大逆転勝利に川崎の選手たちは喜びを露わにした。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ29節]川崎3-2仙台/10月14日/等々力
 
「ホントに前半はクソみたいな試合だった。それも自分たちが蒔いた種。これを勝ちに結びつけたのは奇跡。それくらいのことをやってのけた」
 
 試合後、川崎の谷口彰悟が劇的勝利を飾った仙台戦をこのように振り返った。
 
 川崎は42分に家長昭博が退場し、前半アディショナルタイムに仙台に先制点を許すと、60分にも2点目を献上。しかし、82分にエウシーニョ、84分と87分には小林悠が、いずれも強烈なミドルを決めて、わずか5分間で大逆転。谷口が前述のように試合を形容するのも頷ける。
 
 内容の悪い前半に小林も「前半はすごい悪かった」。中村憲剛に至っては、報道陣から「ひどい前半だったが?」と聞かれると、「そうですね」と思わず笑いながら吹いてしまうほどだった。
 
「みんなやることをやってなかった。出して動く、顔を出す、取られた後の切り替え、球際、全部が緩かった。フワーっとしているし、最悪の入りだった」(谷口)
 
「正直俺も、ん?って感じだった。守備は前から行くけど、後ろはついてこないし。攻撃も顔が出なかったり、走らなかったり。向こうの出足が良かったことを差し引いても、それを上回れなかった。なんかハマらねえなというのはあった」(中村)
 
 選手たちはこのように前半を分析する。スタッツでも走行距離は約2辧▲僖綱椰瑤130本ほど下回り、ボール支配率も46%と、数字が物語っている。それにもかかわらず、なぜ10人にして後半の大逆転が起きたのだろうか。ハーフタイムのロッカールームではこんな話し合いがあったようだ。
 
「ハーフタイムに鬼さん(鬼木達監督)が冷静に話をして、戦術、メンタルを整理した。とにかく前を向いて、良い雰囲気で後半に乗れた」(中村)
 
「監督も選手間でも言っていたが、こういう試合をモノにするチームがタイトルを手にするクラブ。そこの一致団結はできていて、10人でも諦めずにやろうという気持ちが結果に繋がった」(小林)
 後半に入ると、川崎が怒涛の反撃。シュート本数が川崎の8本に対し、仙台は3本ということからも分かるように、後半の主導権は川崎に渡った。
 
「チームのなかでネガティブな声がなかった。『行こう!行こう!』ってなっていたので、1点を取れば『行けるな』って雰囲気はあった」(長谷川竜也)
 
「ひとり減った時の原則としてみんなが走る、守備で連動するというポジティブな一体感はあった。数的不利から同数、優位に変えていく作業をみんながさぼらずにやった結果、インターセプトからゴールに行けるシーンも増えたので、手応えはあった」(中村)
 
「ちょいちょいボールを持ちながら、ゴールに迫れていた。これをやっていけば『行けるな』というなかでのエウソンの点が入った。あと、スタジアムのサポーターもすごい沸いてくれて、勢いに乗せてくれたのも大きい」(谷口)
 
 メンタル、運動量、会場の雰囲気など多くのポイントが挙げられるが、やはり中村の言葉には重みがある。
 
「4バック、3ボランチのブロックを作って、前にふたり残した。で、前から取りに行く、行けなければ、ブロックを作るというメリハリもあった。隙あらば数的不利を同数にする作業を5叩10叩一瞬のパスコースを消して、ちょっと頑張った。だから向こうもそんなに繋げなかった」
 
 戦術面を細かく語る背番号14だが、「ひとつポイントをあげるとすれば…」と述べると、気持ちの面について言葉を続けた。
 
「0-2になった時に、投げたやつが誰もいなかった。失点した時にみんなの顔を見るけど、諦めたやつは誰もいなかった。2点目を取られても行けるんじゃないかという雰囲気があったので、そこは良かった」
 
 そうしたいくつかの布石があって迎えた、「5分間の奇跡の大逆転劇」については改めて述べるまでもないだろう。
 
 J1・400試合出場達成というメモリアルな節目も重なって、中村が「一生忘れない試合」というほどの劇的な幕切れだったが、新旧のリーダーは冷静だった。
 
「全然嬉しくない。反省点の方が多い試合だった。こんな試合で浮かれる選手はいない。しっかり気を引き締め直して、切り替えたい」(小林)
 
「負け試合を勝ちに持っていったのは大きい。こういう修羅場のような試合をモノにした体験が、またチームを強くする。偶然じゃないから、前半が不甲斐なかったこと、後半に逆転できたこと、どうしたらこうなるかを経験できたのはでかい」(中村)
 
 なかなかない試合を経験し、逞しさを増した川崎。首位の鹿島を勝点5差の2位で追走するが、シーズン残り5試合の戦いに、さらなる期待が高まる。
 
取材・文:志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)