将生の少年期を。『DIVE!!』(2008)では池松壮亮の、NHKドラマ『外事警察』(2009)では渡部篤郎の、『TAJOMARU』(2009)では小栗旬の。『陽だまりの彼女』(2013)では、松本潤が演じる主人公の中学生時代の姿を演じてきた。いずれも各作品を背負う俳優たち。幼少期の頃からすでに、北村には“何か光るもの”があった。

 北村は、青年期を迎えてからも話題作に次々と出演。最近では、トガった硬派な不良姿を披露した『仰げば尊し』(2016)の安保圭太役や、韓国映画のリメイク作である『怪しい彼女』(2016)の瀬山翼役など。どちらも北村自身の、内面からにじむ優しさが垣間見えるキャラクターである。『僕たちがやりました』(2017)での「DISH//」としてのカメオ出演では、せっかくの自分たちの見せ場であるにもかかわらず、事務所の先輩でもある主役の窪田正孝に潔く場を譲っていた。そして演技の幅の広さを見せつけたのは、やはり『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)の健児役だ。健児の軽薄で、他人を見下した見事なクズっぷりには、驚きというより憎悪の感情を抱かずにいられなかった。続く『君の膵臓をたべたい』(2017)の「僕」というキャラクターでの瑞々しい演技。幼少期の頃よりあった、“何か光るもの”が、確実に輝きを放ちはじめたことを証明する作品となったのだ。

 本作『恋と嘘』での北村は、実に素朴な存在感で佇む。舞台となるのは、満16歳になった男女が政府から結婚相手を通知されるという、未来の日本である。森川葵演じる主人公・仁坂葵は、天真爛漫で優柔不断。通知が教えてくれる相手を王子様のように心待ちにしている、夢見がちなごく普通の女子高生。そんな彼女のそばに寄り添い、いつも支える存在が、北村匠海演じる幼なじみの司馬優翔である。微笑ましい彼らの関係だが、政府が通知する森川の相手は、佐藤寛太演じる高千穂蒼佑であり、彼の登場に北村は「じゃあね」とひと言、潔く引き下がる。

 クールな目元に愛嬌ある笑顔。北村匠海という俳優の大きな特徴の1つに、「声」が挙げられると思う。優しく柔らかく、すーっと聞くものの耳に届くその美しい音色は、どこか儚げでもある。妙な自己主張や、くどさのないこの儚げな「声」は本作でも活かされていた。先述した別れの場面での「じゃあね」や、森川の優柔不断さに向けた「ゆっくりでいいよ」。それらたったひと言だけで、司馬というキャラクターの、ひいては『恋と嘘』という作品における北村自身の、それぞれ立ち位置をあっさり確立してしまっていた。司馬としては葵が幸せになるために。北村としてはあくまで脇から、ヒロインである森川を立てるために。まさに“一歩引いた”献身的な演技である。

 本作の司馬役で見せる献身的な演技とキャラクターは、北村自身の作品に対する姿勢とそのまま重なるのだ。いよいよ20歳になるこの2017年は、綿矢りさ原作小説の映画化『勝手にふるえてろ』の公開も控えている。北村は今後ますます、前述した幼少期時代を演じてきた俳優たちのような、作品の中の軸となる役を演じる俳優になっていくだろう。

(折田侑駿)