金正恩夫妻とモランボン楽団。右端が玄松月氏(朝鮮中央テレビより)

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北朝鮮の支配政党である朝鮮労働党(以下、労働党)は、今月10日で創建72周年を迎えた。かつては、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)から秘密警察である国家安全保衛省、工場、協同農場に至るまで、国のすべての分野を統括する組織だった。

金正恩体制においても、朝鮮労働党の党員がエリートであることに変わりはない。金正恩党委員長が昨年、36年ぶりの労働党大会を開いたのも、労働党の権威を高め、その頂点に君臨する自らの権力を強化するためだった。

「親密美女」スピード出世

北朝鮮で出世するためには、労働党員になることが必要最低条件だった。北朝鮮女性は、労働党への入党のための性上納行為に苦しんでいるという話もある。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

その一方で、労働党員の社会的地位は年々、ダダ下がりし、もはや「誰もが羨むエリート」ではなくなっているという。それどころか党員になれば就職も不利になるというのだ。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、若い除隊軍人3人が、銀を扱う外貨稼ぎ会社に採用されたが、党員であることが問題視され、全員クビにされたという。他の外貨稼ぎ会社でも、党員をクビにして代わりに非党員を雇い入れるというのだ。

労働党の威信が低下するのは、大飢饉「苦難の行軍」で北朝鮮が混乱状態にあった2000年代初頭ぐらいからだ。金正日総書記は北朝鮮軍に社会の主導権を与える先軍政治を打ち出し、総体的に労働党の地位が低下した。

金正日氏は晩年、後継者である金正恩氏がスムーズに国家運営できるよう、労働党中心の政治体制にするための環境を整えた。金正恩氏も2016年に開いた労働党第7回大会で、国防委員会を廃止して、国務委員会を新設するなど、労働党中心の体制に改編した。

しかし、党の威信は回復するどころか、それに伴う関連措置がむしろ労働党の足を引っ張る結果となっている。かつて、国営工場などでは、8.3党員という行為が横行していた。これは、工場に所属する党員が外貨稼ぎ会社で働くため、工場の党委員長にワイロを渡し、党生活を免除してもらう行為を意味する。

党生活とは、出勤して労働新聞を読む会に出席し、最高指導者の肖像画を磨き、週数回の政治講演会、土曜日に丸一日行われる政治学習などに参加し、毎日の生活総和(総括)を行なう朝鮮労働党員としての生活を指す。また、収入の2%を党費として収める。

党員は、国営工場に勤めていてもほとんど給料がもらえないため、外貨稼ぎ会社に就職しようとするが、そうするには悠長な党生活などしていられないというわけだ。

ところが、党中心の体制への改変に伴い、党組織を強化せよとの指示が下された。今までとは異なり、外貨稼ぎ会社で働くには労働党を離党しなければならないが、容易なことではない。

また、外貨稼ぎ会社も、党員を採用すれば処罰されてしまう。党員を雇った外貨稼ぎ会社が、当局にワイロを渡してもみ消すこともできるが、そうなると党員の社員が増えれば増えるほど、ワイロの額がかさんでしまい大きな負担となる。

一方、党員は党生活をサボることもできず、頻繁に職場を留守にする。会社の立場からすると、党員を雇うメリットがないのだ。メリットも人気もガタ落ち、納められる党費も減った。労働党が北朝鮮社会の主導権を取り戻す日は来るのだろうか。

今月7日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第2回総会では、金正恩氏の実妹の金与正(キム・ヨジョン)氏と正恩氏と親しい関係にあると見られる玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏が労働党中央員会入りした。異例の抜擢と言われているが、金正恩氏の私情が露骨に反映した人事だ。こうしたことも労働党の権威を下げる理由の一つかもしれない。