U-17日本代表の久保建英(左)と平川怜(右)【写真:Getty Images】

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いよいよイングランド戦。目の当たりにした脅威の実力

 U-17日本代表は17日、U-17W杯で最初の大きな山場を迎える。決勝トーナメント1回戦で対戦するのは優勝候補イングランドだ。グループステージを圧倒的な強さで勝ち抜けてきたヨーロッパのエリート集団をいかに倒すのか。日本にとってはこれまで積み上げてきたことの集大成、そして選手たちの覚悟が問われる一戦となる。(取材・文:舩木渉【コルカタ】)

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 いよいよこの日が来た。これまでのグループステージ3試合、どの試合を見てもイングランドは恐ろしいほどに強かった。そして今日、日本が激突する相手が、まさしくイングランドである。

 U-17W杯は決勝トーナメントに突入し、グループステージを3位で突破してきたアメリカがついに下馬評通りの実力を見せつけてパラグアイを下すなど、優勝候補と言われる国々が本領を発揮し始めている。

 ではイングランドはどうか。サブ組中心で臨んだ14日のグループステージ第3戦、日本と同じアジアから出場しているイラクを4-0と圧倒した。久保建英が「はっきり言ってそれに気付かないくらい(主力と)差がなかった」と語る通りの印象だった。

 左サイドで強烈なアクセントになっていたジェイドン・サンチョが所属するボルシア・ドルトムントとの取り決めにより日本戦を前にドイツへ帰国したが、それでも際立って高い攻撃力が大きく低下することはないだろう。

 グループステージ3試合で11ゴールを叩き出した実力は本物だ。久保は「サイドに強力な個がいて、トップ下の選手もチームに効率的な動きができて、FWの飛び出しが速い」と分析する。フィジカル能力の高い選手だけでなく、小柄でテクニックのある選手も備えているイングランドは、ボールを持てば驚くべきスピードと迫力で一気にゴールへ襲いかかる。

 さらに「守備のどんどん奪ってから前にいくというのに助けられている」と久保が語る通り、イングランドのディフェンスは強固かつ大胆不敵。攻守の切り替えがユース年代の選手たちとは思えないほど速く、ボールを失った瞬間から相手に猛然とプレッシャーをかけ、体勢が整うまでに奪い返すことができる。

 イラク戦では大差がついてもペースを落とさず、90分間絶え間なく、強烈な攻撃を繰り出し続けた。時間と状況を考えながら柔軟にゲームをコントロールするのではなく、上から押し潰すように相手に圧力をかけ続けて、半ば強引ともとれるほどの迫力で押し切る。伝統的なイングランド・フットボールのスタイルがピッチ上にあらわれていた。

 守れば「とにかくゴールを割らせない」意識が強く、完璧なシュートすら許さない。屈強なDFたちは体を張ってゴールを守る意識が強く、多少無理な体勢でもタックルを厭わず、もはや体に染みついているのか懸命なシュートブロックと、その技術の高さが印象的だった。

日本の狙いはカウンター。試合中の修正も肝に

 3試合で2失点しかしていないイングランドをいかに崩すか。16日の練習を非公開にし、森山佳郎監督が珍しく「明日のゲームプランについては話したくない」と、記者会見で回答を渋ったが、選手たちからはある共通の要素が出てきた。「カウンター」や「速い攻撃」である。

 久保は言う。

「悪かった2つの試合(フランス戦とニューカレドニア戦)は、ボールを持った時に何らかの原因で後ろに簡単なパスを下げたりしていたんで。このチームは多少相手に持たれる時間が長くても、奪った後のカウンターは強力だと思いますし、(日本は)個だけじゃなくて連係でカウンターを作れるチームだと思っている。そこを出さないことにはいい勝負はできないので、絶対に出したい」

 これに平川怜も続く。

「個人の攻撃力が高くても、やれない相手ではないとは思うので、しっかり間で縦パスを出させながらみんなで囲んで連動で奪って、速い攻撃を意識したい」

「まずはブロックを作りながら戦うというのがみんなに共有されていることなので、そこは大事にしながら、隙を見てどんどん前に仕掛けることはやめない」

 しかし、日本はこれまでの3試合でほとんどカウンターを見せていない。ボール支配率が高く、パスこそ回せるものの、重要な局面でペースを変えられずに相手の守備の弱点を突いて打開するシーンはほとんどなかった。

