2017年10月13日、20時すぎ。事務所に郵便局員、「ゆうパックですぅ」。

この作業部屋にやってくる荷物は、おおよそ見当がついているけど、この日の便は予想外で、手にズシッと感じて、思い出した。

品名は「ファンク米」。アイツ、ホントに送ってきやがった。

5kgの米袋のその上に、そのまま送付伝票が貼ってある。送り主は、岡山県美作市という住所。郵便局員にサインした伝票を手渡し、ドアを締めたとたんに、涙腺が緩んだ。

大学時代、音楽クラブでともに過ごした、大後輩のファンクからだった。

米5kgの重みを感じながら、玄関で動けなかった。びっくりだし、ヤラれたし、チカラがあるし、うれしいしで。

外出している相方も、同じ大学の同じ音楽クラブ。ファンクに「届いたよ」と礼を伝えるか、相方に電話するか、近所に住む同じクラブの後輩に連絡するか、とにかく……。

デスクに戻り、紐をといて開けてみる。ファンク米って、どんなもんだよと。で、またヤラれた。米の上に、いや玄米のうえに、写真が一枚、シレッと置かれていた。

――――新米ができました   4月に美作市に家族で引っ越し 人生初めての米作り。自然の力、家族・友人の協力があって、なんとかお米がとれました。少しですが、日頃の感謝の気持ちです。いつもありがとうございます――――

そんな文字の横に、3歳と8か月の女の子とママ、そしてアラブ系ヅラの彼。4人が映っている。黄金色の稲田を背にして。

中央線沿いの三流大学で、運悪く同じクラブの部室で出会い、さんざん呑んで、いやってほど唄って、腹筋が肉離れするほど笑って、勝負ごとに負けていっぱい泣いた。金も信用も仕事も失った。かけがえない仲間を失った。

彼はたしか、中国吉林省へ留学し、教員免許を取得し、関西や北海道で子どもたちと向き合い、JICAで出会った女性と結婚した、はず。違うか……。

こんな思い出もある。相方と奈良へ出かけ、途中の京都で「これから近鉄で奈良に行くんよ。ファンクいま奈良で仕事してんやろ」と彼に電話する。近鉄奈良線がすり抜ける朱雀門の前で、敷物の上にジバンシー(一番搾り)を置いて、ひとりで待ってくれていた。そんな、どこかやさしくて、なぜか律儀な男だった。

「(大学時代、行きつけの居酒屋)店でいっつも『エディー・マーフィー(枝豆)とジバンシー(一番搾り)』って、注文してましたよね」

学校という現場で一生、エネルギッシュに生きると思ってたけど、次の知らせが「いま岡山にいます」だった。ことし9月の夜、ひとり酔っ払って彼に電話したらしい。SNSなどをやってないこっちの身は、翌日のショートメッセージで「なにそれ?」となる。「おしえてください住所!」と。

彼の、家族たちの生きている証でもある、お米が届いて、近所に住む後輩「まんぞう」にグシャグシャのまま電話。「駅前の天狗でメールを整理してます」ってことで、相方とファンク米を持って走る。美作の5kgを前に、十数年前、休む間もなく続くアホシーンを振り返りながら、天狗の22時半ラストオーダーへ向けて、ビールを走らせる。

美作5kgと振り返った天狗の1時間、その閉店直前、「ガジンさん、裏にもなんか書いてありますよ」とまんぞうが笑う。記憶を失いそうなぐらい呑んだあとの、衝撃だった。なんと、お米のなかにあった写真の裏に、また無駄にチカラ強い筆圧で、こう記されていた。

――――電話で(2〜3年前)、ガジンさんに「農家になろうと思う」って言ったら、「えー!!! おまえのつくったカブとかうめえんだろうな〜!」って言われてから、いつかつくったものをと思ってましたが、思ったよりはやく実現できました。山の水、風、気温差でつくった無農薬棚田米です。どうぞ!! また呑みましょう! FUNK――――

なんだよコレ。なんだよファンク。なんだよ、コレ………。

いつ死んでもおかしくない身、いまここで礼を伝えずしてどこでする。

ファンク、ありがとう。ありがとう。ありがとう。

行けたら、岡山・美作のファンクな里山に行ってみたい。新幹線で行こうか、サンライズで行こうか、クルマでみんなで行くか……。津山線も姫新線もいい。

これを書いているいま、Googleマップで「美作市上山」って検索してみたら、里山の斜面を緑の棚が段々と、モリモリと埋めつくす景色が、表示された。ここから西へ700km、いまファンクとその家族は、こんな棚田の里山で、翌朝の仕事にむけて、夢のなかのはず――――。

この連載は、社会福祉法人 鉄道身障者福祉協会発行の月刊誌「リハビリテーション」に年10回連載されている「ラン鉄★ガジンのチカラ旅」からの転載です。今回のコラムは、鉄道チャンネルニュースで書き下ろす番外編(extra edition)です。

鉄道チャンネルニュースでは【ラン鉄】と題し、毎週 月曜日と木曜日の朝に連載します。

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