映画『アナベル 死霊人形の誕生』は、2013年の第1作『死霊館』以来、全世界における興行収入の累計が1000億円を突破した人気の人形ホラーの最新作だ。

映画『アナベル 死霊人形の誕生』より。 10月13日(金)新宿ピカデリー他ロードショー/配給:ワーナー・ブラザース映画 (c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC)

 

簡単にストーリーを紹介しておくと、12年前に幼い愛娘を亡くした人形師とその妻が暮らす館に、6人の少女とシスターがやってきた。なぜか館には、いるはずのない何者かの無気味な気配が漂っている。そしてあるとき、ジャニスという少女が、気配の正体である呪いの人形アナベルの封印を解いてしまうのだ。自由になったアナベルは、執拗にジャニスを、そして少女たちを追い詰めはじめた。逃げても、捨てても、アナベルの追跡はやまない。そしてついに――。

 

驚くべきことにこの映画は、実話が元になっている。

 

映画では、リアルな表情のビスクドールが使われているが、現実のほうは布製の抱き人形だ。人形のモデルは絵本のキャラクター、ラガディ・アン。ちょっととぼけたかわいらしい表情をしていて、アメリカでは大人気のキャラクターである。

 

この愛らしい人形が呪いの牙をむいたのは、1970年代のことだった。

 

あるとき、ドナという女性が母親から、ヴィンテージ物のラガディ・アンの人形をプレゼントされた。ドナはルームメイトのアンジーと暮らすアパートに、この人形を持ち帰る。

 

するとまもなく、奇妙なことが起こりはじめた。彼女たちが外出している間に、なぜか人形の位置が変わっているのだ。

 

部屋に出入りしていた男友達のルーは、人形に邪悪なものを感じ、いっそ燃やしてしまってはどうかと提案する。

 

彼女たちは、ある霊媒師に相談をしてみた。すると、こんな説明が返ってきたのである。

 

「あなたたちの住むアパートが建つ前に、この土地で暮らして7歳で亡くなったアナベル・ヒギンズという少女がいた。この人形には彼女の霊が憑いており、しかもドナとアンジーに親愛の情を抱いている。できればずっと、ふたりのそばにいたいと願っているようだ」

 

ドナとアンジーは、アナベルの気持ちに報いるために、そのまま人形を手元に置いておくことにした。

 

だが――それは罠だった。人形を焼こうと提案したルーは、それ以来、毎晩のように悪夢に悩まされるようになってしまった。夢のなかではいつも、人形が彼の胸元をはいあがってきて、首を強く絞めつけるのである。

 

あるとき、ルーが彼女たちのアパートを訪れると、だれもいないはずの部屋から奇妙な音が聞こえてきた。覗いてみると、そこにはアナベル人形がいた。

 

次の瞬間、ルーは胸に激しい痛みを感じた。見るとシャツに血がにじんでいる。あわてて部屋から逃げだし、シャツを脱いでみると、胸には獣の爪痕のような7つの傷が残されていた。

 

悪意のない少女の霊が、そんなことをするはずがない。さすがにおかしいと感じたドナとアンジーは、超常現象研究家のエド&ロレイン・ウォーレン夫妻に調査を依頼した。するとウォーレン夫妻は、人形に憑いているのは少女の霊などではなく、悪霊だと結論づけたのである。そしてすぐさま神父に悪魔祓いを依頼し、念のために人形を預かることにしたのだ。

 

結論からいうと、悪魔祓いはあまり効果がなかったようだ。というのも、人形はその後もあいかわらずウォーレン夫妻の家を動きまわったからだ。

 

そこで夫妻は、人形を特製のガラスケースに封印し、自宅の敷地内にあるオカルト博物館に納めることにした。こうしてアナベル人形は、ようやく移動をやめたのである。

実際のアナベル人形。

 

この人形は、いまも同じ場所で展示されている。ただしケースには、「絶対に開けるな!」「さわるな!」という注意書きが仰々しく貼られている。人形の呪いは、決して消えてはいないし、現に被害者も出ている。

 

あるとき、ひとりの青年が「やれるものならやってみろ!」と叫びながら、人形が入っているガラスケースを叩いた。すると博物館からの帰り道、青年はバイクに乗ったまま木に衝突し、即死してしまったのだ。

 

呪いの人形はなぜ生まれるのか?

なぜ人形による呪いが起きてしまうのだろうか? それは「人の姿」をしているためである。

 

呪いであれ祟りであれ、人の思いや怨念は、対象物に思いが込められるほど、現象も強くなる。「人の姿」をしたものは、もっとも思いや念が込められやすい対象物となるのだ。

 

また、「サイコメトリー」という超能力がある。これは、対象物に触れるだけで、それにまつわる由来や歴史、過去の持ち主の経歴まで読み取ってしまう能力だ。なぜそんなことが可能になるのか。ひとつの説として、物質にはそれぞれ一種のエネルギー場があり、そこに過去の情報がプールされているという話がある。サイコメトリーの能力者は、そのエネルギー場にアクセスして、情報を得ているというのだ。

 

それが正しければ、呪いの人形も、このエネルギー場に“怨念”という悪感情がプールされたもの、と考えることができる。意図的であれ偶然であれ、深い恨みの念が、エネルギーとしてその人形を覆っているのだ。それが呪いの人形と化すのである。

 

では、その呪いを防ぐ方法はないのだろうか?

 

こんな興味深い話がある。

 

2014年にシンガポールの道ばたで、布で目隠しをされた無気味な西洋人形が発見された。

 

人形はたちまち人々の間で噂になり、「目隠しを外すと悪魔が出てきて呪われる」「目隠しを外すと人形は家までついてくる」といった書き込みがインターネット上をにぎわせることになった。

 

ということはつまり、目隠しをすることで人形の呪いは防げる、ということになるわけだ。

 

それを裏づけるように、後日、目隠しを外した人形の写真が、次のようなコメントともにインターネット上にアップされたのだ。

 

「理由があってこの人形に目隠しをしたのに、だれかがそれを外してしまった。目隠しを外した人の幸運を祈る」

 

何とも意味深長なコメントだが、だとすればなぜ、人形の持ち主はそれを道ばたに放置したのだろうか?

 

まったくもって謎だらけだが、幸いなことにその後、トラブルが起こったという話は届いていない。

 

(「ムー」2017年11月号より抜粋)

 

関連リンク

映画『アナベル 死霊人形の誕生』

 

文=中村友紀

 

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