「ママが倒れないためにも“人の手”を借りて!」完母の赤ちゃんを預けるコツ【特集:公共の場での授乳問題(14)】

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「完母だから赤ちゃんを預けられない」と思っていませんか?「ママが倒れないためにも“人の手”を借りて」と語るのは【母乳110番】代表で母乳育児書のロングセラー『おっぱいとだっこ』等の著者・竹中恭子さん。気持ちよく赤ちゃんを預ける秘訣を聞きました。

【母乳110番の現場から】完母ママだって外出OK!悩めるママに送る「魔法の合言葉」【特集:公共の場での授乳問題(10)】

完母ママの選択肢は「公共の場で授乳するか」or「家に閉じこもるか」の二択ではない

――「公共の場での授乳」に悩んでいるママの多くは、いわゆる“完母”のママたちです。

赤ちゃんの栄養が母乳のみであることから、パパや、おばあちゃまおじいちゃまに預けることも、また一時保育を利用することも難しく……周りから「ママの勝手な主義主張でミルクを飲ませていないんだから、責任持って自分ですべて面倒見なさい」なんて突き放され、八方塞がりに感じることも。

竹中さんは【母乳110番】代表として「ママが倒れないためにも“人の手”を借りる」ことを勧めておられますが、母乳をあげるママに代われる人がいるとも思えず、どんな風に“人の手”を借りたらいいのか、いまひとつイメージできないのですが。

竹中恭子さん(以下、竹中):今日は【母乳110番】として25年余り、ママたちの相談に乗ってきた相談員の立場からお話させていただきますね。

まず、完母で育てていることが「ママの勝手な主義主張」ではないことは、今回の「専門家と考える 公共の場での授乳問題」特集に登場される、ほかのお医者様のインタビューにご説明を委ねるとして(※1)。

「公共の場での授乳問題」はその名の通り、公共の場で授乳をするママに良くも悪くも注目が集まっているわけですが、母乳育児であれば「不規則授乳」が基本ですから、お出かけ時に公共の場で授乳せざるを得ないこともあります。

その必要性を社会に理解してもらうことが、問題解決への第一歩です。これは確かです。

でも実は、完母ママには「公共の場で授乳するか」「家に閉じこもっているか」の二択ではなく、論争の渦中で見落とされがちなのですが“人の手”を借りて「赤ちゃんを預けて出かける」という選択肢もあるんですよ。

――エッ!完母の赤ちゃんを預けて、ママがひとりでお出かけをする、ということですか?

竹中:もちろん公共の場での授乳があたたかく見守ってもらえるような社会になったら、ママと赤ちゃんにとっては一番ですよね。でも、それはともかくとして。

赤ちゃん連れで出かけるのはまだ慣れないというママだっているでしょうし、それに……

ママがひとりで出かけなきゃならない時や、出かけたい時だってあるでしょ?(笑)

ワンオペ育児はどうして危険?ママの心と身体を“長持ち”させるには

竹中:現実的なお話をすれば「この子は母乳だから預けられない」「少しでも離れるなんて赤ちゃんに申し訳ない」と自分を責めてしまうようなママは……ピンと張った糸のような状態です。

疲れを貯め過ぎて、プッツンと切れてしまう危険があります。

――恥ずかしながら自分にも、切れそうになったこと、あります・・・

竹中:あら、恥ずかしいことなんて、ちーっともないのですよ。

まずママに、そしてパパに、さらにご家族や周りの方によくよくご理解いただきたいのは、ママ以外の人たちの手助けで赤ちゃんの関心をママではないものに向ける、言うなれば赤ちゃんを「ごまかす」時間は、ママの心身の糸を緩め“長持ち”させてくれる役割がある、と思ってください。

ワンオペ育児はそれがないので、孤独なママが追い詰められてしまうのです。

ママの外出がワガママでないことは【母乳110番】顧問の産婦人科専門医・村上麻里先生もインタビュー(※2)で答えておられますし、

私からも「魔法の合言葉」のインタビュー(※3)の際に、結局使えるのは完璧な施設ではなく“人の手”で、赤ちゃんを「ごまかす」のがキーワードというお話をしましたが、

例えば真面目なママが罪悪感を抱きがちな「一時保育」を利用する時にも、同じ考え方をしてほしいのですね。

※1 ハピママ*記事:ミルクではなく「母乳」をあげる必要ってある?医学から読み解く母子&社会【特集:公共の場での授乳問題(11)】

※2 ハピママ*記事:「ママだって出かけたい」はワガママ?授乳期のお出かけは控えたほうが良いのか、産婦人科医に聞いた【特集:公共の場での授乳問題(7)】

※3 ハピママ*記事:【母乳110番の現場から】完母ママだって外出OK!悩めるママに送る「魔法の合言葉」【特集:公共の場での授乳問題(10)】

――“人の手”を借りて「一時保育」に預けることで、ママがリフレッシュできるというのは理解できなくはないのですが、でも赤ちゃんは、泣きませんか。

竹中:そりゃあ赤ちゃんも「ママじゃない奴!」「おっぱいの匂いがしない!」「いつもと違う場所だ!」等々イロイロ分かりますから、大泣きするかもしれません。

いや、たぶん大泣きすると思う(笑)

でも、そこで心折れないでほしい。

保育士は「ごまかし」のプロ!? ほ乳瓶を使わない授乳法なら乳頭混乱も回避できる

竹中:ママには、

「一時保育なんだから泣かれて当たり前」

「いつもと違うだろうけど、まぁちょっとくらい、いいじゃないの」

と、自分を“長持ち”させるためにも、少し気楽なくらいに考えてほしい。

赤ちゃんの側から見た「託児」というのは、ママに抱っこされておっぱいを飲むのが普通の状態であるところを「ごまかして」、ママと再会するまで気を紛らわせて「もたせる」時間です。

