恋愛感情がないにもかかわらず、LINEを使って虚偽の告白をする「ウソ告」が、中学生を中心に流行しているようです。相手をだましてバカにするゲーム感覚から急速に広まっていますが、一部では、仲間からウソ告をするように迫られて断った生徒が「仲間外れ」にされるケースも。最悪の場合、いじめに発展しうる深刻な問題もはらんだウソ告ですが、専門家の見方はどのようなものでしょうか。子育てや教育問題に詳しい作家でジャーナリストの石川結貴さんに聞きました。

電話や手紙にはない「軽さ」

Q.ウソ告についてどのようにお感じですか。

石川さん「似たようなことは以前からありました。たとえば、相手の家にいたずら電話をかけて『ウソ告』をするとか、ウソのラブレターを書いて学校の机に置き、相手の反応を見てからかうとか。ただし、電話や手紙という方法は『周囲にバレやすい』という特徴があります。家に電話をかけたら相手の親が出る可能性があるし、手紙は書く手間がかかる上、先生やほかの生徒に見つかってしまうかもしれない。だから、『これをやれば自分もヤバイ』という現実感覚や罪悪感を持ちやすかったのです。しかし、LINEはスマホで簡単にできてしまうので罪悪感を持ちにくい。むしろ、ノリに任せて『面白いからやっちゃえ』という軽い気持ちでできる。その場のことしか考えていない軽さ、現実感覚の希薄さが一番の問題だと思います」

Q.ウソ告には「仲間外れ」や「いじめ」といった問題も含まれています。

石川さん「ウソ告をされた被害者が傷つくことはもちろんですが、仲間から『ウソ告しろ、しないとハブる(仲間外れにする)」と言われて、強制的にやらされる子どももとてもつらいものがあるでしょう。強制的にやらされるだけでもつらいのに、自分の行動で誰かを傷つけてしまうことになる。しかも『強制的にやらされた』という事実が相手に伝わらなければ、自分が加害者として恨まれることになります。ウソ告をされる側も、強制的にやらされる側も傷つく。要は陰湿ないじめであり、許されるものではありません」

行動に現実感を持てない子どもたち

Q.ウソ告が流行する背景や原因としてどのようなことが考えられますか。

石川さん「ウソ告だけでなく、いじめ動画の投稿などもそうですが、自分の行動に現実感を持てない子どもが増えています。SNSで誰かをいじめたという経験を持つ子どもたちに話を聞くと、『深く考えず、ついやった』『みんながやってるから、平気だと思った』という声が多数です。人と人とのコミュニケーションにおいて、言葉から得る情報は2割と言われています。残りの8割は、互いの表情や仕草、声のトーンなど。ところが、SNS上のコミュニケーションは、表情や仕草などがわかりません。もしかしたら、相手はショックで青ざめ、震えているかもしれないのにそういう現実的状況が見えない。その分、現実的な判断ができず、ノリに任せてやってしまう可能性が高くなるのです。また、イマドキの子どもには、過激なことや目立つことをするほどウケるという感覚も大きいです。仲間内で盛り上がるためには、平凡な話題より、みんなが食いついてくる話や行為の方がウケが良い。そういう『間違ったウケ狙い』も、ウソ告の一因でしょう」

Q.ウソ告によって、子どもの人間関係や学校生活にどのような問題が起こりえますか。

石川さん「人を信じられなくなったり、友達に対して疑心暗鬼になって、学校生活や友達との関係性がつらいものになることも十分考えられます。場合によっては、不登校になったり、新しい人間関係を作ることが怖くなったりする。本当に誰かに告白したり、告白されたりすることが怖くなることもあるでしょう」

「これをやって大丈夫か」という感覚

Q.学校や保護者、周囲の大人はどのような指導や対策を行うべきでしょうか。

石川さん「SNS上での問題行動を防ぐためには、『これをやったらどうなるか』といった具体的な教育をすることが大切です。たとえば、SNSで何か言ったりやったりするとログが残ります。ログとは、物事が発生した日時や内容の履歴のことで、要は自分のやったことが記録されているわけです。後から『こんなことしていない』という言い訳はできませんし、自分のやったことの記録が将来的にずっと残る。だからSNS上で何か言うときや、やるときは『これをやって将来的に大丈夫か』としっかり考えさせることが大切なのです。被害に遭った場合も、記録をもとに誰かに相談しましょう。『ひどいことをされた』という証拠があるのですから、きちんと被害を訴え、解決の方法を探ってください。LINEには『通報』や『問題報告フォーム』というものがあります。誰かに嫌がらせなどを受けた場合、LINE社に通報し、トークの履歴などを提供すれば対処してもらうことができます。こうした情報をしっかりと伝えることで、子ども自身に自分の行動について考えさせてください。『これをやったらどうなるか』を正しく理解できれば、問題行動の防止につながるはずです」

(オトナンサー編集部)