「Thinkstock」より

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 シャープの戴正呉社長は、液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)への支援に関して「日本企業による日の丸連合でないと(国際競争に)負ける。シャープが主導すれば立て直す自信はある」と述べた。シャープの親会社、台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)による産業革新機構への勝利宣言といえる。

 シャープは6月の段階で、「独占禁止法の問題もあり、(JDIの)買収や合併はできないだろうが、技術協力なら可能だ」と語っていた。ホンハイの郭台銘董事長(オーナー)は「日本の技術者を結集して、(液晶の)日の丸連合をつくりたい」との意欲を示している。ホンハイとJDIは、これまで米アップルが最大の顧客だったという共通点がある。

 9月に入り、シャープがJDIに有機EL事業で協業を提案していることが明らかになった。シャープとJDI、そして時期は流動的だが、JDIが子会社にする予定のJOLEDの3社の事業統合も視野に入れているという。

 JDIが強みとする中小型の液晶パネル事業の経営統合は、独占禁止法上難しい。そこで、有機EL事業で提携して、先行する韓国勢を追い上げる狙いがある。

 JDIが経営不振に陥ったのは、技術動向とアップルの戦略を読み誤ったからにほかならない。あろうことか、アップル向けの石川県白山工場に1700億円を注ぎ込んだのだ。白山工場は、「稼働しない最新鋭工場」と揶揄された。革新機構から派遣された“影のトップ”と呼ばれた社外取締役が、建設を強引に進めた。韓国サムスン電子グループのサムスンディスプレイは、JDIが発足する以前から有機ELパネルを量産していた。

 アップルは2017年11月、iPhone発売10周年を記念した「プレミアムモデル・X(テン)」に有機ELを本格採用した。これで有機ELはサムスンの独壇場となる。

 主要顧客のアップルが有機ELパネルにシフトした打撃は大きかった。JDIは全社員の3割に当たる3700人の人員削減に加え、石川県能美工場の生産を年内に停止する。能美工場はJDIに統合する前の東芝の工場だった。JOLEDが1000億円の資金を集めて能美工場で独自技術による有機ELの量産を19年に開始するとしているが、まだ先の話だ。1000億円の資金が集まるかどうかもわからない。

●JDIの再生は期待薄か

 JDIの18年3月期連結決算は、アップル向け売り上げが落ち込むことに加え、人員削減などの特別損失が1700億円発生するため、最終損益は4期連続の最終赤字になる。

 営業損益段階で初めて赤字になるという悲観的な見通しもある。14年3月に株式を上場したが、配当したことはなく、公開株価(900円)を一度も上回ったことがない。10月に入ってからも、株価は200円台前半。上場企業として完全に“失格”の烙印を押されるレベルだ。

 JDIは16年に資金難に陥り、有機ELへの投資を名目に、産業革新機構から750億円の支援を受けた。しかし、液晶パネル市況の悪化や需要の減退で、この資金は底をついた。

 そのため、革新機構の債務保証を受け、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行の主要3行から1100億円のコミットメントライン(融資枠)を新たに設定した。JDIの実態は、資金がショートしそうになるたびに革新機構に駆け込む“オオカミ少年”だ。

 今回の契約には、ある条項が盛り込まれた。JDI株を20%以上持つ企業が現れるか、17年3月期末で35.5%保有する革新機構の出資比率が20%以下に低下した場合、革新機構は保証契約を解除できるというものだ。出資比率の変更が起きた場合、金融支援した750億円を引き揚げる。そのため、「革新機構はJDIを売却して手を引く準備に入った」(関係者)と受け止める向きもある。

 スポンサー探しのポイントは、2000億円から3000億円の成長資金をどうやって捻出するかにかかっている。ホンハイや中国のパネルメーカーの天馬微電子が、スポンサー候補として浮上している。ホンハイがスポンサーになれば、シャープとJDIの経営統合の話が蒸し返されることになる可能性が高い。JDIとシャープを“結婚”させてシャープを実質的に救済しようというシナリオは、経済産業省・革新機構が書き上げたが、最終局面でホンハイにシャープをさらわれたため実現しなかった経緯がある。

「革新機構会長兼CEOの志賀俊之氏は、自動車業界の出身(前日産自動車副会長)だから、まったく何もわからない。経済産業省の言いなりだろう。経産省は中国への売却は不可というだろうから、もしどこも救済するところがなければ法的整理をするしかない。法的整理したからといって、困るメーカーはない。もはや液晶パネルはコモディティ化しているし、JDI以外から買える。元の親会社である日立製作所、東芝、ソニーでさえJDIを必要としていない」(電子部品担当の証券アナリスト)

 法的整理になって困るのは、JDIとタッグを組んできた革新機構、ひいては経産省だけだろう。出資金のほかに、750億円の金融支援、銀行に対する債務保証1100億円が重くのしかかる。損失は税金で補塡しなければならなくなり、責任問題に発展するためだ。

 エレクトロニクス業界からは、「産業革新機構が筆頭株主である限り、JDIの再生はない」といった辛辣な指摘が出ている。官製ファンドの革新機構が手掛けた再生案件で成功したものは数少ない。

 JDIの再生に失敗すれば、シャープをホンハイに奪われたのに続き、革新機構は連敗の憂き目を見ることになる。
(文=編集部)