もともと関心をよそに向けて「ごまかしている」時間なのですから「冷凍母乳を用意してもいいけれど、そんな時くらいミルクにしたっていいや」と、そんな感じで考えてみてほしい、と私は考えています。

しかも保育士さんというのは「ごまかす」ための技に長けている職業の人たちなのです。

そのように捉えると「一時保育」に対する考え方が変わりませんか。

ほかに「カップ授乳」や「スプーン授乳」も同じです。いつも柔らかくていい匂いのするママのおっぱいを飲んでいる赤ちゃんにとっては、固い舌ざわりのコップやスプーンなんて本当はイヤですよね。でも、お腹が空いてどうしようもなければ「ごまかされて」ちゃんと飲むんですよ。

――待ってください!赤ちゃんって、コップや、スプーンからでも飲んだりできるものなんですか?

竹中:ほ乳瓶がない時代の、おっぱい以外からの授乳は普通に「スプーン授乳」だったそうですよ、だから大丈夫!

「カップ授乳」や「スプーン授乳」のやり方を親子で覚えておけば、母乳の赤ちゃんが乳頭混乱を起こしてしまう、つまりほ乳瓶の飲みやすさに慣れてママのおっぱいを嫌がるようになってしまう心配もありませんし、災害などのいざという時、ほ乳瓶の消毒ができない中で水分を与えるような場合にも役立ちます。

せっかくですから、具体的なやり方もお教えしましょうか。

「スプーン授乳」&「カップ授乳」のやり方

赤ちゃんの顎の下にガーゼやタオルなどを置いて、多少こぼれても衣類が濡れないようにします。(少しはこぼれます)縦抱きにして、頭の後ろをしっかり支えます。下唇にほんの少し乳汁を垂らします。乳汁が入ったスプーンを下唇にくっつけ、ちょっとだけそのスプーンやカップを傾けます。下唇に垂らした乳汁の匂いと味を感じた赤ちゃんはその続きで、傾けたスプーンやカップに入っている乳汁をすすり込みます。

結構大きい音をたててすすり込むのでビックリするかもしれませんが、コツはゆっくり時間をかけること。身体の軸と頭の角度を変えないこと。

注意しなくてはならないのは、赤ちゃんの口に流し込むというよりも、赤ちゃんが自分ですすり込むのを待つ感じ、ということです。それを誘うために最初、下唇にほんの少し乳汁を垂らすわけです。

緊張の糸がプッツンしてしまう前に…完母ママにもいろんな選択肢があることを知ってほしい

――乳頭混乱は、母乳育児を続けてゆく上で避けたいことのひとつなので、参考になりました!しかも災害対策にもなるんですね!

竹中:この方法ならパパもおじいちゃんもおばあちゃんも、それこそ誰でも授乳のお世話ができます。

それに、赤ちゃんがコップから飲んでいる姿って、かわいいでしょ?(笑)

――たしかに(笑)。

コップやスプーンでの授乳ができるのであれば、たとえ完母であっても「ママじゃなきゃできない」こともなくなるワケで、赤ちゃんを預けたり、ママがひとりで外出するハードルが、ぐっと低くなりますね。

竹中:ママがストレスで潰れてしまっては大変ですし、もっと言えばママが幸せな気持ちで過ごせないのは、家族にとって、誰より赤ちゃんにとって悲しいことです。プッツンしてしまいそうなほど張り詰めてしまう前に、ぜひ“人の手”を借りてください。

赤ちゃんは相当頭のいい生きモノですが、生きモノを「ごまかす」のも生きモノ。繰り返しになりますが“人の手”が必要なんです。だから周りの皆さんも、ママや赤ちゃんのニーズに寄り添いながら“人の手”を貸してあげてくださいね。

――赤ちゃんを「ごまかす」というのは、それだけ聞くと不真面目なことのようにも感じてしまいますが、育児の長いスパンの中で考えると逆にプラスの意味を持ち得るんですね!加えて「カップ授乳」や「スプーン授乳」のような具体的な“智恵”があると、子育て中のママは助かりますね。

竹中:真面目過ぎちゃうママは、これを機に「ママ業の働き方改革」を。努力してぜひ「いいかげん」になってください(笑)

完母のママができるだけ母乳で育てたいと願うのは、ママの自分勝手ではありません。そして完母という道を選んだからといって、ママがお出かけをガマンしなければならないこともありません。実際には、いろんな選択肢があるんですよ〜。

ママがひとりで背負い込んでしまうことなく“人の手”を借りながら、併せて具体的な“智恵”も活かしながら、笑顔で母乳育児ライフが送れることを祈っています。

でももし、それでも辛い時には【母乳110番】までお電話くださいね。先輩ママ相談員一同、お待ちしています。

■竹中 恭子(たけなか きょうこ)氏 プロフィール

【母乳110番】代表・電話相談員。イラストレイター・ライター。1男1女の母。『おっぱいとだっこ』『おっぱいとごはん』『家族のための〈おっぱいとだっこ〉』の母乳育児3部作ほか、著書・共著多数。 『おっぱいとだっこ』は第9回ライターズネットワーク大賞受賞。2016年には電子化もされ、海外でも好評を博している(電子書籍版『おっぱいとだっこ』)。近年は水彩画家「武蔵野つきこ」として『授乳美人』作品シリーズも発表。 公式ブログも。