お昼ご飯食べた後の睡魔、つらいですよね。午後からの事務作業に非常に支障をきたします。この睡魔と日々戦っている皆さんはどの様な工夫をされていますか?
昼食時にコーヒーやお茶をがぶ飲みする、カフェインを多く含むものを摂るなどされている人も多いかと思いますが、今回は午後の睡魔がスッキリ退治できる(かもしれない)方法を皆さんにご紹介したいと思います。

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まず、眠気のメカニズムから簡単にご説明しましょう。
どうして眠くなるのか、端的に言うと「脳が疲れている信号」とあらわすことができます。脳内に疲れが溜まってくると増えてくる物質が疲労の原因と言われています。
この脳内の疲労物質が溜まってくると中枢性疲労という状態を引き起こすと言われており、精神疾患(=脳機能の障害による病気)の発症を導く「前病気段階」であるともされています。
この疲労物質を取り除く効果的な方法が、『睡眠』なのです。疲労物質が溜まり脳が疲れたという信号を出すことで眠気が起こってきますので、自然と睡眠によって取り除こうとするようになります。

さて、事務作業で一番辛くなってくる午後3〜4時頃をいかに上手くやり過ごすことができるようになるかはお昼休みの仮眠が大きな鍵を握っています。上手に仮眠をとることで午後の作業の効率が飛躍的に良くなるのです。
最近は『睡眠負債』という言葉が取り沙汰されていますがこれは単に睡眠不足の蓄積のことを指しています。眠気のメカニズムにもありましたように、睡眠不足による疲労の蓄積は脳機能へ著しく影響を及ぼします。少しでも昼食後に眠気を催したらお昼休みの間に思い切って寝てしまいましょう。
最近ではオフィスでのお昼寝を効果的に行えるグッズも色々出ています。デスクに突っ伏して15〜30分眠るだけでも午後からの作業がグンと良くなりますのでこうしたお昼寝グッズを活用することもオススメです。

今、「デスクに突っ伏して15〜30分」と申し上げましたが、実はこの数字にも根拠があるのです。人間の脳の眠りのサイクルは90分で一番深い眠りの状態に達すると言われています。ここまで深い眠りに入ってしまうと覚めるのにも同じ時間を要します。つまり、深く眠って覚めるまで大体3時間必要ということになります。
しかしお昼休みは3時間も取れません。1時間近く眠ってしまうと深い眠りに入りかけている状態から脱するのにかなりのエネルギーを必要としますので逆に目覚めが悪くなってしまいます。そこで睡眠の時間を30分までに切り上げてしまうのです。こうすることで脳が眠りの深みに嵌まる前に疲労物質をある程度取り除くことができます。

ここで、上手く30分以内にお昼寝を切り上げるためのテクニックをご紹介。

【30分以内にお昼寝を切り上げるためのテクニック】

・お昼寝前にカフェインを摂る。
 コーヒーなどに含まれているカフェインが体に入ってから効果を発揮するまで15分くらいを要し、最大血中濃度に到達するのが30〜120分と言われています。これを利用して、お昼休みが終わる5分前くらいに目が覚める様にカフェインを飲んでみましょう。ただし、カフェインも摂りすぎると悪影響。
カフェインは交感神経に作用して脳を興奮状態にさせます。その結果、覚醒作用・利尿作用・強心作用などの効果をあらわしますが一方で摂り過ぎによる頭痛・吐き気・発汗・動悸やこれらの症状による不安状態などを起こすことも知られています。

多ければ良いというものではなく、適量を摂取してお昼寝をすることで午後からの作業効率がアップします。
また、普段からカフェインを常用していると副作用ばかりが出てしまうこともありますのでカフェイン濃度の高い眠気防止剤の乱用は非常に危険です。カフェインの1回の摂取量は200 mgが望ましいとされており、1日量でも500 mgまでとされています。エスプレッソであれば50 mlで140 mg、代表的な缶コーヒーでもひと缶200 mg以上含まれているものはほとんどないのでお昼寝前に飲むのに最適と言えます。

カフェインが体の中から抜けきるまでにはかなりの時間が必要とされており、体内中に摂取した量が半分まで減る(半減期)のに4時間ほどかかると言われています。午後に飲むと夜間の睡眠に影響しやすいのでカフェインを多く含む飲み物はお昼寝の時間以降は避けたほうが無難です。
ちなみに妊娠中の半減期は6〜16時間まで延長するというデータもあり、胎児への影響も出やすいため摂取は控えるようにしましょう。

・スマホなどのタイマーを有効活用する。
 アラーム音だけでは起きる自信がない、音が周りに迷惑になりそう、という人はスマホのアラームのバイブ機能を活用しましょう。胸ポケットやデスクに突っ伏した時の手の下に敷いておくなどして一工夫してみると振動で時間に気が付くことができます。

・お昼寝の時の体勢を一工夫する
 仕事の合間のちょっと一休み、のお昼寝に適している体勢というのが実はあります。先程から申し上げているデスクに突っ伏して寝る、座ったまま何かにもたれて寝る、など『横にならないで寝る』方法です。横になってしまうと眠りも深くなりやすく、起き上がるのも辛くなってしまいます。そこで椅子に座った状態のまま寝るというのが推奨されています。デスク周りの環境に応じて、お昼寝用のクッションを使ってみたりネックピローを使ってみたりする工夫で一眠りした後の首や肩などの痛みを軽減することができます。

さて、起きた後は軽くストレッチをして午後の作業に取り掛かりましょう。
同じ姿勢で固まった状態でいると、疲労物質が停滞してしまい排出しづらくなります。

【一眠りした後にオススメなストレッチ】
・立ち上がって大きく伸びをする
・手を後ろに組んで肘を伸ばしたまま上下に10回、左右に10回ずつ
・片手を上げて壁に垂直に付け、そのまま壁に押し付けて伸ばすを左右10回ずつ
・頭を前後左右に倒す、ひねるなどして首周りの筋肉をほぐす

など、できそうなストレッチを取り入れてみてください。ストレッチする時はしっかりと大きく呼吸しながらゆっくり目の動作で行うと効果的です。とはいえオフィスでこれだけの動作を張り切ってやるのはこっぱずかしいと思われますので、トイレに行った時などにささっとこっそりなど工夫してみてくださいね。

眠りの詳しいメカニズムや午後の眠気に関してはまだ解明されきっていませんが、上手に対策をとれば回避できます。
夜の眠りに影響しないように上手にお昼寝を取り入れて、ごきげんな一日にしましょうね!

<参考文献>
e-ヘルスネット 睡眠と生活習慣病との深い関係
トリプトファン研究の成果から見た中枢性/精神性疲労の誘発メカニズム
日常生活の中におけるカフェイン摂取 -作用機序と安全性評価-

(看護師ライター・梓川みいな / 画像・写真AC)