 ミスを恐れて消極的になり、自分たちから流れを悪くしてしまう。あるいは決定的なパスが入らない、ということが続いた。そして誰もが悔やんでいた部分でもある。それでも改善しようとチーム全体でディスカッションを繰り返し、練習でピッチに落とし込もうと努力してきた。平川は「(最近2試合は)あまりいいものではなかったと思うんですけど、そこは切り替えてというか、イングランド戦に向けてやることははっきりしているので、自信を持ってやりたい」と、あくまで強気を崩さない。

主力組が先発へ。森山監督「隙を見せれば負ける」

 試合の中で状況に合わせて自分たちでプレーを改善していく、という課題に関しても、イングランド戦で修正が見られなければ、世界への挑戦自体がここで終わってしまう。主将の福岡慎平は「外から監督に言われて変わるより、ピッチにいる選手同士で会話をしながら修正できるのが強いチームだと思う。どれだけコミュニケーションをとって打開していくかが大事になってくるので、そういうことを意識しながらイングランド戦に臨みたい」と気を引き締めていた。

 そういった意味でも連係に不安のない先発メンバーを組めることは大きい。目立ったけが人もおらず、イングランド戦ではグループステージのホンジュラス戦やフランス戦のスタメンを踏襲してGKには守護神・谷晃生(G大阪ユース)、ディフェンスは右から喜田陽(C大阪U-18)、菅原由勢(名古屋U-18)、小林友希(神戸U-18)、鈴木冬一(C大阪U-18)、ダブルボランチにチームの心臓・平川怜(FC東京U-18)とキャプテンの福岡慎平(京都U-18)、右サイドにここまで4ゴールの中村敬斗(三菱養和SCユース)、左サイドに上月壮一郎(京都U-18)、そして久保建英(FC東京U-18)と宮代大聖(川崎F U-18)という11人の先発が予想される。

 イングランドのスティーブ・クーパー監督も16日の記者会見で「日本は明日、前の試合からメンバーを変えてくるだろう。フレッシュな選手たちが見られると期待している。私は日本のスタイルが好きでね。彼らは素晴らしいスタイルと、組織的に前に出てくる優れたプランを持った、非常に質の高いチームだ」と予想し、日本を警戒していた。ニューカレドニア戦に出場せず十分に回復したメンバーが出場することは相手にもわかっているが、日本にとって最善の選択肢であることに疑いはない。

 森山佳朗監督は試合前日の記者会見で、イングランド戦を「市場価値200億円と10億円の戦い」と表現した。日本はあくまで挑戦者。何かで少しでも準備を怠れば勝てない、少しでも隙を見せれば負けてしまう、一切気の抜けない戦いになる。

 だが、一方で「サッカーはいい選手が揃ったほうが勝つとか、『1+1』、足し算でないのが面白いところ。特に日本人の得意とする組織的なところで対抗していきたい」という森山監督の考えもその通りで、何が起こるかわからないのがサッカーである。

イングランド戦は集大成。後悔しない戦いを

 チャレンジャーとしてイングランドに挑む。緊張感を漂わせながら久保は言った。

「自分たちはこういう相手とやるために今までやってきたつもりなので、自分たちの集大成ではないですけど、今までやってきたものを出せるようにしたい。自分の自己評価は正直、理想としていたほどは高くないですけど、そこもある意味想定内ではあるので、別に大会が終わったわけではないですし、明日それを変えられればいいことなので、それはあまり気にしていないです」

 この言葉を聞いて、グループステージ初戦の前に久保が話していたことを思い出した。

「人それぞれあると思うんですけど、自分の『戦う』は、1つは『後悔しない』というのは大きいですね。『あの時やっておけばよかった…』みたいなのは絶対にあっちゃいけないと思います。でもやっぱり戦うと言っても、球際だったりというのはありますけど、自分はしっかり逃げずに、自分と向き合って、『相手に負けていないな』というのを自分の中で試合が終わった後に感じたいので、仕掛けるところは仕掛けて、自分の方が相手より優っているというのを見せることが、『戦う』ということ。代表に選ばれているということは、やっぱり誰でもできるようなプレーではなくて、1人ひとり特徴を持っていると思うので、その特徴を存分に出すことが自分にとっての『戦い』です」

 ここまで3試合、うまくいったことも、いかなかったこともあった。そこで簡単な方へと逃げず、徹底的に自分たちと向き合い、やるべきことを突き詰めてこれたのか。イングランド戦は日本の選手たちの覚悟が問われる。

 終わった後に「あの時こうしていれば…」と後悔しないように。できることを全てやって、1人ひとりの特徴を存分に発揮し、終わった時に「イングランドよりも強いのは俺たちだ」と言える戦いを見せて欲しい。心の底から日本の勝利を信じている。

(取材・文:舩木渉【コルカタ】)

text by 舩木渉