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職場、学校などでしばしば問題になるハラスメント問題。それを防ぐため、ハラスメント対策委員会のような組織が設けられる例も増えている。しかし、ハラスメントを防止するための組織が、意図的に見過ごしたり、ハラスメントの温床にさえなったりする例もあるという。

弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、職場の上層部からパワハラを受けているという相談者の投稿があった。それによれば、コンプライアンス組織に相談したものの、「上層部の意向を受けて、逆にその組織からハラスメントを受ける状態になりました」とのことだ。

インターネット上のQ&Aサイトにも、加害者と親しい人がハラスメント対策委員会に名を連ねていることに不安を感じているという投稿があった。委員の1人は「(相談者を)クビにしよう」と提案するなど、ハラスメントに加担している人物だという。

このように、対策委員会に頼れない状況では、どのような手段が取れるのか。ハラスメント対策委員会の中に加害者やその親しい人が含まれていたり、委員会に訴えることでさらに被害を受けたりする可能性がある場合、どうすればいいのか。白川秀之弁護士に聞いた。

●委員会の調査は原則実名の通報で行われる

このご時世、ハラスメント委員会が設置されている企業も多そうだが、どのような対応がなされるのか。

「ハラスメント等を調査する委員会(以下「委員会」とします)の調査、協議の方法は、会社ごとに異なりますので、一概には言えません。ただ、一般的には被害者側に証拠(メール、録音、日記等)がある場合には、それらを提出することが求められます。

そのような資料がない場合には、最低限パワハラ、セクハラでどのようなことがなされたのかを一覧表などでまとめる事が必要です。委員会では、それらをもとに関係者に対して聴き取りを行い、ハラスメントの事実を認定し、会社に対する処分などの勧告を行います。

聴き取りを行うために、基本的に被害者が誰であるのかを明らかにする必要があるので、匿名での通報で委員会が動く可能性は低いと思われます。ただ、職場内の不特定多数への環境型セクハラ(事務所内にヌードポスターを掲示する等)では、写真だけで態様は明らかなので、匿名でも委員会が動くのではないかとは思います」

もし対策委員会に頼れない状況では、どのような手段が取れるのか。

「違法なハラスメント行為によって、精神的な苦痛をこうむった場合には、加害者に対して損害賠償を請求することも可能です。この場合、被害者がハラスメント行為を立証する必要があるので、委員会の調査に提出するのと同じように証拠を取っておくのが大事だと思います。また、時効の関係で、ハラスメントを受けてから3年以内に行動を起こす必要があります」

●利害関係のある人は、委員会から排除してもらう

もし対策委員会に加害者やその親しい人が含まれていた場合、どうしたらいいのか。

「委員会に利害関係がある人がいる場合には、そのような人物を調査、審理から排除するべきだと申告をすべきです。委員会の規程には利害関係のある人を排除する規定を置いているところもあります」

申告する際には、どのようなことに注意したらいいのか。

「会社に対して申入れをする際には書面で行う等、記録を残しておくことが必要です。そうしないと、不公平な調査結果を残す可能性がありますし、調査過程で二次被害を受ける危険があります。記録に残しておくことで、後々裁判で調査結果が証拠として出てきてもその信用性を争うことが出来ます。

労基署、労働組合へ申告をしても、委員構成について意見を言う可能性は低いと思います。ただ、労働組合でハラスメントの団体交渉をしている場合は別です」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年、弁護士登録。労働事件が専門だが、一般民事事件も幅広く扱っている。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会委員。
事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/