「心理面、メンタル面。何人かの選手の脆さ、弱さにがっかりした。日本代表でプレーするためには、もっとよく考えなくてはいけない 定期的に出場していない選手でしたけれど、言い訳できないですね」

 ハリルホジッチは、ハイチ戦後の記者会見でこのような選手のダメ出しを何度も繰り返した。「選んだのは私なので、責任は私にある。しっかり批判してください。サポーターの皆さんに謝りたい」。この台詞も幾度となく繰り返した。というわけで、それに従い突っ込ませてもらえば、自分の見る目がないことを、それは素直に認めたことになるのだ。

 就任直後の話なら仕方がない。候補選手の情報をまだ把握できていない段階なら許される話だが、就任後、2年半が経過したいま、それを口にすることは、自分の過去を否定したことになる。

 本番まで、残された試合はもう幾らもない。11月のブラジル戦とベルギー戦はともかく、12月に行われる東アジアE1選手権は、国内組だけで戦う大会だ。来年に入ると(4年前のスケジュールに照らせば)2試合のみだ。3月に1試合。残るは、W杯本大会直前の壮行試合になる。壮行試合は、本大会の登録メンバーを発表した後なので、選考の基準になる試合は6試合。フルメンバーで戦える試合は3試合だ。

 最終コーナーを回り、最後の直線もすでに半分ぐらいの所までさしかかった状態だ。そこで代表監督から「しっかり批判してください。謝罪したい」と言われると、とりつく島はなくなる。期待感は急速に萎み、絶望的な気持ちに誘われる。 

「メンタル面が弱い」と言われれば一瞬、そうなのかなと思う。だが、長友以外、全取っ替えして臨んだハイチ戦のメンバーは、いわゆるサブ組だ。選手の混乱を、このサブ組の選手のせいにするのは、まさにお門違い。「選んだのは私なので、しっかり批判してください」と言われても、了解しましたと納得する気にはなれない。

 彼らには、スタメンに這い上がろうとする高いモチベーションがあったはず。活躍したい一心で試合に臨んでいたに決まっている。弱いと言うより、混乱してしまったのだ。理由は簡単。このメンバーで試合を戦った経験がないからだ。チームとして機能しそうもないことは、最初から分かりきっていた。にもかかわらず、よい試合をしようとすれば、監督からの綿密なアドバイス、的確な指示は不可欠。選手の高いであろうモチベーションを形に結びつける指導力、すなわち監督力が問われた試合でもあったのだ。

 選手の力不足というより監督の力不足。それが露呈した試合。監督の混乱が選手に乗り移った試合。ハイチに3−3で引き分けた理由を一言でいうなら、采配ミスだ。ハリルホジッチの限界が見えた試合となる。

 いまこそ声を大にして、監督解任を叫びたくなる。

 そのタイミングは、いままでにも幾度かあった。この試合に敗れたら解任やむなしと、協会サイドが動きだそうとしたことも、実際にあったと聞く。だが、本大会出場を決めたいま、最低限のノルマは果たしたので、言い出しにくいムードが形成されている。

 本番の足音が迫ってきたこの時期に、監督を変えるリスクの方が大きいと考えているからだろう。少なくとも日本に、そうした前例がないことも、そうしたムードを後押しする大きな原因だ。

 協会にその力があるのか。それなりの監督を連れてくる力があるのか。僕でさえ、それについては懐疑的になるので、多少の躊躇いはあるのだけれど、やはり、ここは解任を叫ぶべきタイミングだと思う。なにより回復しなければならないのは、萎んでしまった期待感だ。監督交代はその一番の起爆剤。このタイミングで監督交代が行われた例は、他国には頻繁にある。